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第6話:席替えと委員会

ブクマ増えてました。

ありがとうございます。

 今週から本格的な授業が始まるわけだが、その前にあるイベントがあった。そう「席替え」である。先週までは出席番号順で並んでいただけであったが、クラス内の交流を更に深めるため、藤井先生は席替えすることを決めたようだ。

 それに生徒によっては、視力の関係で前席がいいという要望もあるだろうから、それも踏まえてのことだろう。


 前世でも席替えはクラスの大事なイベントであったと記憶している。教壇の前になり嘆く者、窓際の最後部で喜ぶ者など、生徒はそれぞれ悲喜交々だった。


 藤井先生が朝のホームルームで席替えを伝えると、クラスメイトたちは喜んでいた。やはり今世でも席替えは重要なイベントらしい。まあ、先生から方法がくじ引きであることが伝えられると、「えーっ!」と反応していたが…。好きに座らせると仲間はずれがでるかもしれないからな…。ちなみに俺は一番後ろの席がいい。


「城田君…、席離れちゃうね…。」

「そうだね。まあくじ引きだからどうなるかわからないけどね。まあ、他のクラスメイトのことを知るのも大事だから。」

「もう…。そこはもう少し残念がってほしかったな。」

「あれー?美羽は城田君と離れるの寂しそうだね。」

「えっ…、いや、そういう意味じゃないよっ。」

 紺野さんのおちょくりに桜井さんが「止めてよ」少し顔を赤くしながら答えている。


「悠真、お前はどこがいい?オレは絶対に一番後ろに座るぜ。最前列なんてまっぴらだ。」

 大輝よ…。なぜお前は「フラグ」を立てる。


 くじ引きの結果、私の席は教室のど真ん中から、教壇の前へと変わった。桜井さんと紺野さんは、それぞれ廊下側の真ん中とその前。彼女たちは、列は変わったものの、前後の関係は変わらなかった。二人とも「また一緒だね」と喜んでいた。そして、大輝は窓際の最前列。自らフラグを回収していた。まあ窓際だから、私よりはまだマシだろ。そのせいか、大輝は私を見て、少しほくそ笑んでいる。ちょっとした優越感にでも浸っているようだ。しかし、私は最後列になる自信があった。なぜなら…、


「城田君、悪いけど後ろの生徒と変わってくれる?城田君は背が高いから、後ろの生徒が黒板見えないと思うから。」


 そう。自身の身長ゆえである。私の身長は中学1年生にしては高い。それが中央列の一番前に座れば、当然後ろの生徒からは邪魔になるということだ。


「わかりました。全然いいですよ。」


 大輝よ。そんな恨めしそうに見るな。それから一番後ろを引き当てた青田君よ、そんな悲しそうな目をするな。俺のせいじゃない。


―――――


 進学校というだけあって、授業のレベルは高く、進むスピードも速い。宿題もそれなりに出されている。ただ、俺は問題なく授業に付いていくことができている。転生時の補正がそれに寄与しているのは言うまでもないが、単に理解度が高いだけではなく、すでに「知っている」ものとして授業を受けている。つまり、初めて習うというよりは、知識として習得済であるということだ。


 前世では中学校が卒業しているから、それは当然であるように思うが、学んだ内容を老人になってまで覚えているはずもない。しかし、授業を受けていると、何だか復習をしている感じだ。

 それが気になったので、本屋で中学校ではなく、高校の参考書を見たら、それも「知っていた」。この転生補正は大分優れているようだ。当然、全ての知識を知っているわけではないが、記憶力・理解力ともに上昇しているため、今世で「学ぶ」ということにはそれほど苦労はしないかもしれない。それを思うと、テンションが上がってしまった。


―――――


 さて、話を学校に戻すが、今日のLHRロングホームルームでは、委員会を決めるそうだ。


「なあ、悠真。午後の委員会決め、何にする?」

 大輝は、学食のカレーライス大盛りを食べながら、午後のLHRでの委員会決めについて訊いてきた。

「委員会ねえ…。やっぱりラクそうなやつ?お前は、翔太?」

「オレもラクそうなやつだったら何でもいいや。」

 翔太は塩ラーメンを啜りながら、面倒くさそうに答える。


 彼は大倉おおくら 翔太しょうたで、席替えの時に前の席になり、仲良くなった。それから昼時は大輝と3人で昼食を取るようになった。


「オレは体育委員だな。体育が一番好きな科目だからな。」

 大輝は自信満々にそう言うが、おそらく体育で使った道具の片付けとか、体育館の鍵を開け閉めとか、意外に大変だと思う。俺は遠慮しておこう。


「俺は読書が好きだから、図書委員にしようかな。」

「マジか。図書委員は昼休みと放課後に当番があるんだろ?全然ラクじゃないじゃん。」

 翔太の言うことももっともだ。だけど、せっかくやるなら、少しぐらい「委員会」らしさはほしい。

「まあ、毎日じゃないだろうし。少しくらい仕事した方がよくね?」

「ああ、なるほど。オレはどうするかな…?」


―――――


「ねえ、城田君は委員会どうするの?」

「委員会?本が好きだから、図書委員にでもなろうかなと思ってるよ。」

 昼食を食堂で済ませた後、教室に戻ると、桜井さんと紺野さんに委員会について訊かれた。


「図書委員なんだ。だけど、城田君はしっかりしてるから学級委員とかいいんじゃない?」

「ああ、確かに。城田君は頼りがいあるもんね。」

「いやいや、学級委員なんてめっちゃ大変そうじゃん。ちょっと勘弁。」

「「ははは。」」


「そういう桜井さんと紺野さんは?」

「特に決めてないかな。体育委員とかいいかも。面白そう。私、運動好きだし。美羽は?」

「私はそうだな…。私も読書が好きだから、図書委員にしようかな…。」

「ふーん。もしかして城田君がやるって聞いたから?」

「えっ!ち、違うよ。もう、変なこと言わないで。」

 何か盛り上がっている女子を眺めながら、昼休みは過ぎていった。


―――――


「じゃあ、このLHRでは予告した通り委員会を決めるよ。まずは学級委員から決めて、あとは学級委員に進めてもらうからね。」

 思った通り、最初は学級委員から決めるのか。これは誰かにやってもらおう…。


「学級委員は男女一人ずつだからね。誰か立候補する人はいるかな?」

 藤井先生の呼びかけに生徒はそれぞれまわりを見渡すが、誰も挙手する生徒はいなかった。


「まあ、やっぱりいないか。じゃあ他薦にしようか。だれかこの人にやってもらいたい人がいれば、挙手してね。」

 この発言にも挙手する生徒はいなかった。まあ、誰かに押し付けるみたいで、ちょっと遠慮しちゃうよな。


「やっぱり他薦でもダメか…。まあ遠慮しちゃうよね。じゃあ、先生から推薦しようと思うけどいいかな。」

 それに反応を示す生徒はいない。「もしかしたら自分が」と思う生徒は自分からは声を発しないだろう。

 先生は生徒たちの様子を確認すると、私の視線が合った。


 ……嫌な予感しかしない。もしかして知らずとフラグを立てたか?


「じゃあ、私からは城田君を推薦します。彼はしっかりしているし、校外学習でもグループをよくまとめてみたいだし、問題ないと思う。城田君、どうかな?」

「…まあ、みんなが良ければ…。」

 やられた…。こんな雰囲気では断るに断れない。大輝よ、その意味不明なグーサインやめろ。


「じゃあ、快く引き受けてくれた城田君に拍手。」

 クラスメイトの拍手により、一番大変そうな学級委員を務めることがきまった。


 とりあえず、俺が学級委員に決まった。先生から「あとは任せるよ。」と進行を委ねられた。まあ、やるしかないか。前世では社会人生活が長かったから、こういうことに不慣れというわけではない。教壇に向かい、委員会決めを進めることにした。まずは女子の学級委員か。


「先生、女子の学級委員はどうすればいいですか?先生の意見を教えて下さい。」

「そうだね…。まあ、先生から推薦してもいいんだけど、できればみんなの自主性を尊重したいな。誰か立候補してくれればいいんだけど。もしくは城田君の推薦でもいいよ。」

「いや…、私の推薦というのも…。誰か、学級委員に立候補してくれる人はいませんか?」


 俺の呼びかけに声を上げる生徒はいなかった。まあ、予想通りだな。やっぱり、さっきと同じように先生から推薦してもらおうか。そう思った矢先、一人の女子が手を挙げた。


「あの…、もしみんなが良ければ、私がやります。」

 手を挙げたのは桜井さんだった。


「桜井さん、いいの?先生としては助かるけど。みんなはどうかな?」

 少しの沈黙の後、教室の端から拍手が聞こえた。紺野さんだった。それに釣られるようにして生徒たちから承認の拍手が起こった。


「じゃあ、学級委員は城田君と桜井さんね。みんな、引き受けてくれた二人にもう一度拍手。」


 学級委員が決まった後は、委員会決めはスムーズに決まった。俺がみんなに希望を聞いて、それを桜井さんが黒板に板書するという感じで、順調に決めていった。

 大輝と紺野さんは希望通りの体育委員、翔太は結局図書委員になった。彼は保健委員を希望したが、ジャンケンに負けた。「オレ、読書苦手なんだよな…。」と嘆いていた。ドンマイ。俺は一番大変そうな学級委員なんだからな。我慢しろ。

読んで下さり、ありがとうございました。

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