魔王城に住むために
さて、魔王城に住むことにしたのはいいが、問題はまだ残っている。
最優先は、生活に必要な物資がないことだ。食糧や日用品。ドレインだけで生きていられる魔王と違って、俺や電気女は人間だ。食べるものを食べないと死んでしまう。しかし魔物だらけで人間がいない土地だから、買おうったって売っている人がいない。
「そういえば、水はあるのか?」
「ええ。裏庭に井戸があるわ。」
「……一応聞くが、それって人間にも飲める水だよな?」
「大丈夫よ。」
「なら、よかった。」
とりあえず街へ買い出しに行かないといけない。
それは、かなりの遠出になる。旅支度が必要だ。
「ちなみに、どうやってここへ?」
と、電気女に聞いてみる。
「倒した魔物を食べて、マントにくるまって野宿しながら来た。
人間がいなくて、むしろ水が綺麗っていうのが皮肉だよね。」
「そうなのか。」
買い出しに行くのに問題はなさそうだ。
そうすると、次に買い出しのための資金だが。
「道中で魔物を倒して、それをギルドに売ればいいじゃん。」
なるほど、よくあるパターンだ。
どこの世界でも、人間の考える事は同じらしい。
とにかく、これで生活に必要な物資を手に入れる方法は、道筋が立った。
同時に、今後の生計を立てる方法も。
あとは、もう少し優先度の低い問題が2つある。
1つは、魔王城の維持管理に人員が必要なこと。魔王城は広くて立派だから、掃除するのも大変だ。メイドが必要である。そして、メイドを雇うなら、食い扶持も増えるわけで、料理人も必要になるだろう。メイドから一部を料理担当に割り振ってもいいが、どうせならうまいメシを食いたい。まあ、贅沢を言っていられる状況でもないから、人材は徐々にそろえていければいいだろう。
もう1つの問題は、個人的なことだ。探知系の魔法か能力か何かをコピーしたい。それには素材が必要だ。電気女や魔王に確認してみたが、そういう能力は持っていないらしい。こいつらは動体視力や反応速度が凄くて、相手の攻撃を見てからでも十分に対応できる。いわゆるステータスお化けだ。だから探知系の魔法や能力は必要ないらしい。
「それじゃあ、とにかく街へ行くか。」
そういうわけで、準備を始めた。
まず電気女のマントや水筒を「複製」して全員分を予備まで用意する。使わない分は、俺の鞄に入れておく。俺の鞄は、空間と「合成」してあるから、見た目よりも多くのアイテムが入る。
水筒に水を入れて、そこでふと思いついた。水を「複製」すれば、いちいち水をくまなくていいのでは? というわけで、早速「複製」してみた。容器がなければ地面にこぼれるだけ、という当たり前のことを確認して、水筒もろとも「複製」し直した。
無事に「水が入った水筒」を「複製」できたので、食材や料理でも「複製」で増やせるというめどが立った。問題は保存が利かないことだ。栽培できる農民や、調理できる料理人は、やはり必要になるという事が確定した。
いよいよ出発だ。