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第18話:愛・激しく燃え上がれ!

前回の続きです!

 オーケー。状況を整理しようか。

 突然誘拐された俺だったが、犯人のうち二人が自爆し、残ったスポ魂をどう言いくるめようかと考えていた。

 ところがいきなり謎の告白を受け、呆然としていたところにハルたちが助けにきてくれたんだよな。

 そんで何故かスポ魂が空気を読まないカミングアウトをしやがったんだ。

 やべ。なんか頭痛くなってきた。


「どどどどーゆう事なんだよアッキー!」


 なんかハルがめっちゃうろたえてる。


「ま、まぁ人の好みはそれぞれですわよ」


 なんかウンディーネが明らかに引きながら頷いてる。


「しゅ、秋クンってホモだったの?」


 なんかサラマンダーが取り返しのつかない勘違いをしそうだ。


「でもそんなトコも好きっ!」


 アホか。


「オイラはこの人に出会うために生まれてきたんス!これはもう運命としか言いようがないっス!」


 貴様らが力ずくで作った運命だがな。


「そんなのダメなんだよっ!アッキーはハルだけのものなんだよっ!」


「いくらハル様の頼みでも聞けないッス!オイラはこの人の可憐さにゾッコンなんス!」


 可憐て。男に言う言葉じゃねーよ。

 ん?そうだよ。俺もう男に戻ってんじゃん!


「おいスポ魂」


「スポ魂?オイラの事ッスか?」


「そうだ。俺をよく見ろ。完全に男だろ?さっきまでのは本当の俺じゃないんだよ」


 仮に女状態の俺に惚れたんだとしても、俺が男だと分かれば諦めるだろ。


「そんな細かいことは気にしない主義ッス」


 えぇぇぇぇぇえっ!


「マジかよ」


「オイラはいつでもマジッス」


 完全に目が本気なスポ魂。どうしよ。


「そんな暴挙は許さないんだよ…」


 その時、ハルがぼそっと呟いた。

 なんか浴びたら即死しそうなオーラが出てるぞ。


「は、ハル様?大丈夫ですの?」


 隣のウンディーネが恐る恐る声をかけるがハルには聞こえてないようだ。


「アッキーはハルのもの。これは絶対なんだよっ!」


 瞬間。ハルが飛び出す。

 一瞬でスポ魂の正面まで近づき、蹴りを繰り出した。当たったら間違いなく致命的な威力だ。


 ボコッ!と脚が身体にめり込む音がする。


「甘いッス!」


 蹴りを受けたスポ魂は苦悶の表情を浮かべながらも右腕を振り上げる。


 ゴパァンッ!


 いやに軽快な音が辺りに響く。遅れてハルの身体が崩れ落ちた。


「ハルちゃんッ!」


 サラマンダーが叫ぶがハルの意識は完全に飛んでいるようだ。


「許して欲しいッス。オイラもハル様に手を挙げたくはなかったッス。でもオイラの邪魔をするのなら容赦しないッスよ」


 コイツ…強えぇ。


 ハルの蹴りをあえて受け、無防備状態のハルの顎を下方向からの掌底で仕留める。

 脳を揺さぶられたハルはそのまま床に倒れ込んだ。


「やっと二人きりになれたッスね」


 コイツ。ふざけたキャラの癖にケンカ慣れしてやがる。


「テメェっ!」


 できる事ならぶん殴ってやりたいぜ。誰かこの縄ほどいてくれ。


「オイラの告白は済んだッス。あとはアンタの返事だけッス」


 とんだイカレ野郎だぜ。ヒト一人気絶させて微塵も気負わないとは。

 ん?そういえばさっきコイツ二人きりって言ったか?まさかコイツ…。


「さあ。返事を聞かせて欲しいッス!」


 俺はチラリとスポ魂の後方に視線を移す。

 そうだ。行くぜ?


「テメェみてーなイカレポンチ、百万積まれてもお断りだね」


 スポ魂は逆上するでもなく、恐ろしく冷たい表情俺を見下ろしている。


「アンタもオイラの気持ちに応えてくれないっスか」


「今だっ!サラっ!ウンディーネっ!」


 俺が叫ぶと同時にスポ魂の後ろで待機していた精霊共が動き出す。


「オッケー秋クン!火炎魔法『愛の炎は摂氏百度』!」


 意味わからんわ。


「うわぁぁぁあ!なんスかこの炎はっ!熱っ!ぁぁぁぁあ!」


 サラの魔法によりみるみるうちに火だるまになっていくスポ魂。

 そう。コイツには精霊が見えていない。よく思い出してみると、コイツが会話してたのは俺とハルだけ。サラマンダーたちとは一度も言葉を交わしてない。


「火がぁぁぁあっ!み、水!水ぅぅぅう!」


 炎に包まれながら水を求めてさ迷うスポ魂。

 かなりホラーな光景だな。


「おのぞみの水ですわよっ!水魔法『水球密牢』!」


 ウンディーネが魔法を唱える。すると巨大な水の玉が現れ、スポ魂の身体を包んでいく。


「ゴボッ!…ガブォゴボゴボッ!…ゴポッ」


 しばらく水中でもがいていたスポ魂だったが、決して離れない水の牢獄についにその場に崩れ落ちた。


「安心しなさい。気絶しただけですわ」


 スポ魂が完全に気を失ったことを確認し、サラマンダーとウンディーネが俺のもとにやってくる。


「秋クン!大丈夫?」


 俺を縛っていた縄をほどいたサラマンダーが心配そうに聞いてきた。


「おう。ありがとな」


「しかしとんだ変態野郎でしたわね」


 全くだ。


「ハルちゃんも起こしてあげなきゃっ!」


 サラマンダーの言葉を聞いてハルの方に目を向ける。


「ハッハッハッハァ!」


「ハルちゃんッ!」


 なんと気絶したハルを抱えている神と片言が立っていた。

 いつの間に生き返ったんだ。


「よくも我らの計画を台無しにしおったな!」


「コウナリャヤケデゴザル!女神ノ身体ヲスミズミマデ堪能スルッキャネーヨ!」


 やべぇっ!このままじゃハルの操が危ないっ!


「ハルちゃんを助けなきゃっ!火炎魔法…」


「ダメですわっ!今魔法を使ったらハル様にも当たってしまいますわよ!」


「じゃあどーすんのよっ!このままじゃハルちゃんがっ!」


 敵は二人。魔法は使えない。人質のハルは気絶している。クソッ!どうすりゃいーんだ!?


「先程の奇っ怪な炎と水が気になる。ここは一旦体制を立て直させてもらうぞ」


「アバヨッ!」


 畜生!逃げられるっ!


 ガシャァァァアン!


 その時、窓を突き破って男が侵入してきた。


「…」


 その白いツナギの男は無言のまま神を殴り飛ばす。


「ぐふっ!まだ仲間がいたのかぁっ!」


 なんとか踏み止まった神が悔しそうに洩らす。


「『小早川ハル包囲網』最終フェーズ発動!」


 男がそう叫ぶと同時に扉や窓、あるいは屋根から次々と白ツナギの軍団が現れる。

 軽く30人はいるな。


「特攻隊ノヤツラカッ!」


 ハルを抱えた片言が慌てた様子で叫ぶ。


 あれよあれよと言う間に神たちを制圧していく特攻隊。

 カッコいいなオイ。


「ぐっ!貴様らが我らを入隊させていればこの様な事にならずに済んだのだっ!」


 床に突っ伏すように押さえられた神が隊長らしき男を睨み付ける。


「ハル様ヲ想ウ気持チガコンナニ有ルデスヨッ!」


 同じく押さえられた片言も叫ぶ。


 そうか。コイツら特攻隊の試験落ちたんだっけ。確かに特攻隊に入れば常にハルの近くにいれるし、何かと接する機会も増えるからな。ハルのストーカーとしては是非とも入りたいものだろうな。


「貴様らには愛が足りない」


 隊長が呟く。


「姫が好きな輩など腐るほどいる。しかしそんな奴等は特攻隊には不要。我ら特攻隊は姫の幸せを魂から願う同志の集まりだ。よって姫の意思は特攻隊の意思!」


 なんかスゲェよ特攻隊。


「小早川ハル特攻隊隊則第1条っ!」


『姫が好きな物は自らも好め!姫が嫌いな物は自らも嫌悪せよっ!』


 隊長に続いて隊員たちが叫ぶ。

 マジで軍隊みたいだな。


「よって貴様らは入隊する資格なし」


「バカなっ…」


 神がギリギリと拳を握りしめている。余程悔しいのだろう。隣の片言も歯をくいしばっている。


「連行しろっ!」


 隊長の指示を受け、神と片言、それにスポ魂が連行されていく。

 この後どこで何をされるのか、想像しただけで寒気がするぜ。


「ご苦労様でした。サラマンダー殿。ウンディーネ殿」


「あいっ!隊長もお疲れさんっ!カッコ良かったよっ!」


「ご苦労様ですわ」


 どうやら隊長には精霊が見えるようだ。つー事は隊長も波長をキャッチできる人間て事か。


「立花殿」


 そんな事を考えていると隊長が声をかけてきた。


「この度はご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」


「あーいいっていいって。お前のせいじゃねーんだから」


「ふっ。相変わらずですね」


「お前も変わんねぇよ」


 コイツは昔から真面目というかなんというか。一途にハルを慕ってるのはいいんだが。


「しかしまた腕上げたんじゃねーか?」


「いえ。まだまだ立花殿には敵いませんよ」


「買い被りすぎだよ」


「いえ。自分ではまだ姫を守りきれていません。もう『シキ』はないのですから。特攻隊は第2の『シキ』になります」


「おい」


「あっ!失礼しました。これは禁句でしたね」


「…いや、いい」


「…そうですか。では我らはこれで。姫は責任を持ってご自宅へお送りしますのでご安心を」


 そう言ってぞろぞろと退散していく特攻隊。

 ま、アイツに任せとけばハルも大丈夫だろ。


「秋クン秋クン」


 クイクイとサラマンダーが裾を引っ張る。


「なんだ?」


「秋クンと隊長って知り合いだったの?」


 ああ。そういやコイツらは特攻隊を見るの初めてだったな。


「まぁ、昔ちょっとな」


「えーっ!何ー?気になるーっ!」


「秘密だ」


「ぶーぶー!言えー!観念して発情しろーっ!」


 それを言うなら白状だ。発情してどうする。


「殿方の過去は無理に聞くものではありませんわよ。サラ」


「むー」


 ウンディーネがなだめるが、納得していない様子のサラマンダーはまだぶーたれている。


「白状しないならキスしろーっ!」


「意味わからん」


 しかし『シキ』か。久しぶりに名を聞いたな。


「秋クン!ぷりーずキスみぃぃぃぃ!」


「さては秋様の過去なんてどーでもいいんですわねっ!ただキスがしたいだけではありませんのこの馬鹿精霊っ!」


「貧乳ーネは帰れー!秋クンキスキスー!」


「ぶっ潰してやりますわっ!」


 はぁ。うるさい。




 はい。秋クン誘拐事件編でした。

 本当は前後編の2話完結の予定だったのですが…犯人一味が地味にキャラ出ししてきたので長引きましたね。


 展開がコロコロ変わり読みにくい部分もあったのではないでしょうか?分かります。作者も同感です。←おい


 次回からは再び日常生活に戻ります。また、そろそろ新キャラ出現の時期が近づいておりますのでお楽しみにっ!


 隊長は新キャラじゃないのかって話はスルーします♪


        白月

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