防犯システムを作ろう
防犯システムを作ろう。
理想的なのは「住人や来客」と「侵入者」を識別して、侵入者だけを「迎撃」することだ。しかも「自動的に」である。
錬金術でこれを全部ロボット化しようと思うと、これはかなり難しい。電撃を家屋と「合成」しておけば、絶えず家屋が放電攻撃をしている状態になるが、これでは住人や来客まで攻撃してしまう。しかも迎撃というよりは先制攻撃だ。
識別する部分はロボット化しなくてもいい方法がある。つまり「ご用の方はインターホンを押して下さい」的な表示をしておけばいいのだ。それを無視して入ってこようとする者は、すべて侵入者とみなして攻撃すればいい。うっかり見落として、なんて言えないように表示する必要がある。玄関のドアに大きく表示しておこう。
そうすると、インターホン的な機能が必要だ。転移の扉と同じ要領で、街の家のドアでボタンを押せば、魔王城でベルが鳴るようにしておこう。
次に迎撃する方法だ。
掃除を頼んだ奴隷が、この攻撃に巻き込まれてはいけない。放電やダークエナジーボールでは、攻撃範囲が広すぎるし家屋も壊れる。ハイパービームなら奴隷を巻き込まないだろうが、侵入者を貫通して壁や床を破壊してしまう。
全く別の、家屋を傷つけない、奴隷を巻き込まない、そんな方法が必要だ。
窒素ガスを使おう。酸素濃度6%以下の空気を1回でも吸い込むと、人間は即座に意識を失う。侵入者の顔に窒素ガスを吹きかけてやればいい。そのためには「侵入者」の「顔」を識別する方法が必要だ。顔認証とか難しく考える必要はない。呼吸によって人間は二酸化炭素を吐き出す。その二酸化炭素に窒素を「合成」してやればいい。そうすれば顔の周囲に高濃度窒素ガスができる。ちょっとでも立ち止まって呼吸すれば、吐いた息に窒素が「合成」されて、次に吸い込むときには酸素濃度6%以下。即・昏倒。
俺たち住人には、吐いた息から二酸化炭素を「分離」する能力を「合成」しておく。こうすると吐いた息から二酸化炭素が消えるために、窒素が「合成」されない。来客があっても外へ連れ出すか、俺に連絡を入れればいい。
ちなみに昏倒した侵入者は、意識がなくても呼吸を続ける。そして吐いた息に二酸化炭素が含まれ、窒素ガスが作られて、それを吸い込み……というループが発生して、最終的に窒息死する。
死体はあとで元素ごとに「分離」してやれば消せる。
ふむ……我ながら、なかなか優秀な迎撃システムじゃないか?
……。
…………。
……………………。
……あれ? 防犯システムを作ろうとしていたのに、迎撃システムを作ってしまった。
まあいいか。転移の扉が発見されなければ、どっちでもいい。