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第10話:デパートは戦場ナリ!

前回の続きです!

 『前回のあらすじ』

 ~胸キュン美少女戦士ハル☆に誘われデパートに来た俺たち。

 突如現れたオバチャンの群れにサラマンダーがさらわれてしまうというハプニングがあったがまぁいっか。

 そんな事より可愛いハルに婚約指輪でも買ってやる事にしよう!そう、なんたってこの超絶美少女ハルタソは俺のハニーなのだから。

 よっしゃ!いっちょやってみっか!~


「…なんだよ♪」


「いや嘘つくなお前。どこからツッコめばいいのか分からん。」


 明後日の方を向きながら喋っているハルを軽く小突いてやる。

 そもそも誰に向かって喋ってんだよ。


「いたいんだよ~。」


 とりあえずツッコんだ事だし、先に進むか。


 俺たちは今食品売り場に来ている。オバチャンの群れに巻き込まれた脳ミソつるんつるん精霊を探す為だ。


「やっぱり似合うんだよ。アッキー。」


「うるせ。」


 ハルが俺をまじまじと眺めてくる。

 俺は今ハルが選んで購入した女物の服を着ている。どっかのアホ精霊のせいだ。

 しかしスカートってのは何でこんなにスースーするんだろうな。気持ち的には常にパンツが見えているように感じるぞ。

 あ、ちなみにパンツはきちんと俺のを履いてるからな。勘違いすんなよ?


 広い食品売り場を歩いていると、やがて人だかりが見えてきた。


「お。アレじゃないか?精肉売り場。」

 凄まじい数のオバチャンがごった返している。そこまでして欲しいのか。ニクコップン。


「ひゃ~。すごいんだよぉ。」


「割って入るぞ。ハル。」


「おー!なんだよ。」


 秋はオバチャンの群れに割って入った!


「ちょっとアンタ!割り込み禁止よ!」


 オバチャンAの攻撃!

 秋に9999のダメージ!秋は死んだ!


 ハルはオバチャンの群れに割って入った!


「ピキーッ!」


 オバチャンBの攻撃!

 ハルに9999のダメージ!ハルは死んだ!


 はっ!あまりの威力にRPG化してしまった!

 気のせいかスライムが混ざってたような。


 このままじゃ埒があかねぇ。

とりあえずニクコップンの販売が終わるのを待つしかないな。

 俺たちは近くにあったベンチに座って待つことにした。サラマンダーには悪いがアレは無理だ。バズーカ相手に割り箸で挑むようなもんだぞ。


「ふぅ。しかしすげぇ人気だな。ニクコップン。」


「何でも『一口食べれば明日からアナタも禁断症状!』がキャッチコピーらしいんだよ」


 そりゃ麻薬だ。


 ジュースを飲みながらオバチャンの群れを眺めていると、若者に声を掛けられた。


「ねーねーお姉さん達。ボクたちとお茶しなぁい?」


 うん。ナンパだ。


 そのナンパ野郎は二人組らしく、奥から仲間が歩いてくる。いかにもチャラそうな野郎共だ。


「アッキー。ナンパなんだよ。」


「ああ。ナンパだな。」


「どうしようなんだよ。」


「どうしような。」


 そんなやり取りをしていると、先ほど声をかけてきた野郎がニヤニヤしながら近付いてくる。


「どうせ暇なんでしょぉ~?よし!決まりね!お姉さんはボクと遊ぼ!」


 そう言ってハルの腕を掴み、強引に連れて行こうとする。


「い、イヤなんだよ!アッキー!助けてなんだよー!」


「てめぇ。嫌がってんじゃねぇか…よ?」


 一発殴ってやろうかと立ち上がった瞬間、体がガクンと引っ張られる。見るともう1人のナンパ野郎が俺の腕を掴んでいた。


「むひゅひゅ!こっちのお姉さんは僕ちんと遊ぶナリよ~♪」


 なんだこのコロ助!


「っざけんな!」


 コロ助の顔面目掛け拳を繰り出す。

 ところがコロ助にあっさりと受け止められてしまった。


「むひゅひゅ!気が強い女子は嫌いじゃないナリよ~♪」


 コイツの口調ムカつくな。


 それより、思うように力が入らない。女の体だからなのか?


「イヤなんだよ!離してなんだよ!」


 向こうではハルがナンパ野郎Aに連れて行かれそうになっている。畜生。コイツら調子に乗りやがって。


「むひゅっむひゅっ!キミちっちゃくて可愛いナリ~。小学生みたいで興奮するナリよ~。ハァハァ。」


 ちょっと!コイツやばいって!ハァハァとか言ってるって!


「このロリコンがっ!」


 瞬間。コロ助の体がビクッと痙攣し崩れ落ちる。

 まぁ急所を蹴ったからな。全力で。


「ぉおぉお!むひゅっ!むひゅひゅ!これはこれで快感ナリぃぃ…。」


 もーヤだこの人ー!


「でもご主人様のイチモツを蹴るなんてイケない子ナリ!お仕置きナリよ!」


 一応アタマにはきたらしく、コロ助の平手打ちが飛んでくる。


 パシーン!


 妙に響く音と同時に俺の頬がジンジンと痛み出す。つーか普通に最低だなコイツ。


「アッキー!」


 ナンパ野郎Aに必死で抵抗していたハルが叫ぶ。ビンタって意外とへこむよな。


「き、キミが悪いナリよ!ぼ僕ちんは悪くないナリ!むひゅっ!」


 うわぁ。ムカつく。


 もう一発お見舞いして一生使い物にならなくしてやろうかと構えたその時。


「ハルのアッキーに手ぇ出すなんて…」


 げ。やべぇ!ハルがキレる!


「死刑なんだよ!」


 そう言ったハルの方へと視線を移す。


「がはっ!」


 ナンパ野郎Aが苦しそうな声をもらす。見るとハルの膝が鳩尾にめり込んでいた。

 あまりの苦しさにナンパ野郎Aの手がハルから離れる。瞬間。ハルは両手を床につき、逆立ちをするように下半身を上げる。そして両足で相手の頭を挟み込み、そのまま勢いをつけ床に叩きつけた。

 ちなみにこの時、パンツは丸見えである。


「ぉごぁっ!」


 フロアに顔面からダイブしたナンパ野郎は何とも言えない鈍い声を上げて動かなくなった。


「むひゅぅぅ!ヒロシ氏がやられたナリ~!あのコ怖いナリよ~!」


 目の前で繰り広げられた格ゲーよろしくな光景に、さすがのコロ助もガタガタと震えている。


「でもそのギャップがまた萌えるナリ♪」


 死ね!


「アッキーはハルのモノなんだよっ!アッキーを可愛がっていいのも苛めていいのもハルだけなんだよ!」


 ちょっと待てコラ。


「アッキーを苛めるヤツは死刑執行なんだよ!」


 凄まじい気迫を振り撒きながらハルが飛び上がった。落下の勢いをそのままにコロ助の脳天へ踵を撃ち込む。


 ゴキッ!と明らかに何かが折れた音と共にコロ助が倒れる。


「も…萌え。」


 ピクピクと痙攣しながら呟くコロ助の顔面を思い切り蹴り飛ばしてやる。

 しかし久々に見たなハルがキレるところ。相変わらず見事な足技だ。


「さすがだな。ハル。」


 ハルの肩を叩きながら声をかけると、ハルが興奮状態から醒める。


「あ、アッキー…。見た?なんだよ…。」


「ああ。見事な真空踵落としだった。」


 瞬間。ハルの顔がゆでダコのように真っ赤に染まる。


「はははは恥ずかしいんだよー!あんなところアッキーに見られたなんて…死にたいんだよー!」


 顔を両手で隠しながらわんわんと泣き出すハルであった。


――――――――――


 さて、ナンパ野郎共は警備員に引き渡した事だし、そろそろサラマンダーを迎えに行ってやらないとな。


「うぅ…ぐすん。なんだよ。」


「いつまでショック受けてんだよ。」


「だって~。なんだよぉ。」


 隣でグズるハルは置いておき、精肉売り場へと視線を移す。どうやらニクコップンの販売が終了したらしい。

 あれだけいたオバチャン達もほとんど居なくなっていた。


「っておい。アレ、サラじゃねぇか?」


「…ぐすん。どれ?なんだよ。」


 ニクコップンの販売が行われていた場所から赤い頭が走ってくる。間違いない。サラマンダーだ。


「秋くーん!ハルちゃーん!」


 サラマンダーはこちらに向かって手を振っている。いや、正確には手に持った何かを。


「ニクコップンゲットだぜー!」


 ちゃっかり幻の牛肉を手に入れていたサラマンダーなのだった。


「えへへー!今日はリッチにステーキだよ秋クン!」


 ニクコップンを自慢気に見せながらサラマンダーが言う。コイツどさくさに紛れて多分金払ってないです。


「それよりサラ。」


「ん?なぁに?秋クン。」


「なぁんで俺は女物の服を着てるのかなー?」


「ひっ!」


「コラ逃げんな糞精霊!待ちやがれー!」


「ごめんなさぁぁぁあい!」


「アッキーに見られるなんて…死にたいんだよぉ。」




 はい。どうでしたでしょうか?デパート編。

 実はハルちゃんメチャクチャ強かったんですねー。

 それに比べ秋クンは無力!笑


 サラマンダーは今回あまり出番がありませんでしたね。まぁたまにはいーでしょう。


 それでは、これからも「なちゅ☆りずむ」をよろしくお願いします。


        白月

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