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3

愛刀片手に訓練場へ飛び込めば人の気配があった。

無我夢中に取り組んでいるようで、荒々しく素振(すぶ)りをする音が聴こえる。

あちらもきっと悩みを抱えているのだろう、音でわかる。何故ならばここ最近の私がそうだからだ。


共に鍛錬すれば互いに良い気分転換になると思い及んだ私は、音のする方へ駆け寄った。


「おーい! 私も一緒、に……」

「マリン……?」


そうして声を掛けた相手は、なんとセーリオその人であった。

脳から抹消するためにやって来たというのに、当人と鉢合わせてしまっては本末転倒である。

いつぞや残業続きで困憊した私に向かって「長時間労働は体に毒だ」と言い放ちながら華麗に帰宅を決めていた君よ、何処(いずこ)へ……。


剣を振っていた彼もぴたりと静止し、同じく固まった私の姿を認めて呆然としている。

お互い認識した手前、ここで帰ってはばつが悪い。けれども、このままお見合いし続ける訳にもいくまい。

急に飛び跳ね始めた心臓は可能な限り無視しながら、普段通りを意識して話し掛ける。


「め、珍しいなあ、セーリオがこんな時間に鍛錬なんて!」


ワアー!? 声が裏返った! 発音も少しおかしかった気がする!

気が動転してるとはいえ、態度があからさま過ぎる。流石に訝られるだろうかと反応を窺うも、彼は顔を俯けていて判断がつかない。


居た堪れない心地になりながら返答を待つ私に対し、セーリオは溜息混じりに「……ああ」と頷くだけで黙してしまった。

会話が……終わった……。


まさか本当に失望されたのか。マリン生涯不敗伝説を期待されていた? 嘘だろう!?

何を言うべきかもわからないまま、私は咄嗟に口を開くが、しかし。


「あの……」

「その……」


見事な被りっぷりだった、これぞ以心伝心。けれど今はそういうの求めてない。

元よりこちらは言葉が見つからなかったのだ。先に話すよう促し、真意を測ることとした。

眉間に皺を寄せたセーリオの深刻な顔つきに、思わず固唾を飲む。


「お前は……俺に負けたら騎士を辞めると言ったことを覚えているか」


やばいぞ、初っ端から全く記憶に無い。

せめてどういった文脈で宣言したのかご教示願えないだろうか。

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