表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/44

第8話:初めての勉強会

 桜井さん、紺野さん、そして大輝とゴールデンウィーク後に行われる中間テストに向けた勉強会を行うことになった。日程としては、中日の祝日の午後からになった。その日がみんなが部活も予定もない唯一の日だったのだ。最近の中学生はこんなに忙しいのかと思ってしまった。


「そろそろ来るかな…。」

 勉強会の会場は私の家になってしまった。理由は、大輝が一人暮らしの様子を見てみたいと言ったからだ。まったくどこの母親だよ…。まあ、特に問題ないけど。


 前世の癖みたいなもので、それなりに整理整頓できていたから、ラノベみたいに大慌てで掃除、徹夜で片付けみたいなイベントは発生しない。家事は常日頃の心がけである。まあ、お菓子や飲み物は用意したけど…。


 ピンポーンと呼び鈴が鳴り、モニターを確認する。すると桜井さんと紺野さんが見えた。どうやら二人で一緒に来たようだ。言い出しっぺの大輝は最後かと苦笑いしながら、二人を出迎えた。


「おおーっ…。ここが城田君の家?すごい広いねー。」

「おじゃまします。これ、うちの母親から。」

「あっ…!うちもお菓子買ってきたよ!」

「そんないいのに。でもありがとう。」


 二人とも気を使ってくれたのか、お菓子を差し入れてくれた。何ともできた中学生だ。


「それにしても広いお家だね。ねっ?美羽ちゃん。」

「うん。ここに一人暮らしなんて…。城田君は大人だね…。」

「いやいやそんな大したことじゃないよ。」

「でも家事とか大変そう。」

「まあ一人分だから。掃除は広い分少し大変だけどね…。でも使ってない部屋もあるから…。」

「そうなんだね。」

「今日はどこで勉強するの?城田君の部屋?」

「いや、リビングでしようかなと思って…。なんで?」

「ううん。美羽が城田君の部屋を見たいんじゃないかなと思って~。」

「ちょっと、ひなたちゃん。私そんなこと言ってないよ。」

「俺の部屋?そんなに大したものはないけど。良かったら見てみる?まだ大輝来てないし。」

「いいの?美羽ちゃん、見に行こう!」

「ええ…。城田君に迷惑じゃない?」

「ははは。別に大丈夫だよ。見られてまずいものは…ないし。」

「本当~?いまちょっと変な間があったけど~。」

「大丈夫。大丈夫。問題なし。…多分。ちょっと待ってもらっていい?」

「だめ~。ほら部屋に案内して。」

「はいはい。」

「何か二人とも楽しそうだね…。」

「あれ?美羽ちゃんヤキモチ?」

「えっ!?違うよ、もうっ!」


 そんなやりとりを経て、自分の部屋を案内した。二人から「きれいなお部屋だね」とお褒めの言葉を頂いた。紺野さん、ベッドの下を覗いても何もありません。


―――――


「大輝、そこ間違ってる。その場合の文法は…。」

「紺野さん、そこの計算はこうすれば効率的だよ。」

「桜井さん、その文章のポイントは…。」


 大輝が合流して勉強会が始まった。彼はジュースを差し入れてくれた。家に入ると「広い家だな。」とか「お前大人だな」とか、すでに彼女たちとのやりとりを復習した。私の部屋を見たいと言ったが、そのイベントはすでに終了したと伝えた。彼は「ええ~」と残念そうだったが、「まあ、後で勝手に見るわ。」と言っていた。たのむから勝手には見るな…。


 最初はそれぞれの課題を黙々とこなしていたが、途中で大輝が私を質問攻めにしたのをきっかけに、私が講師みたいになってしまった。2時間程勉強したので、おやつタイムとなった。やはり進学校に合格した生徒だけあって、勉強への集中力はかなり高い。私にとってもいい刺激となった。


「それにしても、城田君は教え方上手だよね~。」

「うん、とてもわかりやすかった。」

「そうだろ!やはり俺の目に狂いはなかった。」

 彼女たちの褒め言葉は有難く受け取っておくとして…。おい大輝、お前は誰目線なんだ?


「そうかな…。毎日復習しているからかな…。」

 たぶん、コミュニケーション能力も補正があったのだろう。


「だけど、こっちばかり質問しちゃって、城田君の勉強の邪魔になってない?」

 桜井さんはやっぱり優しい子だ。ちょっと申し訳なさそうに訊いてくる。


「全然大丈夫だよ。こっちも教えることで勉強の内容を再復習できるし。」

「そう。それならよかった。」


 そんな会話を続けながら、みんなが差し入れてくれたお菓子とジュースを頬張る。桜井さんが持ってきてくれたクッキーおいしい。


「そういえば、女バスの友達から聞いたんだけど、城田君もうすでにレギュラー候補なんでしょ?」

「そうなの?俺なんてまだまだだぜ。まわりの先輩たちだけじゃなくて、他の1年生にもうまい奴多いから、レギュラーなんてまだまだだな…。」

「私も。先輩もそうだけど、まわりの1年生も音楽経験者が結構多くて…。少し自信なくしそう…。」

「いやいや、それただの噂だから。そもそもバスケ始めたのだって、中学入ってからだし。それにみんなもまだ始まったばかりでしょ?これからだから大丈夫だよ。」

「だけど、1年生でレギュラー獲ったらすごいよね。うちの学校のバスケ部って結構有名なんでしょ?」

「そうらしいね。今まで知らなかったけど…。まわりの経験者ばかりで肩身狭いよ。これで万が一レギュラーなんて獲ったら、まわりの同級生に何か言われそう…。まあ無理だけど。」

「だけど、中間テストが終わったら、夏の大会に向けて練習試合とか多くなるんでしょ?もしレギュラー獲ったら教えてね。応援に行くから。ねっ!美羽ちゃん。」

「うん。絶対応援に行くよ。」

「俺も行くぜ。まあ部活なかったらだけど。」

「ありがとう。万が一レギュラー獲ったら教えるよ。みんな部活がある日かもしれないけど…。」


 そんな会話をしつつ、勉強を再開した。夕方になり、キリのいいところでお開きとなったが、徒歩で来た彼女たちを家まで送ることにした。大輝は自転車で来たのと、方向が逆だったので、マンションのロビーで別れた。


「今日は城田君のおかげで、勉強がだいぶ進んだよ。ありがとう。」

「確かに。授業でモヤモヤしていたところが理解できて、楽しかった。」

「こっちもいい復習になったよ。中間テストまであまり時間ないけど、一緒にがんばろうね。」

「そうだね~。そういえばテスト期間とその1週間前は部活禁止なんでしょ?そうしたら、またこのメンバーで勉強しない?」

「私はとても助かるけど…。城田君、いいの?」

「全然いいよ。みんなと勉強できて、俺も楽しいし…。」


 前世では友達も少なくというか、ほとんどいなくて、こうした勉強会みたいな青春イベントも発生しなかった。ラノベを読んで、「こんな勉強会したかったな~。」と思っていたので、こちらもそういう意味でワクワクしている。


 そんな感じで会話を続けながら、まず紺野さんを家まで送った。「送ってくれてありがとう。美羽ちゃん、よろしくね!」と言われ、そのまま桜井さんの家に向かう。


「………」

「………」


 会話がない。よくよく考えたら、相手が中学生とはいえ、女子と二人っきりになることはなかったな。前世も然り…。


「…桜井さん、大丈夫?疲れちゃった?」

「ううん。全然大丈夫。城田君こそ疲れてない?」

「大丈夫だよ。俺若いから…。」

「…ははは。何それ?私たち同い年だよね。それとも城田君には私はおばさんに見えるの?」

 桜井さんは少しムスっとした表情で見つめてくる。


「いやいやいや、違うよ。そんなわけないじゃん…」

「ははは。冗談だよ。ちょっとからかってみただけ。」

「ふう、もうやめてよ…。心臓止まるかと思った…。」

「ごめんね。だけど城田君って大人びてるよね。会話も仕草も。」

「そうかな…。そんなことないと思うけど…。」

「ううん。何か同級生に見えない。」

「それって、おじさんに見えるってこと?」

「違うよっ、もう!だけどね、何か頼りがいのある人って感じ。」

「そう?可愛い桜井さんに言われると、少し照れるな。」

「!!!もうっ。からかわないで。」

「えっ!別にからかってないよ。」

 そう真顔で答えると、桜井さんの頬が赤くなっている気がした。まあ、まわりがもう薄暗くなってきたからわからないけど。


 桜井さんの家はどんな感じなんだろうか…。

 そんなことを考えながら、二人はその時間を楽しむように、ゆっくりと歩みを進めた。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リア充な青春時代憧れます! 異世界のような派手な世界ではない現代への転生も良いですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ