私メリーさん。今研究所から出ていくの。
2週間ほど投稿できなくて本当にすみませんでした。これからは毎日投稿するようにします。宜しくお願いします。
「モイエ伯爵ともあろう者が、もうちょっとマシな言い訳が考えられないわけ?具体的な呪文は機密だけど、呪文書き換えが出来る一流の魔法師は国力を示す指標なの。ホーポルク軍、警備隊、各貴族の私兵、そして警察庁などを合わせたホーポルクの軍事組織及び準軍事組織に所属する呪文書き換えを習得した魔法師はたったの79名しかいないのよ。
「この主戦闘魔法軍第一研究所には、モイエ伯爵とお供のルーシュウス・フォルマイ・ゴエッテ少佐を含め、4名もおられるから、この研究所がホーポルクの超一流施設であることを物語っているわ。しかし、ゴエッテ少佐と他1名は水魔法が専門で、そしてもう1名は土魔法の使い手。火魔法の呪文書き換えが出来るのはモイエ伯爵だけ。」
多くの水路が交差するホーポルクでは、他の系統より水魔法を使う者が多い。
「ぐっ…」モイエ伯爵の顔は見る見るうちに青白くなって行く。初めて名前を言われたルーシュウス・フォルマイ・ゴエッテだが、やはり無表情のままだ。
「次は正当防衛かどうかだけど…この死者は背後から切られたわね。」メリーさんははっきりと言い切った。
「そんなはずがない!ほら、この死体を見よう、仰向けに倒れているじゃないか!これは猪突猛進に施設に突入しようとして、ライトサーベルで返り討ちに会い、仰向けに倒れたんだ!」モイエ伯爵は弁解した。
「ただ一人で猪突猛進に軍の施設に突入するバカなんているわけないっすよ。」メッサリオはたまらずツッコミを入れた。
「元々うつ伏せだった死体を仰向けにするのは簡単だけど、頭が切り離された後の切り口となるとさすがにどの系統の呪文書き換えでも修正なんて出来ないからね。
「死者は頭をなくした前の身長は、どう見ても185センチは下らない。そしてモイエ伯爵は160センチ未満。」
ここでメリーさんは駕籠者に指示を出して椅子駕籠を死体の方に近つくと、折り畳み式大鎌の柄で死体の首の切断口を指した。
「この首の切り口、後ろの方は上頭斜筋と後頭骨との連結部まで届いていて、前の方は喉頭隆起、つまり喉仏から切り開かれているね。
「刃物で人の首を刎ねる場合、相手より背が高いなら刃物を水平に横薙ぎに振ればいいの。ただし刃物を持った人物が被害者より背が低く、しかも身長差が20センチ以上もあるとどうかしら?人間の腕は肩から伸びているから、その腕が刃物を持って水平に振っても、せいぜい相手の胸板にしか届かないの。
「だからモイエ伯爵、貴方はライトサーベルを斜め上に振って、被害者の首を刎ねたわ。」
「そそそそ、そんなの全部状況証拠でしかないぞ!」モイエ伯爵は慌てて抗弁した。
「はい、その通りよ。なのでこれから死体を警察庁に運んで、私が検死して報告をまとめて軍務省に提出するの。それがどう取り扱われるかなんて関知しないわ。」
そう言い捨てると、研究所にはもう用がないと言わんばかりに、メリーさんはさっさと駕籠者に指示を出して椅子駕籠を反転させた。




