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【ep.02】私は立派なメイドになります!

 私の必死の想いが伝わって、メイドとして働かせていただく事になりました。

 

 とはいえ初めての事なので、まずは知識を蓄えて行き、そして実戦で学ぶ。そんな日々が続いて行った。

 まだまだ未熟な私ではありますが、精一杯頑張って立派なメイドになり、マリア様のお力になりたいと、日々頑張る事がとても楽しいです。

 高い窓を拭くのだって気合が入る位に。ピカピカになっていくと私の心も洗われた様な気分になって、綺麗になった窓を見て満足そうにしながら、私は額に垂れる汗をぬぐった。


「エマは呑み込みが早いのですね」

「わっ!? マリア様!?」


 後ろからマリア様の声が聞こえて、慌てて振り向いて一礼する。顔を上げると太陽の様な笑みを見せてくれて、それだけで私の心が温かくなっていく。


「まだ一月経っていませんのに、あなたが真剣に働く姿をよく見かけていますわ」

「そんなっ、私はただマリア様に恩を返したくて……。それにここのメイドの方たちはとてもお優しくて、分かりやすく教えて頂けているからだと思います」

「……そうですね。この家で働く皆さまはとても立派ですわ」


 どこか寂しそうに見えたのは一瞬で、マリア様は笑顔のまま歩き出した。

 

 マリア様はご令嬢であるが故にお忙しい日々を送っていらっしゃる。今も私と話さなくても良かったのに、お優しいマリア様はこんな私にも声を掛けて下さる。

 だから私は、マリア様が日々安心して過ごせるように、メイドとしてやれる事をやっているのです。


 *


 <一方、勇者パーティーでは>

 エマを置いて行ってすぐ、一行は問題に見舞われていた。

 リーダーは魔法が使えないエマの事を足手まといだと思っていた。だけどエマは必死になって戦っていて、バカバカしいとも思った。どうせ助けなければモンスターにやられるというのに。

 だからいなくなって清々した気分で暗い草原を歩いていた。


「ちょっと、待ってって、言ってんでしょ!?」

「ちんたら歩いてんじゃねえぞ! 気付かれる前に次の街へ行くんだからな!」

「だから、アタシ一人じゃこの荷物は運べないっての!」

「ハァ? エマが持ててたのに何言ってんだ?」

「そんなん言うなら持ってみろって!」


 投げ捨てる様にして持たされた荷物の重さに、リーダーの男は思わず尻餅を付く。

 大きなリュックサック一つ位で何を言っているのかと思ったが、鉛の様に重い荷物に驚いて言葉が出なかった。


「……仕方ねえ、荷物は分けるから、一旦野営するぞ。……おい聞いてんのか?」

「野営すんのは聞こえたけどさ、テントってどうやって張るの?」

「ハァ!?」

「……野営の準備も料理も今まで全部エマがやってたんだから知らないわよ」


 険しい顔のまま男は苛立ちをぶつけるように、地面を蹴飛ばした。

 それに苛立ちを覚えた仲間の女は不機嫌なオーラを全開にしたまま、盛大に溜息を吐く。


「アタシもう旅はやめようと思ってたところなの。丁度いいからここで解散ね。あ、荷物はいらないからよろしく」

「ハァ!? ちょっ何を言ってる!?」


 女は聞く耳を持たずにそそくさと草原を後にする。

 取り残されたリーダーの男は唖然としたまま固まっていた。


 今からでは何も取り戻せないと解っても、何もする事が出来ずに、ただ立ち尽くしていた。


 *


 羽の様な布団に包まれて起きる朝が私は大好きです。

 旅をしていた頃から私は、みんなの役に立ちたくて一番早く起きて身支度を整えるのが日課になっていた。だからお城に来てからも自然と早く目が覚めてしまって、カーテンを開けても薄暗い外を眺めながら私は気分が上がっていた。

 

 最近毎日が楽しいんです。ずっとここで働かせてもらいたいと、もっと頑張ろうと思い始めたから。

 メイドの方たちはもちろん、マリア様もよく話しかけてくれて、みんなと仲良くいられるこの場所が大好きになって行った。


 メイドとしてのお仕事の事も少しずつ知っていって、いつかマリア様に近い場所でお仕え出来たら、それはとても幸せだと思って。私は屈伸をしてからメイド服に着替えるために広い部屋を駆けて行く。


 朝早く目が覚める私より早くメイド室に来ているのがメイド長のアンナ様。いつも私に優しく、時には厳しく教えて頂いている素晴らしいメイドさんです。


「エマ、マリア様の事で話があります。今少しよいですか?」

「はい。なんでしょうか?」


 私は少し緊張しながら、アンナ様が差し出してくださった椅子に座る。目の前で真剣な瞳を向けられて、思わず背筋が伸びた。


「1ヶ月後はマリア様の18歳のお誕生日です」

「はい!」

「この家のご令嬢は18歳で成人したら、婚約相手の元へ嫁ぐ事になっています」

「……はい」

「私からはそれだけお伝えします。分からない事があればいつでも聞いて下さいね」

「はい……ありがとうございます」


 アンナ様が気を遣って部屋を出て行った音を聞いたまま、私は床を見つめ続けた。朝日で照らされる床の色が分からなくなる位に、混乱したまま。

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