アニメオタクの恋の結末
良かったら、よろしくお願いします。
カクヨムさんの方にも掲載しました。
第一作目の
"あなたは世界で一番強いヒーローになりたいですか?(注)ただし、アホになりますが・・・"
が連載しています。
今までとは違うヒーローのお話だと思うので、良かったら、他の作品も、よろしくお願いします。
僕は、突進して来る口角に対して、再び身構え、こう叫ぶ。
「長いアニメの歴史において、相手を舐めて掛かる者、油断をしている者は大抵、敗れる。・・・・敗れるんだ!」
僕は、口角のパンチを両腕で防ぎ、口角の隙だらけの脇腹に、思いっきり蹴りを入れる。鈍い音と共に、口角はまた、ゆっくりと崩れて行く。
「痛てぇよぉ。くそっ、オタクのクセに何で・・・」
口角はうつ伏せにうずくまり、涙を流しながら、絞り出すような声で、僕に聞いて来た。
「僕は一年くらい前から、ジムでキックボクシングを習っている」
そう、僕が筋トレと同じ時期に始めた、自分に自信を付ける為のスポーツだった。口角はそれを聞くと、うずくまった状態で、声を上げて泣き出す。
しばらくすると、由利本さんが何人か、人を呼んで来てくれた。みんな、この状況に驚いているようで、僕に事の説明を求めてきた。
僕がみんなに動揺しながら、事の成り行きを説明していると、後から剛承さんが現れた。
「貴様は、我がアニメオタク一門から、破門となった口角ではないか!」
剛承さんは、うずくまっている口角を見ると、そう叫んだ。僕は口角が昔、アニメオタクだったことを剛承さんから聞き、驚愕する。
「口角よ。何故、こんな愚行に出たのだ?」
うずくまって頭を上げない口角に対して、剛承さんは冷淡に質問する。口角は、相変わらず泣きながら、何も言葉を発しない。
「水鳥に、昔の自分の姿を重ねたか?」
剛承さんがそう尋ねると、口角の体はビクッと反応し、再び口角は大声で泣き出す。
「・・・・剛承さん、また、アニメが・・・。アニメが観たいです・・・・」
口角は絞り出すような声で、言葉を発する。
「観るが良い。アニメは、貴様を拒んではおらぬぞ」
剛承さんは、口角に優しく言葉をかけると、再び口角は号泣する。
こうして、一連の事件は幕を閉じる。
口角も実は、かつての僕と同じで、アニメオタクである為にモテない事で悩み、苦しんでいたらしい。
そして、彼はアニメオタクであることを辞める決断をし、パリピとなったという訳だ。
だから、僕を見ると、昔の自分を思い出し、嫌悪感が増し、僕に対して、攻撃的な態度を取っていたようだ。
この出来事があってから、口角は僕の事を馬鹿にするような行動は、全く取らなくなった。僕の大学での生活は平穏となったのだが、僕にとって、もう一つの重大な課題が残った。
由利本さんへの、愛の告白である。
口角の事件のおかげで、僕はこの日、告白を出来ずにいたのである。僕はまた、剛承さんから先延ばしをするでないとお叱りを受け、由利本さんと会う予定を別の日に取った。
僕は愛の告白以外にも、もう一つの決断をする。自分がアニメオタクであることを、由利本さんに話そうと決めていた。どんな結果になろうとも、後悔はない。
前に約束していた映画を、二人で観終わり、レストランで一緒に夕食を取る。映画の話題で盛り上がり、僕は事前に決めていた由利本さんとの会話を切り出す。
「由利本さんってアニメとか観るの?」
僕は恐る恐る、彼女に聞いてみた。
「え、たまに観るよ。水鳥くんは?」
由利本さんは、少し慌てた感じで聞き返してきた。
僕の答えは決まっていた。
「僕は、アニメが大好きでよく観てるよ。凄く人生の教訓とかになっている。この事で由利本さんに暗いとか、気持ち悪いとか言われたくないなと思って、今まで黙ってたんだけど・・・-」
「・・・実を言うと、私もアニメ大好きなんだ。私もそれで水鳥くんに嫌われたくないから、隠してたんだよ」
お互い目を見合わせて、少し沈黙した後、声を上げて笑う。その後、そうだったんだと、お互い安心する。
僕達は好きなアニメの話や、オススメのアニメの話題で意気投合し、至福の時を過ごす。
僕はその後、由利本さんを送って行く帰り道で、由利本さんに告白する。
結果はというと・・・・・・
僕は、剛承さんに結果の報告をしに、彼の家を訪れる。
「剛承さん。この度、由利本さんとめでたく、お付き合いする事になりました。これも全て、剛承さんのおかげです。本当にありがとうございました」
「水鳥よ。これはゴールではない。通過地点にしか過ぎない。アニメを観ろ!そこには、幸せな人生を送る為の道しるべが示しておる!」
僕はまだまだ、この人から教わることが多そうだと感じた。
読んで頂きありがとうございました。次回作もよろしくお願いします。