第24話:ちょっと幕間的な感じ
更新が遅れてすみません。
「男女で行くプールは、まさにアオハルである。」
これは翔太の言葉である。じゃあ、お前がやれよ。企画と連絡。
というわけで、みんなでプールに行く日程と場所だけ決めた。グループトーク内は、結構盛り上がっている。大輝と翔太は、新しい水着を買いに行く話で盛り上がっているが…。お二人さん、それは女子の会話では?
しかし、私たちがプールに行くのは、夏休み後半である。何故か。その前に部活合宿・試合&宿題&実力テストの勉強が待っているからだ。つまり、今回のプール企画は、「がんばった夏休みのご褒美」的な位置付けである。
というわけで、私も3日間の部活合宿が始まった。
―――――
「よーし、あとダッシュ30本!!」
「「「はいっ!!!」」」
実は部活の合宿というものに興味と憧れがあった。まさに青春という感じがするからだ。前世を帰宅部というもので過ごした私にとっては、「部活合宿」というものは未知の領域だった。だって、帰宅部に合宿ないし…。
合宿は夏祭りの翌日から3泊4日で行われた。場所は学校。さすがに部活に力を入れているだけの学校だけあって、学校そのものの施設も充実されており、宿泊所も学校の敷地内外に設置されている。この時期はバスケ部と同じように、運動部・文化部に限らず、学校の至る場所で合宿が行われていた。なんといつものメンバーも同じ日程で合宿が行われており、昼食時は大輝や翔太と食堂で会ったりもした。大輝の真っ黒に焼けた肌と翔太の真っ白な肌が対照的で印象的だった。
さて、部活2日目の夜。私は食堂で勉学に勤しんでいた。意外にそういう生徒は多く、文武両道を謳う学校の生徒はやはり意識が高いらしい。斯くいう私も、前世で勉学に勤しめなかった分も、今世で勉強すると決め、こうして広々とした食堂にいるわけだ。ただ、夏休みの宿題はほとんど終わらせてしまっている。これはやはり転生補正が効いたのか、それなりの量があったが、結構早く終わってしまった。あとは自由研究だけである。ちなみに前世でも宿題で自由研究があったが、そもそも「研究するかorしないか」が自由だと認識しており、宿題提出日にクラスで一人だけ提出できなかったという苦い思い出がある。今世ではそれは繰り返すまいと思っている。
閑話休題。
ということで、いまは夏休み明けの実力試験に向けた勉強をしている。1学期の復習と応用問題を全教科繰り返し取り組んでいる。
「あ、城田君。」
勉強を開始して1時間ぐらい経った頃だろうか。後ろから声を掛けられる。振り返ると、そこには桜井さんがいた。彼女も合宿でこの学校内の施設で泊まりだと聞いていた。いつもの制服でもなく、お出かけ着でもなく、Tシャツにハーフパンツという普段着で、ちょっと新鮮だった。そして普段着でも可愛い。
「城田君、おつかれ。何してるの?」
「桜井さんもおつかれ。いまは実力試験の勉強中。」
「もう勉強してるの!?宿題は?」
「もうほとんど終わったよ。あとは自由研究だけ。」
「あの量、もう終わったの?私はまだ3割ぐらいなのに…。」
「ははは。まあ、時間あったし…。」
「城田君も部活あったでしょ?それでもう終わってるなんて…。何か私の時間の使い方が悪いみたい…。」
「そんなことないよ。ほら、そこは持ち前のガッツで…。」
「ふふふ。何それ?大倉君みたいなこと言って。ねえ、隣に座っていい?」
そう言って、彼女は右隣に座る。お風呂上りなのか、彼女からいい香りがした。
「桜井さんは何してるの?」
「私は休憩中。これから夜練なの。」
「えっ!これから練習あるの?」
「うん。まあ個人練習でするしないは自由なんだけどね。でも、まわりのみんなはレベル高いから、ちょっとでも気を抜くと追いていかれちゃう感じ…。やっぱりコンクールのメンバーには選ばれたいし…。」
「そうなんだ…。吹奏楽部も結構シビアなんだね。」
「バスケ部もそうでしょ?」
「そりゃ、レギュラー争いはシビアだけどね。」
「でも…、余裕な感じ?城田君なら問題なさそう。この前の練習試合でもスタメンに選ばれたし。」
「全然そんなことないよ。あれは偶々だから…。」
「そうなの?でも城田君ならしっかりレギュラーに選ばれてそう。」
「まあ、そのご期待に沿えるようがんばります…。」
「ふふふ。」
彼女は笑いながら、じゃあねとその場を後にした。これから練習なのだろう。その後ろ姿から真剣さが伝わってきて、自分も奮い立たされた気がした。
―――――
「あれ、城田君じゃん。ねえ、ひなた。城田君いるよー。」
「あ、本当だ…。」
「次は倉本さんと紺野さんか。」
今度はバレーボール部の合宿中である倉本さんと紺野さんに会った。彼女たちもTシャツにハーフパンツで可愛らしい恰好をしている。
「次って?」
「さっきまで桜井さんと話してたから。」
「ふ~ん。美羽もちゃんとやることやってるね。」
「えっ?」
「ううん。こっちの話。ところで何やってるの…。うわ、まさかの勉強中。」
「うわってことないでしょ。」
「ははは。宿題やってるの?」
「宿題はほとんど終わったから、実力試験の勉強中。てか、このやり取り、もう桜井さんとやったな。」
「えっ!?もう宿題終わったの?早くない?」
「そのやり取りももうしたな…。」
「もういいじゃん。私たちとやっても。ね、ひなた。」
「ははは。冗談だよ。冗談。」
「ねえ、ひなたからも何か言ってよ。って、どうしたの?さっきからコソコソ隠れて…。」
倉本さんが指摘するように、さっきから紺野さんは、倉本さんの後ろに隠れている。
「ねえ、城田君。夏祭りの時、ひなたと何かあった?夏祭りの時から、何か様子が変なんだよね…。」
「そうなの?特に何もなかったけど…。」
「本当かな~?城田君のことだから、また無自覚攻撃したんじゃないの?」
「確かに無自覚攻撃とは言われたかも…。」
「あちゃ~。じゃあ原因はそれかな。もう、ひなた、何て言われたの~?」
「ううん。大丈夫。」
「絶対大丈夫じゃないでしょ?そんなに顔赤くして~。」
「別に赤くしてないよ…。もう、凛のいじわる…。」
「あ~あ。ひなたが乙女の顔してる。こりゃなんとしても聞き出さなきゃだな。じゃあね~、城田君。私たちは戻るわ。」
「あっ…、うん。じゃあね。」
さ、行こうと言われ、紺野さんが連れて行かれる感じで戻っていった。
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「あ~、城田君~。」
「おっと、今度は和知さんか。」
次は和知さんだった。やっぱり和知さんも部屋着である。さっきの彼女たちもそうだが、みんな部屋着姿でも可愛いな。
「今度はってことは~、もう誰かに会ったの~。」
「うん。さっき、桜井さん、倉本さん、紺野さんにね。」
「そうなんだ~。3人には先越されたちゃったね~。」
「うん?何のこと?」
「なんでもな~い。それより城田君は勉強中ですか~。偉いですね~。」
「そうかな?」
「そうですよ~。私なんて、もう手が痛いから勉強無理です~。」
「ははは。それは筆の持ち過ぎ?」
「そうです~。朝からずっと筆握ってます~。」
「それはそれで大変そうだね。」
「あっ、そうだ~。ね~、城田君、手をマッサージしてくれない~?」
「えっ、俺が?」
「そうです~。ダメ~?」
「いや、だめじゃないけど。けど、いいの?俺で。」
「城田君なら全然OKです~。じゃあ、は~い。」
そう言って、彼女は私の右隣に座り、右手を差し出してきた。それをできるだけ丁寧にマッサージする。これでいいのかな?ちょっと恥ずかしいかも…。
「こ、こんな感じでいい?」
「はい~。気持ちいいです~。これで凛たちに遅れた分は取り戻せましたね~。」
「えっ、遅れたって?」
「なんでもないです~。ありがとうございます~。」
彼女は「じゃあ勉強がんばってね~」と言って、食堂を去っていった。まだ自分の両手に彼女のぬくもりが残っている。やっぱりちょっと恥ずかしかったな…。
―――――
「おっ、翔太。悠真いたぞ。」
次は大輝と悠真だった。私を探していたらしい。
「あ、もう大丈夫です。」
そう言って軽くあしらうと、彼たちは「そんなこと言うなよ~。」と笑っていた。それを見て、私にも笑みがこぼれた。
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