永久
イケメンの若い料理人が豚ロースを叩き塩コショウする。
塩コショウした肉に小麦粉、溶き卵、パン粉を順番に付け、軽くパン粉を叩き落とす。
肉を熱した油の中に静かに入れ、若い料理人は油の中の肉が発する音を聞き分け、揚げ上がったトンカツを素早く油から出し油切りバットの上に置いた。
油切りバットに置いたトンカツをまな板の上てサクサクサクサクと切り分ける。
切り分けたトンカツを千切りキャベツが盛られた皿の上に置き、特製ソースを掛けてご飯と味噌汁のお椀が置かれているトレーに乗せた。
トンカツの皿とご飯や味噌汁のお椀が乗ったトレーがお客様の下へと運ばれて行く。
私はその映像を見ながら、特別配給品のトンカツソースが数滴垂らされたスプーンを舐める。
この映像が何時か何時の日か、私たちが暮らす核シェルターから出られる日が来るまで保存されていれば、私たちの子孫にはカツを食べる機会が訪れるかも知れない。
でもそのカツに使われる肉は何の肉が使われるのだろう?
他の恒久的核シェルターのどれかに豚のDNAが保存されていない限り無理だ。
後は放射能に汚染された地上に生息するDNAが滅茶苦茶に破壊されたミュータントのどれかに、豚のDNAが残っている事を祈るばかり……無理だな、祈っても無駄だろう。
核戦争後の世界でトンカツを食べる機会を私たち人類は、永久に失ったのだ。