エピローグ
「――ってな感じでプロポーズされたの」
「そうなんだ。あの時にプロポーズしてたんだね」
「エグい。酔っ払ってるとはいえ、全部言いやがった」
結婚式の2次会。
2次会は親族だけの集まり。
俺とアヤノ。父さんと母さん、サユキ。そしてお義父さんの計6人。
親3人は相変わらず同窓会みたいな感じになり、もうベロベロに出来上がっている。
悪絡みされるのもうざいので、子は子だけで集まったのだが、アヤノが酔っ払ってサユキに今まで黙っていた高校生の頃のプロポーズを全て曝け出した。
今の俺は丸裸にされた気分で恥ずかしい。
「しかもねサユキちゃん。あの日ってクリスマス前なんだよ」
「えー。あーでも、思い返すとそれ位の時期だった気がする……。それならクリスマスまで待った方が良かったね」
「そうでしょ。もうちょっと待ってくれても良かったよね」
「確かあの時のクリスマスって10数年ぶりの雪だったよね」
「そうそう。ホワイトクリスマスの日にプロポーズされたかったなー」
女2人が俺を見ながら言ってくる。
「嘘つくな。俺らは生まれてからホワイトクリスマスなんてなった事ねーだろうが」
「バレた」
「バレたね」
2人は見合って笑い合った後にアヤノは俺を見てくる
「あ! それとねサユキちゃん」
「なになに?」
おいおい。まだ喋るのかよ。
「その時の指輪、指に入りきらなくてね」
「ちょ! アヤノ!」
「え? 今の話的にスマートに決まってたっぽいけど」
サユキが言うとアヤノは笑いながら首を横に振る。
「実は指の第2関節までしか入らなくって」
言いやがった。もう酒飲むしかないから「すみません。ウィスキーロックで」と店員さんに注文する。
「えー。なにそれ!」
「ちゃんと寸法とってよ! って思ったね」
店員さんが持って一瞬で持ってきてくれたウィスキーロックを一気にあおる。
くぅ。身体があっちぃ。ポカポカしてきた。
「最低だね」
「それをねリョータロー見て見ぬフリしたんだよ」
「うわー。兄さんやばー」
「うるせ! あの雰囲気で指輪にツッコミなんて入れれるかよ!」
返事した後にもう1度ウィスキーロックを注文しておく。
「それからどうしたの?」
「それから――えへへ」
「笑うところ?」
サユキが疑問に思っていると『サユキー。ちょっとこっちこーい』と親連中が呼んだ。それに素直に従ってサユキは少し離れたテーブルに向かい、俺とアヤノは2人っきりになる。
店員さんがウィスキーロックを俺にくれるので、次はチビチビと飲む。
「リョータロー」
「ん?」
「あの日ね。高校生の頃にプロポーズしてくれた日辺りね。私、その日の午前中まで後悔してた」
「後悔?」
俺は酒を置いてアヤノを見る。
「リョータローは浮気なんかしない。抱き合ってたのも何かの間違いだって。頭では分かってたんだよ? でも、心が幼かったし、あんな事初めてだったから――」
「あの時のビンタの痛さ思い出すだけで痛いよ」
俺は胸をおさえる。
「何で胸なの?」
「心が凄く痛かった覚えがある」
「私と同じだね」
「同じ?」
「うん」
そう言ってアヤノは自分の胸をおさえる。
「リョータローにビンタして、リョータローの事避けてね、ずっと苦しかった。素直に話聞けば良いのに素直になれなくてずっと苦しかった」
「アヤノ……」
「あの日さ。リョータロー休んだじゃん。あれもね、私に嫌気がさしたんじゃないかな? って、どうしよう、どうしようってパニックになってたんだよ。心を落ち着かせる為にいつもの場所に行ったら、休んでるはずのリョータローいるからビックリして逃げちゃって――」
「転けたな」
「もう! 忘れてよ」
言いながら頬を膨らます。
「あはは。ごめんごめん」
「でも――」
アヤノは目を細めて色っぽく言ってくる。
「あの日までの後悔は、リョータローのプロポーズで私を幸せの絶頂まで運んでくれたよ」
普段言わない事を言われる。
お酒は人の本性を表すと言うが、この場合は俺にとって良い意味で本性を表してくれている。
「でもね、まさかプロポーズされるとは思ってなかったな」
「あの時はアヤノを失いたくない思いで一杯だったからな」
「そっか」
アヤノは嬉しそうに言う。
「ね? 今は?」
「へ?」
「今はどうなの?」
「嫌」
「また言ってよ」
「嫌だよ。恥ずかしい」
「良いでしょ? ねーねー」
そう言いながら腕を掴んで振ってくる。
「あ! 浮気してるんだ!」
「してねーよ! 何でそうなんだよ」
「浮気は――シャキーン! グサっ!」
エアで俺の腹を切ってくる。
「切腹――シャシャキーン」
エアで俺の首を切ってくる。
「打首――シャシャシャキーン」
そして俺の足を優しく触る。
「吊し上げだからね!」
「最後だけ効果音と対応が合ってないぞ」
「ねーねーいいから言ってよー」
酔っ払いの美女が絡んでくる。
「――はぁ……」
俺は置いていた酒を飲み干してアヤノを見る。
「アヤノ。共に歩もう一生側にいて――」
「いるー」
酔っ払いが俺の腕にしがみついてくる。
「リョータロー。ずっとずーっと一緒だからね」
そんな俺達の様子を外野が囃し立ててくるが、俺も酔っ払っているので恥ずかしさはない。
「アヤノ。一生側にいてくれ」
「――うん。ずっと側にいるよ」
皆様ご愛読ありがとうございます!
これにて【クーデレお嬢様のお世話をすることになりました】の続編である【恋人になってもクーデレお嬢様のお世話をすることになりました】完結です。
完結まで書いてこれられたのは沢山の読者様のおかげであります。
ブックマーク、評価をして下さった皆様からは勇気を頂き、更に感想を頂けた皆様からは希望をもらい、励みとなり、ここまでやってこれました。
本当にありがとうございます!
ここまで書かせて頂いて、やりたい事出来たかな、と思います。
文化祭、修学旅行、そしてプロポーズと、やりたかった事を書けて、そして、それを皆様に読んで頂けて、これ以上ない幸せでした。
後はあれですね。アヤノが実は歌が上手いっていうのを知って欲しかったので、今回で伝えられて満足です。
人間誰しも意外な才能があるもの。アヤノも意外と歌が上手いというのをアピール出来て良かったです。
修学旅行ではもう少しアヤノとの時間を書きたかったのですが、男子4人のノリが楽しすぎて笑
それから、リョータローの将来の夢はパイロットになる事で、その夢の途中で挫折してアヤノとの山場を超える!
なんてのも構想にあったのですが、調べてみると、普通に大学に行って航空会社に入社するルートがあるって事を知り、こりゃいかんと思ってた所、なんとリョータロー達が勝手に山場作りやがって勝手に超えていきやがりました笑
本当によく動く奴等ですよ笑
さて【クーデレお嬢様のお世話をすることになりました】【恋人になってもクーデレお嬢様のお世話をすることになりました】は完結となりましたが、私ごとですが新作を執筆中です。
次回もラブコメを投稿しようと思っておりまして……。またラブコメかよって思われた方もいらっしゃいますかね?笑
いや、実はファンタジー物も書いてみたんですが、書くのはめちゃくちゃに楽しいんです。もう筆が進む進む。
あ、勿論ラブコメも楽しいですよ。私ラブコメ大好きですので。
ですが、めちゃくちゃ難しい。私、個人の意見ですがめちゃくちゃ難しくって、でも楽しい、まるで片思いの様な関係です。ファンタジー物は。あはは。
えっと、話が逸れたのですが、今書いているラブコメは構想を練っている段階で、まだ投稿には時間がかかりますが、投稿した際には、ここまで読んで下さった皆様は勿論、沢山の皆様に読んで頂けたらと思います。
いや、素直に言います。
読んで下さいお願いします!!
ここまでダラダラと私の雑談に付き合って頂きましてありがとうございます。
最後に、前と重複になりますが、ここまでお読みになってくださった皆様方、本当にありがとうございます!
是非次回作でもお会い出来る事を楽しみにしております!
またアヤノとリョータローに会いたくなったらいつでも戻って来て下さいね。
2020年6月17日 すずと




