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第27話:転校生

PV数増えてました。ありがとうございます。

 今日から2学期が始まる。まだ残暑が厳しいが、生徒たちは元気に登校してくる。この残暑が厳しいとか、生徒たちが元気にみたいな視点は、前世で60歳だったころの感じが抜け切れていないのだろうと、ちょっと可笑しく思えてしまう。


「なにニヤニヤしてるんだ?」

「えっ?いや何でもない。」


 そんなことを考えていると大輝にツッコまれてしまった。


 いまは朝のホームルーム前。この後体育館に移動して始業式が行われる。クラスメイトたちは夏休み振りに会う友人たちと、夏休みの思い出話に花を咲かせている。


「そういえば、聞いたか?転校生の話。」

「転校生?」


 白麟学園には転入試験があり、それに合格すると各学期の始めに転校が認められている。白麟学園は全国でも有数の進学校だから、この転入試験の合格を目指す生徒も少なからずいるらしい。今回もその類いだろうか。


「さっき先生に用事があって職員室にいった時、2学期から転校生がいるみたいな話を耳にしたんだ。」

「その話、俺も聞いた。」

 大輝の話に翔太も乗ってきた。


「そうなのか。でも学年もわからないんだろ?」

「いや、どうも俺らと同じ学年らしい。」

「ふーん…。」

「なんだ、あまり興味なさそうだな。」

「まあ同じクラスになるとは限らないしな。」

「そうか?俺は同じクラスになる自信があるな。」

「ははは。お前の自信の有無は関係ないだろ。」


 そんなたわいのない会話をしていると、教室に藤井先生が入ってきた。


「よーし、みんなー、席に座って。」

 先生の掛け声でみんながそれぞれの席に座る。


「みんな夏休みはどうだった?有意義に過ごせたかな?まあ、それは置いといて、まずはみんなに新しい仲間を紹介します。じゃあ黒紫さん、入ってきて。」

 その言葉にクラスのみんながざわつく。ふと翔太を見ると、軽くガッツポーズをしているのが見えた。彼の自信は当たったらしい…。それにしても、黒紫さん?どこかで聞いたような…。


 ガラッと教室の扉が開き、一人の少女が入ってくる。黒色のロングヘア―で、ポニーテールが良く似合う可愛い少女だった。あの子は確か…。


「じゃあ、黒紫さん。自己紹介して。」

「みなさん、はじめまして。2学期からこのクラスに転校することになりました、黒紫紗奈です。早くみなさんと仲良くなりたいと思いますので、よろしくお願いします。」

「はーい。みんな黒紫さんに拍手ー!」

 クラスメイトは全員拍手していた。転校生が来たというイベントで盛り上げっているのもあるが、何よりも美少女の登場に男女問わず賑わっている。みんな「あの子かわいい」と言っている。


 彼女は私と目が合うと、少し驚いた表情を見せた。事実、私自身も驚いている。黒紫さんは、先日コンビニであった黒紫さんだったのだから。最近引っ越してきて、学校も変わったとは言っていたけど、まさか、この学校に転校してくるとは思わなかった。意外な出会いもあるものである。

 彼女は自身を引っ込み思案と言っていたが、さっきの自己紹介も堂々としたものだった。そう思っていると、彼女から軽く手を振られた。自ずとクラスの視線が私に集まる。そうなると無視するわけにもいかないので、私も手を振った。


「なに~?黒紫さんと城田君は知り合いなの?」

 藤井先生の少し揶揄うような問いに、「この前知り合いになりました。」と笑顔で彼女は答えていた。


 クラスの男子たちから、「また城田かよ~。」とか聞こえたが、とりあえずそっちの方は無視することにした。


―――――


 ホームルームと始業式は無事に終了した。彼女はクラスメイトから転校生初日特有の質問攻めに遭っていた。まあ、あの分だとクラスに溶け込めるのも時間はかからないだろう。


 今日はもう帰るだけなのだが、先生から学級委員で彼女に学校案内してほしいと頼まれた。というわけで、帰りのホームルーム終了後に、彼女と私、そして桜井さんで学校の施設案内をしている。


「ここが美術室で、一番奥が音楽室です。室内はこんな感じかな。」

「ありがとうございます。だいぶ助かりました。学校の中がこんなに広いなんて思わなかったので…。」

「ふふふ。私も最初は迷ったりしちゃいました。」

 主に桜井さんが案内をして、それを私が後ろから眺めている。これ、私が本当に必要かと思うぐらい、桜井さんの案内がわかりやすくて完璧だった。


「今日はお二人ともありがとうございました。外で母が待っていますので、このまま失礼します。明日からよろしくお願いしますね。城田君、桜井さん。」

「うん。また明日。まあ明日はいきなり実力試験だけど。」

「そうですね。ここの学校はレベルが高いので、今から緊張しています。」

「また明日ね、黒紫さん。」

「はい。それではさようなら。」

 黒紫さんはそのまま帰宅の途に就いた。その場に残った桜井さんと私。


「なんかまだ緊張しているみたいだったね。黒紫さん。」

「そうだね。同級生なんだからもっとフランクでもいいのにね。まあ最初会った時もああいう丁寧な感じだったけど。」

「………。城田君は何で黒紫さんのことを?」

「えっ…。ああ、夏休みにコンビニで会ったのがきっかけかな。」

「コンビニで?」

 私は桜井さんに彼女との出会いについて簡単に話した。コンビニで彼女とその妹に出会ったこと。会計の時にひと悶着あり、それに助け船を出したこと。図書館で少しお話ししたこと。そして妹の芽衣ちゃんがとても可愛かったこと。


「そうだったんだね…。(城田君の無自覚攻撃が出てなければいいんだけどな…)」

「えっ?」

「ううん。何でもな~い。それにしてはとても仲良さそうだったね。」

「そうかな。まあ初めての学校で知り合いに会えたからちょっと安心したとかじゃないのかな。」

「そもそも、夏休みに偶然出会った女の子が、同じ学校に転校してくるなんてすごい確率だね。」

「それは思った。まるで小説みたい。」

(もう、そんな嬉しそうに言わなくても…。)

「えっ?何か言った?」

「もう、何でもないです。」

「でも…。何か怒ってる?」

「別に怒ってないよ…。ただ城田君の言ってたみたいに何か運命的な出会いだなと思って…。」

「えっ…。そこまで言ったつもりはないけど…。まあ偶々でしょ。」

(向こうはどう思ってるかわからないけどね。)

「えっ?どうかした?もしかして体調悪い?」

「はあ~。もういいです。」

「なに、この俺が呆れられてる感。」

「ふふふ。そんなことはないですよ。ちなみに…。」

「ちなみに?」

「ちなみに、城田君はああいう黒紫さんみたいな子がタイプなの?」

「タイプ?ああ…、確かに可愛いとは思うけど。あまり考えたことない。」

「本当~?」

「本当だよ。まだ出会ったばかりだしね。」

「でもすごい可愛いよね。」

「そうだね。でも…。」

「でも?」

「でも、桜井さんもすごい可愛いから安心して。何に安心するかはわからないけど。」

「!!!出た…、2学期最初の無自覚攻撃。でもそうか…へへへ。」

「さて、俺たちも帰ろうか。一緒に帰る?」

「うん!」

 私たちも帰宅の途に就くことにしたのだった。


―――――


 そして翌日の実力試験。

 私は全教科満点で学年1位を見事に取った。他のメンバーもみんな20位以内に入っている好成績だった。そして黒紫さんも10位とみんなを驚かせていた。

 黒紫さんからは「城田君って頭いいんですね。今度勉強教えてほしいです。」とお願いされたので、「もちろんいいよ。」と答えておいた。今度の勉強会からまた女子が1名増えた瞬間であった。

読んで下さり、ありがとうございます。


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もし「おもしろい」「続きを読みたい」と思われた方は、宜しくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。

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