表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

私メリーさん。今肝心の現場にいるの。

「新興勢力がこうも早くオールドフォート進出を果たし、しかもそこを根城にするほどの実力を持っているとは、調べてみる価値はありそうだ。今回の事件は直接関連していなくても、全くの無関係だとは考えにくいからな。」


「まさか現場検証の後、そのままオールドフォートに駆け込むつもりじゃないだろうな。」パイカマン警視はヴィルヘルムに言い放った。「もしそうなら、予めご冥福をお祈りするぞ。」

「だいたい、オールドフォートのギャングとかを相手にする以前に、お前はいつまでそんな鍛冶屋が『期間限定スペシャルキャンペーン!今ならショートソート1本おまけ』で売っているようなボロいロングソードを使っているんだ?1ミリマナの魔法すらない武器でよく魔物相手の仕事をしていられるな。魔物調査課の支給品だってそれよりマシなはずだが。」


「自分が生まれてからこのロングソーを肌身離さずに持っていたことを、警視だってご存知のはず。もう自分の体の一部だ、他の武器で戦うことすら想像できないほどにな。」ヴィルヘルムはロングソードの柄をそっと撫でながら呟いた。


「確かにお前は強い。しかしな、この剣がお前の体の一部なら、魔物はその呼称通りに魔法が体の必要不可欠な成分だ。お前の剣はパーツとして魔物のそれに大きく劣れる。」そこでパイカマン警視は軽くため息を吐いて、言葉を続けた。「まあ、お前がまだ吾輩の部下だった時にもこの話をしたからな。上司のアドバイスを無視したくらいだ、今更言っても思い改めるお前でもない。せいぜい死なない程度で一回コテンパンにやられてみるといい、少しは反省するだろう。」


「ははは、そうだな、もし負けたら考えてみよう。」とヴィルヘルムは言い返した。


20代で警部長に昇進するという異例の出世の早さは、ヴィルヘルムの恐ろしいほどの実力によって裏付けられている。


16歳のとき誰も聞いたことのない辺鄙な田舎からホーポルクに上京し、一発で警察官の面接に合格して警察アカデミーに入学した時から、ヴィルヘルムは練習、試合、そして本番の戦闘において、相手がアカデミーの教官だろうが暴力団隊の用心棒だろうが凶悪な魔物だろうが、1回も負けたことがない。


しかも彼は「騎士基本剣術免許皆伝」という、剣を扱う者なら誰でも知っている剣術の免許皆伝だけしか持っていない。誰も取ろうとは思わないような資格だ。それに加えて魔力が込められていないロングソードを使っているのに、それでもなお誰にも、何にも負けたことがない。そんな強者だからこそ、当時上司だったパイカマン警視から相当きつく言われていたのに関わらず自分の頑固な主張を押し通すことができた。


いつもは謙虚で温和な性格のヴィルヘルムだが、こと戦闘の話になると自分が勝つことが前提という態度になるから、初めてその落差を目の当たりにした者はたいてい驚く。


メリーさんは全く驚かない例外の内の一人だ。


「じゃそろそろ魔物調査課担当の現場に行くわ。」


もう一つの事件現場は、主戦闘魔法軍第一研究所から歩いて10分もしないところにあった。高級士官寮と、そこの入居者たちを顧客層とする店が立ち並んでいるエリアだ。雑草が無秩序に生えている普通の運河の川敷地と違って、この場所は綺麗に舗装されて、運河の色が汚染で泥水みたいになっている以外、散歩するには快適な環境だ。


「あっ…」ここでメッサリオは小さく驚きの声をあげた。


「どうした?」


「いや、現場がメリーさんに薦めたレストランから30メートルも離れていないなんて、こんな偶然もあるんだな、って思ったっすよ。」


「ほう、では、目撃者の聞き込みは食事がてらに出来るわけだ。」


ホーポルクのレストランの多くは経営時間が朝から深夜まで続くので、近くに殺人事件が起きたとなるとスタッフに目撃者がいてもおかしくない。


流石に発見から数時間経っていることもあって、現場にはもうほとんど野次馬がいなかった。魔物調査課の警察官1名と、派出所の駐在警察官2名が現場を警備している。


「よっ、セルディ、進捗はどうだ?」ヴィルヘルムは部下に聞いた。


「まず現場には争った形跡は全くなし…と言ってもあれだけの雨だからな、形跡が残ってた方がおかしいですよ。」セルディごとセルドルフ巡査部長はメッサリオより若く、冒険者としての初仕事で重戦士の自分以外パーティーが全滅した後警察になったという経緯を持つ、控え目だが抜かり目のない若手警察官だ。「ギャリーとマットは聞き込みに回っています。」


「で、死者は?」


「元々首から上が運河に突っ込んでた状態だったが、そのままにすると鑑識に支障がきたすのではと思って、近くの平らな地面に寝かせています。死者の持ち物はその横に敷いたシーツにおきました。」


「よし、では自分も仕事を始めるとするか。」

毎日更新しますと言っておいて体調を崩して2週間以上休載してしまうとは、本当に申し訳ございません。

これからは…えっと、出来る限り頻繁に更新するように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ