第16話:これはペンですっ!
前回の続きです!
「えっ!アッキーが誘拐されたんだよっ!?」
「その通りですわ」
「…」
やっほー!皆のアイドル。サラマンダーだよー。
アタシたちは今、『ソフトクリーム山崎』にいるの。なんでかって?当然さらわれた秋クンを救出する計画を話し合ってるんだよっ!
「助け出そうにもどこにいるのかすら分からないのですわ…。ハル様なら何か心当たりがないかと思いまして」
そう。あまり人間界に詳しくないアタシとウンディーネだけじゃ不安だって話になって、ハルちゃんに協力をお願いしたの。
事の顛末を聞いたハルちゃんは、初めはビックリしてたけど、段々と表情が険しくなって今では不動明王みたいな顔つきになってる。
「ハルのアッキーを誘拐するなんて…死にたくなる位殺してやるんだよっ!」
ちょっと意味が分かんないけど、どす黒いオーラを放出しながらハルちゃんが立ち上がる。
「何か心当たりがありますの?」
殺る気…あ、間違った!やる気満々のハルちゃんにウンディーネが問いかける。
「ハルには見当もつかないんだよ。でも…」
そう言うと、ケータイを取り出しどこかに電話をかけるハルちゃん。
「一体誰に電話してますの?」
「…」
え?なんでさっきから喋んないのかって?
だって口開くと爆笑しちゃうんだもん。
珍しくシリアスムードなのに台無しじゃん。
受話器の向こう側の相手と何かを話したハルちゃんは、ケータイをパタンと閉じると、こちらに向かってウインクする。
悔しいけどめっさ可愛い。
「小早川ハル特攻隊。出撃なんだよ」
――――――――――
「…ん」
「どうやら目覚めたようだな」
聞きなれない声で目が覚める。
あれ?俺なんで寝てたんだっけ?なんか頭がボーッとするな。
「立花秋。早速だが聞きたい事がある」
声の方へと視線を移すと、男が三人立っていた。
ああ。思い出した。俺こいつらに襲われたんだっけ。
「聞いているのか?立花秋よ」
うるせぇな。人の名前を何度も呼ぶんじゃねぇよ。
「聞こえてるよ」
今喋ってる男は、路地裏で一番最初に俺に話しかけてきた野郎だ。
「ならば答えよ。貴様は本当に立花秋なのだな?」
人をさらっておいて今さら本人か確認すんなよな。
つーか無駄に神々しいしゃべり方だなコイツ。
「なんでそんな事を聞くんだ?」
「我らの調査では、立花秋は男のはずだからだ」
「…あっ」
そーじゃん!俺今女の子になってんじゃん!すっかり忘れてた!
「こ、これはだな…」
ぎゃー!すっげぇ恥ずかしいんですけどー。
「つい先ほどまでは確かに男であった。にも関わらず現在ここに存在するのが女とは…一体どういう事か」
神々しい口調の男が理解不能とでもいうような仕草を見せる。つーか神々しい口調の男って長いな。
よし、今からコイツの名前は神だ。
「我らが理解できるよう説明してもらおう」
ぐ…。何て説明すりゃいーんだよ。躊躇なく人を誘拐する奴らだからな。下手な事を言えば何されるかわからん。
かと言って本当の事を喋ってもこんなマンガみたいな話絶対信じねーしな。
「これは…」
「これは?」
神が見定めるように見つめてくる。
ええいっ!ままよっ!
「…そーゆうキャラだ」
「なるほど」
あれっ。信じちゃった。
意外と頭弱いな。神のクセに。
「俺からも聞いていいか?」
「なんだ?」
「お前ら何が目的なんだよ」
単なる高校生である俺をさらって得をする人間がいるとは思えない。ならコイツらは何が目的でこんな真似をしたんだ?
「それはオイラが答えるッス」
今までのやりとりを神の隣で聞いていた男が喋り始めた。
「アンタがオイラ達の女神に近づくからッス」
「女神?」
「とぼけても無駄ッス。こちとら既に調査済みッスよ」
そんな事を言われてもな。
それにしても何だってコイツらはこう特徴的なしゃべり方なんだ。
うし。今からお前の名前はスポ魂に決定だ。
「何の話か全くわからん」
「あくまでシラを切るつもりのようだな。立花秋よ」
険しい表情で神が呟く。
「ならば教えてやるッス」
続いてスポ魂が口を開く。
さらに今まで無言だった三人目が一歩前に踏み出した。
「拙者タチノ女神、ソレハ…」
まさかの片言っ!?
「小早川ハル様である」
「ハル?」
つー事はアレか?俺がハルと仲良くしてんのが気にくわないって事なのか?
「別に俺とハルは…」
「貴方ダマラッシャイ!」
なんか片言に怒られた。
「調査済みと言ったハズッスよ!」
「記録を読み上げたまえ」
神がそう言うと、おもむろに分厚い資料を取り出すスポ魂。
「○月×日:女神とソフトクリームを食べる。○月△日:女神とディナーを食べる。○月◇日…」
次々と資料を読み上げていくスポ魂。
どうやら俺とハルの行動を記録したものらしいな。
つーか犯罪だぞ。
「…○月※日:デパートにて女神のパンティを見る…」
「ナ、ナンダッテ!?」
「どういう事だっ!?立花秋よっ!」
「知らん」
多分デパートでナンパ野郎とやり合った時だろう。実際見えたんだがな。
「これは極刑に値するッス!」
怒り心頭といった様子でスポ魂が叫ぶ。
「待て。貴様はその現場で監視をしていたのであろう?」
「当たり前ッス!現にこうして記録が残ってるッスよ!」
「ツマリ貴方モ女神ノheavenヲ見タンジャネーノ?」
ヘブンて。
「あっ」
おーおー。何か変な汗が出てきたなスポ魂。
墓穴を掘ったな。
「貴様っ!何故報告しなかった!ぶっ殺すぞ!」
うわぁ。神めっちゃキレてるー。
「裏切リハ許シマセヌゾッ!言エッ!何色ダッタ!」
おいコラ片言。
「我らの天使のようなエンジェルのパパパパ…パンティを見るなどっ!」
テンパり過ぎだろ。顔が真っ赤だぞ神よ。
つーか天使のようなエンジェルって何だよ。『頭痛が痛い』みたいになってんじゃねーか。
「観念シナッ!Tバックカ!模様ハ何ダッ!」
もはやパンティで頭が一杯だな。
「うぅ…すみませんッス!つい魔が差して」
「ソンナ事ハドーデモイイッ!熊チャンカッ!熊チャン模様ナノカッ!」
もう完全にパンティ見たいだけだな。
「…女神のパンティは…」
「待て!それ以上言ってはならんっ!」
声をあらげて制止する神。すげぇ慌てようだな。
「それ以上を聞いたら昇天してしまうではないかっ!」
あ。コイツもバカだわ。
「サッサト言エヤ!コノ下衆野郎ガッ!」
むしろお前が下衆だ。
嗚咽を洩らしながら、スポ魂がゆっくりと口を開く。
「青と白の…ストライプッス」
「ぶっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
「this is a penッ!!this is a penッ!!」
パンティの柄を聞くやいなや絶叫しながら鼻血を出し即倒する2人。
約1名完全に逝っちゃってるが。
まぁ、とりあえず自爆してくれたからいいか。
あとはスポ魂を何とかすれば…。
「あのー」
ふいにスポ魂が話しかけてきた。
「な、なんだ?」
何でそんなにモジモジしてんだ?
「実はオイラ…アンタに一目惚れしたッス」
「えっ」
立花秋ファンクラブ第1号が誕生した瞬間であった。
秋クン誘拐事件の中編でした。
さあ!展開がフルスロットルで変わっていく中、秋クンは無事に帰る事ができるのでしょうかっ!
作者にも分かりませんっ!←作者失格。