表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたり使い  作者: 即位田 多聞
8/13

第八話

 歩美の弟Mと名乗る、このメールを読むと、どうも道生のパソコンに侵入し、情報を盗み見たとしか思えなかった。


 思い当たる事があった。三日前にグーグルで歩美の名を検索したのだ。

 一年前に妹がいるとわかり、何度も妹の名を検索したが、それらしいヒットは、いつも無かった。

 しかし三日前、しばらくぶりに検索すると、一つの画像がヒットした。歩美の高校時代の友人がブログに掲載した画像のようだ。高校入学時、正門の前で撮る、お決まりの写真だったが、真新しいセーラー服を着た、すまし顔の歩美がそこに立っていた。興信所の資料にも無かったその画像を、道生はダウンロードしてしまった。JPEGファイルだったが、たぶんウイルスをまぎれ込ましてあったのだろう。道生が写真を見ようとダブル・クリックした時、ウイルス・プログラムが起動し、パソコンが感染した。道生はそれに気づかなかった。道生が歩美の写真を見ている時、Mは陰で道生のパソコンを盗み見ていたのだ。


 道生は途方にくれた。歩美に関するデータがパソコンに保存してあった。

 そのすべてをMは見たようだ。


「興信所の調査報告のPDFファイル」

 Mは資料の出来を楽しそうに批評していた。

 父母の情報は、よく調べてあると、感心していた。Mも知らない事実があったようだ。姉さんの情報は、高校までの情報に偏っていて、東京に出てきてからの調べが雑だと、△の印を付けていた。

 M自身の調査は、ひど過ぎて、あきれたそうだ。当然、バツ印。

 姉とは二才違い、中学は不登校、その後、高校を退学させられ、家出をし、消息不明。おいおい、これだけか。オレは今、アメリカでブイブイ言わせてるんだヨ、と憤慨していた。


「歩美との想定問答集」

 あなたは、まじめで誠実な人だ。真剣に姉さんの事考えてるんだね。

 ここまで用意周到なら、りっぱな犯罪者になれるよ。


「ウィークリー・マンション賃貸契約書」

 駅前に、わざわざ部屋借りて姉さんを監視していたのか。

 ストーカーだね、ほとんど。


「ToDoリスト」

 ① 病気の回復を手助けする。音楽療法。  「承認」

 ② 経済的支援。             「黙認」

 ③ 時機を見て、父母の墓参り。      「却下」

 ④ 病気回復後、距離を置く。       「却下」


 承認や却下はMが付け足していた。そして、⑤⑥が追加されていた。

 ⑤ 病気回復後も姉さんの面倒を見続ける。 「結婚も可」

 ⑥ ジョンのママに会いに行く。      「推奨事項」

 行動計画通りに、進めないときは、情報流出の恐れ大。以上。


 道生は、考えがまとまらなかった。

 Mの取引条件は、今まで通りやればよい、と言う事だ。しかし、このまま付き合っていれば、秘密がばれるに決まっている。それが狙いなのか。

 とりあえず、歩美に弟の話を聞こう。歩美は今週、法事で実家に戻っているので、帰って来たら話を聞こう。慎重にやれば大丈夫だろう。

 それにしても、ジョンからのメールまで読みやがって、どういうつもりだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ