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最終日(下り新幹線)

 下りの新幹線の中は上りの時とは正反対で、まるでお葬式の様に静かであった。

 ほとんどの生徒は旅行疲れで寝ているのだろう。起きている人もスマホをいじるなり、音楽を聞くなり自分だけの時間を過ごしていた。


 俺の隣に座るアヤノも先程からずっとスマホをいじっている。


 本来なら俺の隣は蓮だったのだが、彼が気を使ってくれてアヤノと席を代わってくれたのだ。

 もうみんなにバレてしまったからな。アヤノと付き合っていると。別に隠していた訳じゃないけど。


「――にしても……。折角の修学旅行なのに最終日は災難だったな……」


 つい呟いてしまう。


 夢の国でのアヤノとの口付けをバッチリと学年主任に目撃されて、ホテルに戻ると2人してお説教となる。


 内心は説教する前にあの喧騒を止めるべきだろうがよ! 糞教師が!!

 

 なんて思うが、まぁ学年主任の言う事は間違いではない。

 あれほど羽目を外すなと修学旅行前に釘を刺されたのにも関わらず、ウチの学校の生徒以外もいる公衆の面前で堂々とキスするなんて。

 今度は石田と加藤みたいに言い訳は出来ない。バッチリと見られたからね。

 どうやら学校側からすれば不純異性交遊とみなすらしいな。

 そういう訳で最終日の自由行動に俺達は参加出来ずに2人して反省文を書かせる羽目になったとさ。

 停学にならなかっただけマシと捉えるべきかな。


 納得いかないのは、この状況を作り出した根源共はお咎めなしという事。

 アイツらシレッと3日目楽しみやがってふざけんな。


「そう?」


 俺の呟き対してアヤノがこちらを見てくる。


「私は別に苦じゃ無かったよ。リョータローとずっと一緒だったし。それに――」


 アヤノは自分の唇に指を持っていく。


「かけがえない思い出も作れたし」

「――卑怯だわ……」


 そう言いながら俺は深く椅子に座る。


 ま、アヤノがそういうなら……いっか……


「でも、寂しいね。これで修学旅行も終わりって思うと」

「高校最大のイベントも終わり、俺達の高校生活も終盤戦に突入だな」

「3年生なんてあっという間に終わるんだろうね」

「そしたら卒業か……」


 アヤノはスマホをしまい俺を見る。


「リョータローは進路何か決めた?」

「んにゃ……。なーんにも……。はぁ……。どうしようかな……」


 肘掛に肘付いて溜息を吐く。


「アヤノは? 何か見つけたか」

「私も……。まだ何も……」

「そっか……。もうボチボチのんびりしてられないよな」

「でもあんまり心配はしてないよ」


 そう言うとアヤノは微笑んだ。


「自分なりにだけど夏に掲げた目標は達成したつもり」

「【友達つくり】か。確かにな」

「それもリョータローがいてくれたから。次の目標の【進路】もきっと大丈夫。私にはリョータローがついてるもん」


 そう言われて素直に嬉しく思う。

 だってそれは俺も同じ気持ちだから。


「リョータロー。これからもよろしくね」

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