第13話:中間テストとミニゲーム
中間テスト、または中間考査とも言う。
生徒であれば、誰も逃れることができないイベントである。しかも白麟学園は進学校。中学受験の難関校であるこの学園に合格した生徒のレベルは決して低くない。否、高い水準だと言っていいだろう。
彼らの実力が試される最初のテストが、この1年生の中間テストである。
この学校では学年に限らず、テストの結果は全員貼り出されることになっている。それによって生徒同士の切磋琢磨を図り、生徒全体の学力を底上げする目的…らしい。したがって、テストの結果を他人に隠すことなど、到底できることではなく、自分の位置を如実に物語ってしまう。この結果張り出しにより、毎回生徒は悲喜交々しているという。
そして、今回。1年生最初、否、中学校生活最初のテストの結果は…。
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「城田君、すごいねー!学年トップなんて。しかも全教科満点。」
「ほんとだよ~。先生も言ってたよ。全教科満点なんて、とても稀だって。」
「うん…。ありがとう。」
「あれ、あんまり嬉しそうじゃないね。」
「えっ?そんなことないよ。まあ今回は運が良かっただけだと思うし…。」
「え~。それこそ、そんなことないよ。城田君頭いいし。実力だよ~。」
いま、私と話しているのは、同じクラスの倉本 凛さんと、和知 美月さんだ。倉本さんは、紺野さんと同じバレーボール部所属で活発な女子、一方で和知さんは書道部で少しおっとりしている女子だ。ちなみにどちらも可愛らしい。
ゴールデンウィークが明けてから程なくして中間テストが行われた。教科は国語・数学・英語・理科・社会の全5教科。自分ではまずまず出来た感じだったが、まさかがまさか、全教科満点で学年1位を取ってしまったのだ。結果だけ見れば嬉しい結果で、前世でもそんなことは起きなかったことはなかった。しかし、これも転生補正の結果かなと思うと、嬉しさ半分申し訳なさ半分といった感じだ。やっぱり、これは偶々のことだと思って、驕ることなく、謙虚に生きようと思ったテストであった。
ちなみに桜井さんを始めとする勉強会メンバーは、ゴールデンウィーク明けも一緒に勉強した成果か、全員30位以内と中々の好成績だった。
「そういえば、女バスの友達に聞いたんだけど、城田君、もうレギュラー入り確実なんでしょ?」
「ねえ、その『女バスの友達』って誰なの?それただの噂だからね。」
「え~、そうなの。だけど、もし試合出る時は教えてね。応援行くから。ね!美月。」
「うん。絶対行くよ~。」
「うん。あ、ありがとう。」
―――――
そんな3人の会話を遠目で見る女子が二人。桜井さんと紺野さん。
「ねえ、美羽。大丈夫?明らかに城田君モテ始めてるよ。」
「大丈夫だよ…。たぶん…。」
「そこはあんまり自信ないんだね。美羽は可愛いんだから、自信持ちなよ。」
「ううん。そんなことないよ。まわりの女子の方が可愛いし…。」
「大丈夫だよ。彼と連休中に二人きりで遊びに行ったんでしょ?美羽から聞いた感じ、あれは完全にデートだよ。それとも、美羽は、彼がどんな女子にも色目使うような男子だと思ってるの?」
「ううん。そんなことはない。だけど、彼はみんなに優しいし、何よりも無自覚だから…。」
「ふふふ。」
「えっ、なに?」
「『彼』だって~。」
「もうっ、先にひなたちゃんが言ったんでしょ!」
「でも彼ってっすごいよね。勉強もスポーツもできて、それで大人びていて優しいときたもんだ。もう言うことないんじゃない。美羽、うかうかしてると本当に取られちゃうよ。」
「ええ…、それはヤダ…。」
「美羽のそのヤダっていう顔、可愛い。それで彼のことも攻め落としちゃいなよ。」
「もう、無茶言わないで。」
「………。」
「どうしたの、美羽?」
「ねえ、ひなたちゃんは彼のこと…。」
「えっ!私っ!いや~考えたことなかったな…。私その辺疎いから。だけど校外学習のときに背負ってもらったのはポイント高かったかな…。」
「ほら、ひなたちゃんだって…。」
「でもでも、親友の好きな人を奪うなんてできないよ。それに、彼は美羽に夢中だと思うよ。」
「本当?」
「うん、本当。だって、美羽と話す時、何となくより優しそうな顔をするもん。さてはデート中に何かあったでしょ?」
「な、なにもないよ…。」
「本当~?顔赤いよ…。」
「もう、ひなたちゃんのイジワル!」
「ははは。」
―――――
「はっ!はっ!はっ!」
中間テストが無事に終わり、各部活も活動を再開している。我がバスケ部も夏の全国大会予選に向けて、スパートを上げて練習に打ち込んでいる。しかし、全国の強豪校だけあって、中心メンバーは2,3年生から構成されている。自ずと1年生は体力トレーニングと基礎練習を繰り返す毎日だ。練習も厳しく、同級生も息も絶え絶えに練習に励んでいるが、私はまだ余裕がある。もちろん転生補正のおかげだが、あとは純粋に楽しいのだ。前世では味わうことができなかった「青春」をいま味わっていると肌で感じているのだから。
「よし、全員集合!」
「「「「「はいっ!」」」」」
「今から1年生だけのミニゲームを始める。いまの1年生がどれだけの戦力になるかを見るためだ。だから全員本気に取り組むように。まあ、ここに手を抜く余裕がある奴はいないと思うが。この結果の如何によっては、今度の練習試合にも出場できるかもしれないからな。しっかりやるように!」
「「「「「おうっ!」」」」」
今井部長の言葉に、1年生の間に少なからず衝撃が走る。もしかすると、練習試合とはいえ、上級生を差し置いて試合に出られるかもしれないのだ。自ずと彼らのやる気が更に急上昇していた。
試合は前半10分・後半10分の計20分。1年生は20名いるので、2試合行われることになる。私は後半組に組み込まれた。
「ピィィー!」というホイッスルで第1試合が始まった。やはり大半が経験者であることと、これまでの基礎練習がちゃんと身に付いているのか、みんな上手い。後半組も経験者ばかりなので、初心者の私が足を引っ張らないか不安だ…。
「ピィィー!そこまで!」
そんなことに不安を感じていると、第1試合はあっという間に終わった。次は私の番だ。どうしよう、バスケの試合なんて初めての経験だ。上手くできるだろうか…。とりあえず一生懸命やろう…。どうせ初心者なんだし…。
「ピィィー!」
第2試合が始まった。
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結果的に私のチームが圧勝した。私は味方チームの全得点に絡む活躍。上背があったのも功を奏したが、何より身体能力が前世の同時期と比較しても、明らかに飛躍しており、しかもいまの同級生とも比較しても段違いに動ける。これまでたった数ヶ月の体力トレーニングと基礎練習が身に付き、上達ぶりが飛躍的だった。上級生・同級生からも「お前天才か。」と言われてしまう程だった。
「城田、再来週の練習試合。お前もスタメン候補にしておくからな。そのつもりで練習しろ。」
「はい。」
どうやら、今度の練習試合で出番があるみたいだ。一応、約束だから桜井さんたちにも教えておこう。みんな部活とか予定があるだろうけど、もし観に来てくれたら嬉しいなと思い、さらに練習に打ち込むのだった。
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