表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

「僕たちは、傷つくほどに強くなる」

挿絵(By みてみん)


 僕は、誰だ──?




(こおり)ちゃん、(こおり)ちゃんってば……!」


 ふと顔を見上げる。

 そこにはクラス委員長、藤原春花(ふじわらはるか)の姿があった。


「まーたひとりで小説読んでる。昼休みくらい少し外に出たら?」

「……うる█いな。僕が好█で読んでるんだ、邪魔██いでくれ」


 彼女は「ふーん」と前の席にそっと腰をかけた。

 僕が読んでいる本をまじまじと見つめてくる。


「私、月宮薫あまり好きじゃないなあ。推理小説はイヤじゃないけど、なんか暗い話ばっかで」

「お█えに月宮先生の素晴らしさは伝わ█ないよ」

「わ、冷たいんだー。こうして幼馴染が声をかけてあげてるのに、ひどいや」


 幼馴染──。

 どうやら僕は、藤原春花と幼馴染という関係らしい。


 僕には、過去の記憶がない。

 これまで生きてきた16年間の思い出がすっぽりと抜けてしまったかのように、ただ奇妙な空白がそこにある。


「……昔のこと、少しは思い出した?」


 春花は不安げに顔を覗き込んできた。

 僕は手元の文章に目を落とし続けた。


 わからない。

 今までどんな人生を歩んできて、どういう家族や友達がいて、自分がどんな人間かさえもわからない。

 僕は……いったい何者なんだ?




「もうひとりの“私”からメッセージ来た! 今日の放課後、会えるって!」


 近くの席から、女子生徒の嬉しそうな声が聞こえてきた。



 ──最近、若者の間である()()()()が蔓延している。


 『もうひとりの自分、探しています』


 SNSやマッチングアプリ。

 その他にも専用掲示板やウェブサイトが数え切れないほどある。


 通称、ドッペルゲンガー。

 もうひとりの自分に出会うと、「幸せ」が訪れる。

 そんな噂が広まっている。


 横目で、その女子生徒の笑顔をみた。

 スマホを片手に、わいわいと楽しそうにはしゃいでいた。



 ──。


 その女子生徒は、次の日から学校に来なかった。

 そして、マンションから飛び降り自殺したと、担任の先生が告げた。


 彼女の遺言はただ一言。


 『──ドッペルゲンガーは、バケモノでした』




挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ