表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

ひとりぼっち

語彙力貧弱すぎてぜんっぜん書けません……

アトランティス学園の授業は、入学式典の次の日から始まった。

文学、算術等の必修科目に加えて、精霊術、馬術等の選択科目。

ひとりひとりの時間割や教室は、履修する科目によって異なっている。

しかし、入学から3日も経つと、新入生達はいくつかの集団を作り、共に行動するようになっていた。


『退屈ね』


授業の終わり、ジャミーラは頬杖をついて教室の外を眺めながら、ひとり物思いにふけていた。


『まさかここまで忌み嫌われているなんて』


ジャミーラは入学してからただの一度も、同級生から声をかけられたことがない。

声を掛けようとしても、その前に逃げられるか、嫌な顔をされるか。

他国からのランデュート王国の嫌われ様は、想像以上だった。

ジャミーラの周りでは、他の生徒達が各々のグループで会話を楽しんでいる。


「ご覧になって。シャマル様は今日もおひとりなのね」

「仕方ないわ。あの漆黒の髪に赤い瞳では、気味が悪くて」

「呪われたくないものね」

「しっ、聞こえるわよ」


ジャミーラは聞こえないふりをしながら、教科書を鞄にしまい込む。


「図書館にでも行こうかしら」


静かな場所で気を紛らわしたくなって、ふと思い当たった場所を目指して教室を後にした。


⚜️⚜️⚜️


図書館に入ると、ふわりと本のにおいがした。

司書に軽く会釈をして奥へと進む。

入口付近には長机と椅子が並び、その奥には背の高い本棚がずらりと立ち並んでいた。

ジャミーラは空いている席を探し歩く。


『あら』


図書館の隅にいるのに一際目を引く、ふわりと波打つ金色の髪。

見覚えのある後ろ姿だ。

ジャミーラは彼に近づき、人違いでないことを確認して、


「アルテリスさん」


優しく呼びかけると、琥珀色の瞳に整った顔立ちの少年が、ジャミーラの方を振り返った。


「シャマル様」

「ごきげんよう。ここに座ってもよろしいかしら?どこも満員で」


ジャミーラは辺りを軽く見渡しながら、困ったように言う。


「どうぞ」


アルテリスは頷いた。

ジャミーラはアルテリスの向かいの席に腰かけ、彼の持っている本を見て、


「え!?」


思わず大きな声が出て、周りの注目を集めてしまった。

直ぐに我に返り、恥ずかしくて顔が赤らむ。

ジャミーラは、咳払いをして席に着いた。

こちらを向いた生徒たちも、徐々に顔の向きを戻していく。


「どうかなさいましたか?」


アルテリスは不思議そうに、ジャミーラを見つめた。


「アルテリスさん、貴方……上級生だったのね」


ジャミーラは小さな声で言った。

ジャミーラの視線は、アルテリスの持っている教科書に注がれていた。

それは一学年上級生の使っている教科書のはずだった。


「はい」


小柄で堂顔だから、てっきり同じ新入生かと思っていた。

そういえば、あのルシファニア王国ハウゼン伯爵家の次男ハムザ・ハウゼン様もひとつ上の学年だっただろうか。

ジャミーラは今までの態度を思い返し、改まって謝罪する。


「申し訳ございません。上級生とは知らず、ご無礼をいたしました」


突然の変わり様に、アルテリスは目をぱちくりさせ、ふっと微笑んだ。

その笑みは、ジャミーラの心臓に良くない破壊力を持っていた。


「シャマル様、顔をあげてください。今まで通りでお願いいたします」


アルテリスは優しく言った。


「ですが」

「そうなさってください。寧ろ礼を尽くさねばならないのは、私の方ですから」


ジャミーラは怪訝な顔をする。


「それは身分の違いからですか?」


ジャミーラは彼を傷つけないかと、恐る恐る尋ねた。

もしそうならそれは違うと、ジャミーラは思う。

今は同じ学び舎の生徒。優先されるべきは身分ではなく学年ではないだろうか。

しかし、アルテリスはジャミーラの言葉に首を竦めて、


「今は申し上げられませんが、いずれお分かりになります」


としか答えなかった。


「そう…ですか。でしたら、お言葉に甘えさせていただきますわ」


ジャミーラは釈然としないながらも、一先ず従うことにした。

ジャミーラがアルテリスの言葉の意味を知ったのは、それから数日後の新入生歓迎パーティだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ