第21話:夏休みに向けて
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「そこ間違ってるよ。そこはこの公式を使うんだ。」
「あ、そうか。さすが城田君、わかりやすい~。」
私たちは中間テストの時と同じように勉強会を開いている。私の自宅で。
前回と異なるのは、メンバーに倉本さん、和知さん、翔太が加わったことだ。合計で7人の勉強会。普段はひとりで暮らしているから、いまはだいぶ賑やかで、心なしか家も喜んでいるように感じる。まあ、お決まりのお部屋チェックは敢行されたが…。大輝と翔太、一体何を必死に探しているんだ。ベッドの下を覗くな。クローゼットの中を勝手に開けるな。
それと異なる点がもうひとつ。女子たちが非常に仲良しになったことだ。もともと桜井さんと紺野さん、倉本さんと和知さんは仲が良かったが、いまでは4人で1グループの仲良しグループになっている。まあ仲の良い友達が増えるのはいいことなんだが、私へのお誘い回数が増えた気がする。先日みたいに休みの日にどこかへ出かけるということはないまでも、一緒に昼食を取ろうとか、授業のグループ学習で同じ班に積極的に誘われたりなど。そこには何か共通意識が働いている気がする。まあ可愛らしい女子から誘われるのは悪い気はしないので、良しとしよう。他の男子から「なんだよ、また城田かよ」と何がまたなのか、よくわからない批判をもらう回数も増えたが…。知らん。
「ああ~、なんでテストなんかあるんだ~。この世から消えてほしい。」
「なんだ?その学生の本分そのものを否定するかのような発言は。」
「だってテストがなければ、もっと楽しい学校生活になると思わないか。」
「思わん。勉強は大切だ。それにテストがないと勉強しないだろ。特に翔太は?」
「そ、そんなことねえよ。お前は真面目だな。」
「真面目じゃなくて、それが普通なの。」
「そうだよ。城田君は真面目なんだから。大倉とは違って。」
「ええ~。倉本さん、それはないって。俺だって結構真面目な方だよ。こうやって勉強会に参加してるぐらいだし。」
「よく言うよ。『頼む。俺も勉強会に混ぜてくれ。今度のテストで成績が悪かったら、お小遣いカットの危機なんだ。』って泣き言を言ってたくせに。」
「おい!大輝、それは内緒だぞ。一部の限られた人間しか知らないんだからな。」
「これで全員知ることになったな。とりあえず勉強に集中しろ。」
「はいはい…。」
それから2時間程勉強に集中した。お互いに教え合ったりして、有意義な時間だった。斯くいう翔太も受験を勝ち残っただけあって地頭はいい。吸収も早かった。
現在休憩中。お菓子とジュースで談笑している。
「そういえば、期末テストが終われば、すぐに夏休みだよな。みんな夏休みの予定は?」
「部活だな。バスケ部は合宿して地区大会。」
「私とひなたも部活。合宿して夏の大会。でも城田君の応援行きたかったな~。日程がもろかぶりなんだよね~。まあ、大会で早く負けちゃえば行けるかもだけど。」
「でも負ける気ないんだろ。」
「もちろん!目指すは地区大会優勝。全国大会出場だからね。」
「私も部活です~。合宿もあります~。」
「へえ、書道部も合宿ってあるんだね。」
「ありますよ~。ひたすら書き続けるみたいです~。」
「ええ。俺絶対無理。座禅とかもあるの?」
「えっ、そんなのはないですよ~。」
「翔太は、書道部に何を期待してるんだ?というお前は?」
「うちは部活も合宿もあるぜ。」
「それこそ料理部って合宿あるの?」
「ああ、試合あるからな。」
「試合!?」
「そう、知らない?『全国中学生シェフ選手権』。団体戦なんだ。」
「初めて聞いた。」
「応援に来てくれてもいいぜ。」
「まあ、日程合えばな。」
「はいはい。その回答は合わせる気ねえな。」
「「「ははは。」」」
「桜井さんと大輝は?」
「私も部活。吹奏楽部はコンクール控えてるし、合宿でみっちり練習するみたい。」
「俺も部活。サッカー部の合宿は毎年キツイらしくて、いまからビビってる。」
「ははは。そうか~。みんな忙しいんだな。それとは別に宿題も多いだろうからな…。」
「やめろ、悠真。現実に引き戻すな。」
「いや、今の会話のどこに夢があったよ?全部現だったろ。」
「そう、それだよ?」
「「「?」」」
「せっかくの夏休みだろ。それが部活と宿題で潰れていいのかっていう話だ。」
「はあ~。まあ充実してるからいいんじゃないの。」
「違うぞ悠真。やっぱり遊びも大事だ。」
「遊び?」
「そう遊び。だからさ、夏休み予定合わせてみんなで遊びに行かね?」
「遊びって、どこに?」
「そりゃもちろん。夏休みと言ったら、『夏祭り』と『プール』だろ。」
「ああ、なるほど。」
「なあ、いいだろ?」
「いいだろって、みんなの予定が合うかな…。」
「それは持ち前のガッツで…。」
「そこは無計画かよ…。」
ふと女子たちを見ると、何かしらヒソヒソ話を始めていた。そして意を決したかのように倉本さんが言った。
「行きましょう!夏祭りとプール。」
「おお、マジ!?」
「ねえ、城田君も行くよね?」
「えっ…俺?」
「行くよね。私も行くから。」
「行きますよね~。」
「あっ…、うん。じゃあ行く。」
「よしっ!じゃあ決まり。詳細は悠真から後でメール頼むわ。」
「おい、翔太。その丸投げやめろ。」
「頼むよ。学級委員長。」
「はあ~。わかった。じゃあみんなに連絡するよ。夏祭りとプールも一応調べておく。」
「やったぜ。これで有意義な夏休みになるぞ。」
「その前にテストな。」
でも翔太の言う通り、今回の夏休みはとても有意義なものになりそうな予感がした。前世での夏休みは家でひっそりと一人で過ごしていた。両親は必死に働いていてから、私は自分から進んで家事をこなしていた。お母さんからは「遊びに連れて行けなくてごめんね。」と泣かれたのが、子供心ながら辛かった記憶がある。
それに対して、今回は部活に宿題に遊び。中学生らしい夏休みだった。自分が憧れていた夏休みがこれから到来すると思うと、翔太ではないが楽しみになっている自分がいた。
―――――
期末テストは無事に終わった。
勉強会に参加したメンバーは、軒並み成績を上げたようだ。翔太のお小遣い問題も解決したらしい。ちなみに私はまたもや全教科満点でトップだった。
翔太から「先生たちが騒いでたぜ。しんどん現るって。なんだろうな、しんどんって。新しい丼ぶりかな。」と言っていた。
それはおそらく「しん丼」じゃなくて「神童」だと思うぞ。料理のし過ぎじゃないかと少し彼を心配した。
そして終業式も終わり、ついに夏休みに突入した。
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