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第19話:三人でおでかけ(海岸公園③)

海岸公園編 終了です。

 商業施設での買い物というミッションを無事にクリアした私は、彼女たちと一緒に外にあるアトラクションゾーンにやってきた。相変わらず彼女たちに両腕をホールドされ歩く私。歩きにくいけど嫌な気分でもないという複雑な心境の中、どれに乗ろうか考えていた。


「ねえ、城田君。ここって、いま期間限定でお化け屋敷がやってて、結構流行ってるんだって。行ってみない?」

「お化け屋敷?俺は構わないけど、和知さんは大丈夫なの?」

 正直、和知さんはのんびりした性格のようだから、逆にお化け屋敷とか平気そうなイメージがあるけど、一応確認してみる。むしろ、倉本さんみたいに明るい子が全然ダメだったりとかしないのかな?


「私は大丈夫ですよ~。こうやって城田君にくっ付いていきますから~。」

「そ、そうか…。」

 だから和知さんくっ付き過ぎなんだって。何かいい香りがする。可愛すぎるだろ。

 はっ!何を考えているんだ。中学生相手に。俺も今は中学生なんだけど…。


「ねえ~、城田君~。さっきから美月の方ばっか見てない?私もいるんだけど~。」

 右側の倉本さん、何かご機嫌斜めな感じ…。


「えっ、そんなことないよ。ちゃんと倉本さんのことも可愛いと思ってるよ。」

「!!!出た、無自覚攻撃。でも、そっか~、可愛いか~。へへへ。」

 彼女のご機嫌は逆斜めになったようでまずは一安心。


「じゃあ、二人がそう言うなら、そのお化け屋敷行ってみようか。」

「うん。」

「は~い。」


―――――


「きゃあああ~!!し、城田君、お化け、お化け!」

「うわ~作りが凝ってますね~。本物みたいです。」

「うん…、そうだね。」


 三者三様。


 お化け屋敷は人気スポットということもあり、結構並んだ。やっと自分たちの順番かと思い、中に入ると、そこには薄暗くひんやりと涼しい空間が。和知さんの言う通り凝った作りだ。お化けに扮するスタッフの演技も鬼気迫るものがある。まあ、それはそれでいいんだけど…。


 とりあえず倉本さんが尋常じゃないぐらい怖がり叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。お化けがいるって叫んでるけど、そりゃいるでしょ。お化け屋敷なんだから。ゆるキャラなんか出てこないでしょ。

 一方で和知さんは、お化け屋敷そのものに関心があるようで、ふんふん頷いていた。お化けに対しても「大変ですね~」みたいな感じで。そんなことを言われたお化けは「あ、どうも」みたいな視線を送っていましたよ。

 というわけで、私の右腕は倉本さんによって散々引っ張られ、左腕は和知さんによってしっかり固定されている。つまり右腕がどこか行きそうです。右肩脱臼するわ。


 斯くいう私もお化け屋敷を楽しんでいる。別に心霊スポットに行っているわけではなく、作り物だとわかっているので、それほど怖くない。ちょっと驚きはするけど。前世でお化け屋敷に行った記憶はないので、とても新鮮だった。ここのスタッフには申し訳ないが、新鮮>恐怖という感じでとても楽しめた。こんなに楽しいんだな…、友達と遊びに行くって。前世の私って本当に生きてくことで必死でまわりが見えてなかったのかもしれないな。だからこんな転生をさせてくれた天使様に感謝だな。


 それにしても、和知さんじゃないけど、ここのお化け屋敷は凝ってるな~。中身が前世60歳のおじいさんからすれば、作り物かと冷めた目で見てしまうが、ひとつのアトラクションとして考えれば十分なものだった。特に気になったのは、気付いたら私たちの後を付けていた赤い帽子の女の子。あれだけがここのスタッフでも群を抜いて、お化け感を醸し出していた。やっぱりお化け役とかにもプロがいるのかなと思うぐらい、彼女から醸し出される異様感が凄まじかった。さすがの私もちょっと恐怖を覚えたくらい。だけど、あのスタッフ、ずっと私たちの後を付いて来るんだよな。入場者全員にああやって付いて来るのかな…?お化け役も大変だな…と思った。


 そしてお化け屋敷出口。明るい日差しが差し込んでくる。


「あああ~、やっと終わった~。怖かった~。ね、美月。」

「そうですね~。思ったよりも凝った作りで楽しかったです。」

「そう?私は怖すぎて…。もう1回は無理だわ。城田君は?」

「えっ、そうだね…。とても新鮮だったよ。」

「ははは。なに、その感想。おもしろい。」

「そう?それよりも倉本さんが腕を引っ張るから、腕が取れないか心配だった。」

「ははは。ごめんね。怖くて、つい…。」

「うそ。全然大丈夫。」

「もうっ、城田君のいじわる。」

「ははは。」


 お化け屋敷の出口では、スタッフがお客さんにアンケートを取っているようだった。私たちも当然のように声を掛けられ、三者三様の回答をした。


「そういえば、赤い帽子の女の子?あれは演技に鬼気迫るものがありましたね。スタッフだとわかってはいても、少し恐怖を覚えました。」

「えっ…?赤い帽子ですか…?おかしいですね…。そんなお化けはいないはずなんですが…。」

「いやいや、ずっと後ろを付いて来ましたよ。それもそれで恐怖をそそるというか。ね、倉本さん。」

「えっ…。私は気付かなかったけど。美月は?」

「え~、私も見なかったですね~。後ろも感心しながら見てましてけど~。」

「えっ?」

「やっぱり、その赤い帽子の女の子はスタッフにいませんね。そもそも子供は働けませんから…。後ろのお客さんを見間違えたのでは?でも、それもないか。中は他のお客様と重ならないように入場時間を調整してますから。」

「えっ…?」

「えっ…?」

「え~?」

「はっ…?」


 じゃあ、あれは、もしかして…。

 自分の背筋が凍りつくのを感じた。


―――――


 お化け屋敷を無事に(?)に終えた私たちは、最後のアトラクションということで、海岸公園で一番人気の観覧車にやってきた。一番人気ということもあって、大行列ができており、乗るまでに結構な時間を要してしまった。時刻は夕方。もう陽が沈みかけている。


 私たちの順番が来て、観覧車に乗った。そういえば観覧車に乗るのも前世含め初めての経験だな。それにしても君たちなぜ私の両隣に。ちょっと狭くない。まあ言わないけど。


「ねえ、城田君。今日はどうだった?楽しかった?」

「うん。とても楽しかったよ。お化け屋敷ではアクシデントはあったけど…。」

「ははは。だって、お化け屋敷終わってから固まってるんだもん。あれはおもしろかった。」

「いやいや、あれは結構切実な問題だよ…。」

「ごめん、ごめん。」

「ううん。倉本さんも和知さんもありがとう。本当に楽しかったよ。」

「ねえ、今もだけど、今日ずっと私と美月が、城田君と腕を組んでたじゃない?ドキドキした?」

「う~ん。正直に言っていいの?」

「うん…。」

「めちゃめちゃドキドキした。だってこういう経験はしたことないし、最初はどうすればいいかわからなかった。だけど、こんなこと言うのは変かもしれないけど、悪い気分にはならなかった。」

「そっか~。へへへ。」

「そうですか~。じゃあ、やったかいがあるな~。」

「それにね、二人とも意識していないのかもしれないけど、二人はとても可愛いんだよ。そんな二人に腕を組まれたらドキドキするよ。今だってドキドキして心臓止まりそう…。まわりの視線も痛かったし…。」

「「!!!」」

「もうっ、意識してないのはどっちよ。そんな直球で言われたら、こっちも恥ずかしいじゃない。」

「出ましたな~、城田君の無自覚直球攻撃~。」

「そう?思ったことを素直に言ってるだけだよ。」

「もうやめて!ニヤニヤが止まらなそう…。」


 観覧車は頂上まで登ったようだ。あとは下るだけか。海岸公園というだけあって、海面に夕焼けの光が映えてとても綺麗だった。そんなことを考えている時だった。


「「ちゅっ」」


 自身の頬に柔らかい感触があったのは。思わず二人を交互に見る。二人は夕焼けのせいか、それとも他の理由か、頬を真っ赤に染めてこっちを見ていた。


「えっと…。その…。ありがとう?」

「ははは。もうっ、何で疑問形なの?」

「いや、だって…。今のは…。」

「今日付き合ってくれたお礼。」

「私もです~。」


 これってキスだよな。前世で経験がなかった私でも何かはすぐにわかった。これは普通…のことじゃないんだよな。こんあラノベ的展開が待っているとは思わなかった。


「今日腕を組んだのも、今したことも、誰にでもやるわけじゃないからね。城田君だけだよ。」

「私もです~。城田君だけ特別です~。」


 夕焼けのせいじゃない。

 私の頬は彼女たち以上に真っ赤になっていたであろう。それだけ衝撃的な出来事だった。


 今日は眠れそうにない。そんな気がした。

読んで下さり、ありがとうございます。


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