第17話:三人でおでかけ(海岸公園①)
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「ねえ、城田君。さっきの凛ちゃんの話…。」
「凛ちゃん?ああ、倉本さんのこと。」
「うん。一緒に遊びに行くって…。」
「あ、うん。和知さんも一緒らしいけどね。」
「…行くの?」
「まあ、断る理由もないしね…。」
「そうか…。断る理由は…ないか。」
「どうしたの?大丈夫?」
「うん…。大丈夫。楽しい日になったらいいね。」
「そうだね。機会があったら話すよ。」
「うん…。」
それだけ言い、桜井さんは自分の席に戻っていった。
―――――
そして日曜日。
今日は倉本さん、和知さんと一緒に出かける日だった。天候は快晴。天気予報によれば少し暑くなるらしい。
待ち合わせ場所は、駅前の時計台。この前桜井さんと一緒に出かけた時と同じ場所だった。
「お待たせー!城田君。こっちだよ。」
「お待たせ~。」
桜井さんもとても可愛かったけど、二人もそれに負けないぐらい可愛らしかった。倉本さんは、紫色のシルエットTシャツに白色のズボン。一方、和知さんは少し大人びた白を基調としたスクエアネックのTシャツに茶色のハーフズボン。
「どうかな。変じゃない?」
「うん。二人ともよく似合ってるよ。」
「よかった~。ね、美月!」
「そうだね~。二人で準備したかいがあったね~。」
相手の服装を褒めるというミッションを無事にクリアした私は、次の段階へと話を進める。実は昨日時点でどこに出かけるのかは決まっていなかった。二人とはメッセージのグループトークで「どこか楽しい場所がいいよね」と話してはいたが…。
というわけで大急ぎでネットで検索して調べた。さすがに無手で臨むのは失礼だと思ったからだ。その場で決めるのも十分ありだが、やはり女子はエスコートするべきだと学んでいた。もちろん前世でよく読んだラノベの知識だが…。
女子の前でいい恰好を見せたいというのが本音である…。
さて…。
「それでこれからどうする?」
「そうだね~。特に決めてないけど、ショッピングモールでも行く?」
「いいかも~。城田君は何か案はある?」
「案ってほどじゃないけど、少し離れた場所に海岸公園があるよね。商業施設もあるようだし、そこでもいいかなと思って…。」
「「!!」」
二人とも驚きを見せた。それこそ鳩が豆鉄砲をくらったかのように。まあその驚いた顔も可愛いけど…。
「えっ…。何か変なこと言った?」
「あっ、いや。まさか海岸公園のことを言われるとは思ってなかった。もしかして調べてくれたの?」
「実は昨日のトークの後にね…。」
「そっか…。いいよ、そこで。ありがとね。美月も平気?」
「もちろん~。でも嬉しいな~。城田君が調べてくれるなんて~。」
「そう…?俺も初めて行くからたいした案内はできないと思うけど…。」
「そっか…。『初めて』なんだね…。じゃあ早速行こう!」
三人はそれを合図に海岸公園に向かって移動を始めた。ここからは電車で1時間程度かかる。
電車の中ではお互いに無言だった…、という展開にはならなかった。三人もいれば誰かが話し始める。桜井さんと二人きりの時は、緊張で最初はうまく話せなかったが、今回はそれほど緊張していない。二人が緊張を感じさせない性格というのもあるだろうが、今世での経験値が上がっているということだろう。主に友人関係で前世とは全く異なる経験の連続で、最初はぎこちなかったコミュニケーションがその能力値を上げてきたという実感があった。前世では友人関係に恵まれなかったから、今世でのそれは楽しくて仕方がないというのが本音だった。
「この前の練習試合、本当にすごかったね。何か城田君がチャンスメーカーになって試合を動かしている感じがして。」
「そんなことないよ。もうあの時は必死で…。ほら、俺は初心者じゃない?だから失敗しないよう、失敗しないようにって、必死でプレイしてた気がする。」
「でも、傍目からは初心者じゃなくて上級者の貫録みたいなのがあったよ。ね、美月。」
「そうですね~。私、バスケのことはそこまで詳しくないけど、そんな私から見ても、『コイツできる』みたいな感じに見えたよ~。」
「何それ?(笑)」
「「「ははは。」」」
「でもあの試合で、確実に城田君のファンは増えたね。」
「そうだね~。」
「そうなの?自分ではよくわからないけど…。」
「城田君って、自分のことになると無頓着というか鈍感なんだよね。」
「最近、鈍感とはよく言われている気がする…。」
「そうだね~。城田君のことを気にしてる女子が結構多いのには気付いているかな~。」
「それ本当なの?たまに聞くけど、そんな実感は全然ない。」
「そんなことないよ。結構モテてるよ、城田君。」
「そう?女子からそんなこと言われたことないけど。」
「そんなことって?」
「えっ…、ほら「好きです」とか…?」
「ははは。そりゃないよ。みんな思ってるだけで、そんなストレートに言えないよ。」
「そんなもんなの?」
「城田君は女心がわかってないな~。」
「もしかして城田君は、まわりの女子から「好きです」「好きです」って言われるのが『モテる』ってことだと思ってるの?」
「違うの?」
「まあ全く違うとは言わないけど、普通はそんなストレートに『好きです』とか『かっこいい』みたいなことは本人に言えないと思うよ。特に『好きです』って本人に告白するのは、とても勇気がいることなんだから。」
「そうなんだね。確かに『告白』ってなると言葉の重みが違うかも。」
「でしょ~。その辺が鈍感なのかな~、城田君は。」
「勉強になります。」
「ははは。まあ勉強したまえ。なんてね。」
「でも二人は可愛いと思うよ。」
「「!!」」
「もう、城田君は突然直球でパスしてくるからタチが悪いね。しかも無自覚。」
「そうですね~。無自覚直球は凶器ですね~。」
「あれっ?いま俺ディスられてる?」
「「ははは。」」
そんなたわいもない話をしていると、時間はあっという間に過ぎ、無事に海岸公園に着いた。
海岸公園はその名に「海岸」を冠すように、海岸に開かれた公園だ。公園といっても、その敷地は広く、商業施設や屋台が点在されており、遊園地みたいな乗り物もある。しかし、その中で最も目を引くのは巨大な観覧車である。この観覧車は大人気であり、最低でも1時間は並ぶ必要があるらしい。まあすべてネットの情報だけど…。
「着いたね~。海風が気持ちいい。」
「今日は晴れて正解でしたね~。」
「確かに晴天のおかげで、景色も綺麗だね。」
三人思い思いの感想を述べた後、私たちは商業施設の中にあるフードコートに向かった。時刻は正午少し前。先に腹ごしらえをしようということになったのだ。
今日はまだ始まったばかりだ。
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