第15話:まさかの事件発生!
「今回の標的はコイツだ」
「我らの天使を汚す寄生虫」
「全ては我らが女神の為に」
――――――――――
「ふあ~ぁあ」
「秋クン。今日は随分とあくびが出るね。今ので635回目だよ?」
そりゃハイペースなあくびだな。アホか。
「お前が自分の部屋で寝てくれたら俺の寝不足も解消されるんだがな」
「そだねー。お腹すいたねー」
会話成り立ってねー!
しかし眠い。学校も終わった事だし、さっさと帰って寝るとしよう。
そんな事を考えながら歩いていると、ふいにサラマンダーがすっとんきょうな声を上げた。
「ほぇ?秋クン秋クン!背中に何かついてるよ?」
そう言って俺の背中から何かを剥がすサラマンダー。
「わわっ!お手紙だよ秋クン!」
「手紙?」
全く気付かなかった。一体誰の仕業だ?
つーか背中に貼るとか地味な事するなよ。
「えーと、何々?『親愛なる立花秋様。お話したい鬼重要な事がありますので、こちらまでおこしやす。』?」
うーん。ツッコミ所が満載だ。
「地図が書いてあるよ秋クン!」
本当だ。文章の下に地図が貼り付けられている。
「コレ。ウチの近所だな」
「行ってみようよ秋クン!」
「ちょっと待て。差出人の名前が書いてある。えーと、春風の女神より…」
「春風の女神ってハルちゃんだよね?」
「さ。帰って寝るとしよ…」
「れっつらごー!」
ですよねー。
――――――――――
俺のアパートから歩いて5分ほど、以前制約の実証を行った公園の通りから入る事ができる路地裏。
『春風の女神』の手紙に書かれていた場所に俺たちはいる。
「なんかジメジメする所だねー」
サラマンダーは興味深そうに辺りを見回している。
確かに陽当たりが悪くジメッとした印象を受ける場所だ。人気もなく、街中の喧騒がかすかに聞こえてくる。
「しかしハルのヤツ。こんな所に呼び出して何するつもりだよ」
「むふふっ。秋クンいきなり押し倒されたりして♪」
あり得そうで怖いわ。
「立花秋さんですね?」
ぽけーっとハルを待っていると、突然見知らぬ男が声を掛けてきた。
「そうだが。アンタは?」
「我等の女神を汚す愚か者に粛正を」
「何言ってん……っ!?」
男が意味の分からない事を呟くと同時に、突然後ろ手を捕まれる。
どうやら男に意識を取られている間に仲間が忍び寄っていたようだ。
「なんだテメェっ!」
振り返り、俺の腕を掴んでいる男へと視線を移す。
「秋クンっ!」
サラマンダーが叫ぶと同時に初めに現れた男が一気に接近する。
「ちぃっ!」
慌てて振り向こうとしたその時。口元に布のようなものがあてがわれた。
瞬間、意識が朦朧とする。
「秋クン!秋クンっ!」
ひたすら俺の名前を呼ぶサラマンダーの声を最後に、意識が飛んだ。
――――――――――
たたたた大変だよぉっ!秋クンが誘拐されちゃった!
どどどどうしようっ!
「少し落ち着いたらどうですの?聞き取りにくくて仕方ありませんわ」
「アッハハハハハハ!無理無理」
「それで?秋様が意識を失ってからどうなったんですの?」
「えっとねー…アハハハ!」
アタシは怪しい二人組に気絶させられた秋クンを助けるために魔法を使おうと思ったの。
でもその二人組は秋クンにピッタリくっついてたから使えなかった。秋クンまで燃やしちゃうからね。
「で、そのまま逃げられたんですわね」
「そーなのっ!ぷははははっ」
秋クンがさらわれ、呆然と立ち尽くしていたアタシ。するとタイミング良くウンディーネが現れたの。
で、今はさっきの出来事をウンディーネに説明してたってわけ。
「敵の目的が見えませんわね」
「ウハハハハハッ!」
「秋様を誘拐して得をする人間なんていますの?」
「ギャハハハハハハッ!」
「…」
「ぷははははっ!ひーっ!ひーっ!お腹痛い」
「うるっせぇですわぁぁぁぁぁあ!」
そう。秋クンと離れた事で、アタシには死ぬまで爆笑の制約が発生してるの。
ふざけてるんじゃないよ?いやマジで。
「とりあえず貴女と私だけでは心許ないですわ。ハル様にも協力を仰ぎますわよ」
「イエッサー…ニャハハハハハッ!」
「しかしその爆笑は何とかなりませんの?うざったくて仕方ありませんわ」
「無理無理♪ぷははははっ!」
制約は絶対だって事くらい精霊なんだから分かるでしょ。
全く…これだから貧乳ーネはアタマも胸も成長しないのよ。尻ばっかり大きくなってさー。
「誰がケツデカ令嬢ですの?」
「アハハハ!そこまでは言ってないって!ケツデカって!ウハハハハハッ!」
「やっぱり思ってたんですわねっ!」
「ひっ!」
「今日という今日は許しませんわっ!お逝きなさいっ!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
次回に続きます!