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第12話:アクア・パニック!

 おっす。秋だ。

 しかし暑いな。外では太陽が乗りに乗ってギラギラ輝いてやがる。

 そんなに頑張らなくてもいいのになぁ。なんて自分勝手な事を考えてしまうのは気温の高さが原因だろう。


「ひゅうクン…あちぃーよー」


 火精霊のくせに暑いのが苦手という無意味な意外性を見せたサラマンダーは、床に突っ伏して犬のように舌を出している。だらけ過ぎだろ。


「まぁ夏だからな」


「夏なんて死ねばいーのに」


 もはや暑さにやられて意味の分からない事を言うサラマンダーは無視し、クーラーをつける。節約したかったんだが無理だな。


「クーラーつけたぞ。部屋が涼しくなるまでちょっと待て」


「うあー。ムリですー。今すぐ冷水を浴びたいですー」


「ははっ」


 アイスコーヒーでも作ってやろうとキッチンへ向かったその時。


 ズドドドドドっ!


「ぎにゃぁぁぁぁあ!」


 轟音と共にサラマンダーの悲鳴が聞こえてきた。何事かとリビングを振り返る。


 ドドドドドドッ!


「ふみぁぁあぁあ!」


 なんと天井から滝のように水が流れ落ち、真下に寝ているサラマンダーを打ち付けている。水柱に打たれる火精霊はただジタバタと足掻いている。

 かなりシュールな光景だ。


「よかったなサラ。早速願いが叶ったぞ」


「そんな事より助けてよぉぉぉお!」


 面白いからもう少し見ていたいんだがな。さすがに可哀想だから助けてやるか。


「ほれ、掴まれ」


 サラマンダーの両手を掴み、力一杯引っ張ってやる。水柱の勢いが強いせいか思ったより抵抗があったが、何とかサラマンダーの救助に成功した。


「はぅー。ちべたいー」


 解放されたサラマンダーはカタカタと震えている。水柱はかなり冷たかったようだな。


「大丈夫か?ほら」


 ずぶ濡れの身体にタオルを投げてやる。受け取ったタオルで全身を包み込むサラマンダー。


「しかし何なんだ?この滝は」


 いまだ流れ続ける水柱を眺めながら、隣のサラマンダーに問いかける。


「これはただの滝じゃないよ!水魔法で召喚されたものだよっ!」


 水魔法?

 俺が疑問を口にしようとした瞬間。


「そこだっ!ファイヤーボール!」


 突然サラマンダーがあらぬ方向に火炎弾を放つ。

 火炎弾はまるで水をかけられた花火のようにジュッと音をたて消え去った。


「オーッホッホ!よく気が付きましたわね!サラ!」


 どこからかやたらタカビーな笑い声が響いてくる。

 見ると火炎弾が消えた場所のフロアに水溜まりが出来ていた。


「こんな悪趣味なイタズラするのアンタしかいないでしょっ!」


 サラマンダーは水溜まりに向かって叫んでいる。

 すると水溜まりがどんどん大きくなり、膨らんできた。やがてフラフープ大の水球が現れる。


「なんだコレ?」


 目の前にプカプカと水球が浮いている。これまたシュールな光景だ。


「オーッホッホ!勝手に人間界に逃げ込んだ貴女がいけないんではなくて?」


 どうやらさっきの声はこの水球の中から聞こえてくるようだな。


「うっさい!もったいぶらないでさっさと姿見せなさいよ!ウンディーネ!」


 パァンッ!


 瞬間。水球が弾け飛び、中から少女が現れた。

 ウンディーネと呼ばれた少女はサラマンダーと同じ位の身長だ。やたらと目立つ青い頭髪が目を引く。サラマンダーとは違い、背中まである髪は軽くウェーブがかかっている。

 気が強そうな印象を与えるややつり上がった目には、髪と同じブルーの瞳がこちらを見ている。

 サラマンダーの赤ポンチョに対し、こちらは青いワンピースのようなものを着ていた。

 首元に輝くネックレスには蒼い宝石がはめ込んである。


「何しにきたのよっ!ウンディーネ!」


 敵対心をあらわにしながらサラマンダーが声を張り上げる。

 対するウンディーネは余裕綽々といった表情でサラマンダーを見つめていた。


「精霊界から逃げ出した貴女を迎えに来てあげたのですわ」


 しかしやたらと上から目線な子だな。


「う、うっさいわね!余計なお世話よ!アタシは精霊界になんか戻らないんだからっ!」


「そーいう所がガキだって言うんですわ」


「アンタには言われたくないよっ!この貧乳タカビーめ!」


「なっ!」


 どうやらこの二人は犬猿の仲らしいな。今にも殴り合いが始まりそうだ。


「はいはいはい。ストーップ」


 人の部屋で暴れられちゃ困る。とりあえず仲裁に入る事にした。


「秋クン…。そ、そうだっ!アタシはこの秋クンと契約しちゃったんだから!精霊界には帰れないよっ!」


 ぐいっと俺の腕を掴むサラマンダー。


「なっ!それは本当ですのっ?」


「あ、あぁ。一応そういう事らしいな」


 契約が真実だと分かったウンディーネはしおしおと床に崩れ落ちた。


「なんという事ですの…これではバカマンダーを連れ戻せないではありませんの」


「バカマンダーてゆーな!うんちーネ!」


「相変わらず下品ですわねっ!だから貴女はモテないんですわっ!」


「へっへーん!なんとアタシには秋クンというフィアンセがいるのだよ!」


 おいコラ。


「どうせこの方の素性を調べあげて、『アタシがあなたの冷えきった人生を暖めてあげるわっ』とか何とか言って一方的に契約したんでございましょ?」


「にゃ、にゃぜそれをっ!」


 エスパーだコイツ!


「貴女のやることなんてたかが知れてるんですわよ!この単純バカ!」


「うっさいうっさい!バスト『ピーッ』センチのクセにっ!」


「ぶっ殺してやりますわ!」


 うわぁ。なんか喧嘩始めちゃったよー。

 すげぇ火の玉と水流が飛び交ってるよー。


「お、おい!二人共落ち着けって!」


「邪魔!」

「邪魔ですわ!」


「おぅっ!」


 完全に頭に血が昇った二人の魔法が俺にヒットする。

 こいつら、いい加減にしねぇと…。


「ぶっ殺すぞ糞餓鬼共がぁぁぁぁぁあ!」


「ひっ!」

「ひっ!」



――――――――――


「ガミガミガミガミ」


「しょぼーん」

「しょぼーん」


 人の部屋で暴れまくったガキ共に拳骨をくれてやった俺は、とりあえずコイツらを正座させ説教タイムに突入した。

 さすがにやり過ぎたと分かっているのか、二人共黙って説教を聞いている。


「とりあえずサラは晩飯抜き!」


「そっそんなぁ~!」


 そんな子犬のような顔をしてもダメだ。ちょっと可愛いけど。


「ざまぁみろですわ」


「ウンディーネって言ったっけ?君も反省しろよ?」


「は、はいですわ…」


 ウンディーネはシュンと俯いて反省をアピールする。

 意外と素直なんだよな。本当は良いコなのかもしれないな。


「…まぁウンディーネにも何か事情があるみたいだし、反省してるんなら今回は許してやるよ」


「ほ、本当ですの?」


 ぱあっ!とウンディーネの表情が晴れる。

 うん。絶対良いコだ。


「秋様にはご迷惑をお掛けしましたが、サラ!この事はお爺様に報告致しますわよっ!」


 そう言い残しウンディーネは消えていった。

 しかしまたよく分からんヤツが現れたな。

 サラマンダーが精霊界から逃げてきたって言ってたが。何か深い事情でもあるのか?


「え?ただ修行がヤだから逃げてきただけだよ?」


「帰れお前」




 はい。新キャラ登場です。その名も水精霊ウンディーネ!タカビーです。お嬢様です。「ですわ」とか言っちゃいます。

 これからの絡みが楽しみですなー。

 とゆーわけで次回をお楽しみにっ!(してくれてる人が果たしているんだろうか…)


        白月

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