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お見舞いへ

 修学旅行を終えての高校生活も後半戦がスタートした。

 そんな後半の学校生活はちょっとだけ変化があった。


「――それで、この動画がさ――」

「こんな動画より、僕はやっぱりこれだよ!」

「お前はやっぱり筋肉なのな……」


 昼休みに俺の周りに集まる、蓮、井山、石田。


 修学旅行前じゃ見ない光景だが、やはり修学旅行の暴露付大富豪が効いているみたいだな。

 あれにより皆の本性が現れて、それが良い方向に流れたみたいだ。

 昔の修学旅行を機に友人関係なんてどうでも良いと思ったけど、今回の修学旅行で、アヤノの言う通り歩み寄っても良いと思えた。純粋に楽しかったしな。

 しかし、あの修学旅行が全て良かったかと問われればそうでもない。

 今までクラス仲は良好だったのが、修学旅行後から色々と派閥が出来てしまった。


 ――まぁそれが普通のクラスか……。前が仲良しこよし過ぎたのかも知れないな。


 井山は夏希に修学旅行で有言実行でストレートに告ったらしいが、どうやら結果はダメみたいだったらしい。

 だからグイグイ行くのは遠慮しているみたいだが「これで諦めるなら筋肉も諦めるよ」何て、また訳の分からない事を言っているので、とにかく諦めてはいないみたいだ。


 蓮は折角計画練っていたのに、逸れてしまって、結局タイミングを逃し、想いを伝えれず終い。

 もう、この2人は引き延ばしが酷いね。


 石田は相変わらず加藤と仲が良いみたいだ。喧嘩とかするのかな?


 そんな事を思い、話の最中にチラリと後ろの空席に目をやる。

 アヤノは今日風邪をひいたみたいで学校を休んでいる。


「おいおい涼太郎。そんなに愛しの彼女が心配かよ」

「な……。いや……」


 蓮がはやし立てる様に言ってくる。


「全く……仲が良くて羨ましいね。南方くんは。ふんっ!」

「いや――」


 井山の筋肉アピールも見慣れたので、それに対してのツッコミはしない。


「ま! 俺達程じゃないけどな!」


 石田が負けず嫌いな発言をすると蓮が言い放つ。


「【モブ男】のくせに」

「あれあれ? 羨ましいのかな?【モブ男】にも彼女がいるってのに。何でそんなイケメンなのに彼女いないんですかー? あー【ティッシュ】で忙しいんですよねー」

「うるせー! 昨日もお世話になったわ!」


 口喧嘩っぽいけど楽しそうにしているから放っておくか――。




♦︎




 本日もお疲れさんでした、からの俺は速攻で家に帰る。


 閑静な住宅街にある5階建てのマンションの3階の1室。そこに我が家がある。

 閑静なんて聞こえは良いが、実際は小さな山をちょろっと整備した田舎の為に人が少なく、車の通りもない。そんな所は嫌でも閑静になるだろう。

 確かに閑静なのは良いと思う。自動車の通りも少なく騒音問題は皆無である。

 だが、ここを住宅街にするならもうちょっと緩やかな坂にしろや! なんて叫びたくなる程に急な坂。

 ノーマルの自転車で上がるなんて不可能と言える程の坂があり、小学生なんかは毎日『坂道チャレンジ』なるものを試みているが絶対に自転車から降りずに上りきるのは無理だ。

 でも、まぁ住めば都って言うのは本当らしいね。もう慣れた。


「――ただいまっと……」


 家に帰ると、玄関から入って右手の自分の部屋に鞄を置いて、洗面所で手洗いうがいをしてキッチンで自家製の安いお茶を飲もうとした時、我が家はカウンターキッチンの為、ここからリビングが見えるのだけど、リビングのダイニングテーブルで頭ボサボサの中年男性がカップラーメンを食べていた。


「あれ? 仕事は?」


 キッチン越しに話かけると寝起きなのか、反応が薄い父親の南方 隆次郎はゆっくりとこちらを見てくる。


「休み……。公休調整……」

「ふぅん……」


 確かに最近父さんは忙しそうだったからな。公休が足りてないのだろう。


「涼太郎……。今日はバイトか?」


 キッチンでお茶を飲んだ後に「いや」と否定しながらダイニングテーブルのいつもの席に座る。


「でも、もうすぐ出るよ」

「――彼女のとこか……」


 寝起きなのにからかってくる。


「まぁ……」

「その歳で父親にはなるなよ……」

「なんちゅうアドバイスだよ!」

「大切な事だぞ?」

「それはそうだけど……。俺はアヤノとはまだ……その……」

「そんな純粋な反応されたら……。俺の心が浄化されるわ……」


 大人の余裕みたいな感じで言われてちょっとムカつく。


「――あ! そうそう。今度三者面談あるんだよ」


 話を変える為に父さんに言うと、カップラーメンの汁を飲みながら「三者面談?」何て聞いてきたあとに「ああ……」と思い出した様な声を漏らす。


「進路の時期か……。決まったのか?」

「まだ……」


 俺が軽く首を振るとカップラーメンの麺を豪快にすすりながら言ってくる。


「まぁ焦るこたぁない。涼太郎は成績良いんだし、やりたい事がまだ見つからないなら進学しておいた方が良いな」

「やりたい事……か……」

「色々な人の話を聞けば良い。親や友達、学校の先生、バイト先の人。意外な所に将来のヒントが隠されてるもんだよ」


 父さんはカップラーメンの汁を飲みながら言ってくる。


「それに、涼太郎には支え合える強い味方がいるからな。綾乃と2人で自分自身の将来を気軽に相談出来るだろ」


 そしてニタッと笑って言ってくる。


「それと、2人の将来についてもな」

「早すぎるだろ……」


 俺は言いながら立ち上がる。


「もし、来れるなら父さんでも母さんでも良いから来てくれよな」

「結婚式?」

「三者面談だよ!」

「なっはっは。了解」

「――ったくよ……。ほんじゃ行ってくる」




♦︎




「――結婚か……」


 マンションのバイク置き場に駐車している愛車の【忍たん】に跨り、先程父さんに言われた事を思い返す。


 エンジンキーを回して【忍たん】のエンジンを起動させると『旦那ぁ。そりゃちょっと早過ぎるんじゃねぇかなぁ? そういうのは大人になって仕事に就いてからってのがセオリーじゃあないかい?』と言わんばかりに『ブロロロロロロ』とエンジン音を鳴らす。


「そうだよなぁ……。まだ付き合って浅いし……」

『それは違うぜ旦那ぁ……。あっしが言いたいのは、まだ親の扶養に入っているのに結婚は早すぎるって事ですぜぃ! 時間は関係あらしやせん。それを言ったら、あっしと旦那だって日は浅いですが、一心同体じゃありゃしやせんかい。あっしは自分をバイクと思っていやせんぜ? あっしは旦那の身体の一部だと思ってやす。それはあっしにとっては光栄な事ですぜ』

「忍たーん!」


 忍たんがそう言って? くれたのが嬉しくてガソリンタンクの辺りを頬擦りしていると、マンションの5階に住んでいるおばちゃんがゴミを見る目で見てくる。

 普段は優しくて、昨日なんかお菓子をくれた昔から良くしてくれているおばちゃんが――。


 おばちゃんはソソクサと原チャに跨ってチラリとこちらを見ると無言で去って行った――。

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[一言] 久々に喋ったな… 忍たん…
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