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9/11

どこでも*ア

 ワームホールという理論がある。

 知っている人も多いだろうが、空間に穴を開けることで、2つの地点を結ぶショートカットルートを作るというものだ。要するに、山の向こうに行きたいなら、峠を越えるよりトンネルを掘ってしまおう、その方が近いじゃん、という理屈である。


 これを実現する手順は、次の通りだ。

 まずは街へ行って、家を買う。中古の適当な家でいい。住むわけではないから、大きさも小さいもので十分だ。

 その家の中にある適当なドアと、魔王城の中にある適当なドア。この2つに「分離」を使う。2つのドアの間にある空間的な隔たり――つまり「距離」を「分離」してやると、2つのドアは距離がゼロになって、一方のドアに入ると、もう一方のドアから出ることになる。

 これで魔王城の周囲を発展させる手間などかけなくても、事実上、魔王城を街に持っていった形になる。


「うわー……無茶苦茶だー……。」


 電機女が苦笑い。

 魔王は逆に感心していた。


「なるほど、そう来たのね。」


 奴隷は驚いて言葉を失っている。


「こっちの家の掃除も頼む。」


「は、はい!」


 そういうわけで、魔王城の不便は解消された。


「そういえばさ、その鞄をたくさん作って売れば儲かるんじゃない?」


 電気女が俺の鞄を指して言う。

 確かにそれは正しい。


「だが断る。」


「なんで?」


「泥棒の手に渡ったら大変じゃないか。」


 同じ理由で、転移の扉も秘匿する。悪用されたら大変だ。予防するには、いくつかの方法がある。まず最も確実なのは、テレポートという概念を与えないこと。思いつかなければ作ろうとしない。次に具体的な理論としてワームホールを教えないこと。方法が分からなければ、思いついても作れない。さらに「現に存在する」という情報を与えないこと。実現可能だと知らなければ、非現実的だと考える者がほとんどだ。電話でさえ、そうだった。

 さて、こうなると、今度は街に買った家の警備が必要になる。空き巣被害にあっても、盗むようなものは何も無いが、転移の扉の存在がバレたら大変だ。買収や脅迫などへの対策として、人を雇うよりもゴーレム的なやつとかブービートラップとかのほうがいいだろう。

 魔王城で過ごしている間、街では「家に入っていったのに、やたら静かで留守みたいだ」という状況になるが、これは放置でいいだろう。電気女はSランク冒険者だし、侵入してまで様子を探ろうなんて命知らずは滅多に居ないはずだ。居ても警備システムで対策できるようにしておこう。

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