僕と幼馴染二人と、これからの事について
僕には、幼稚園の頃から、ずっと一緒に育ってきた幼馴染が二人いる。
二人の名前は、春野 理央(はるの りお)と、秋山 凉太(あきやま りょうた)。
僕たちは幼稚園の頃から何をするにも3人一緒だった。
喧嘩をすることもあったけど、すぐに仲直りして、また3人一緒。
小学校、中学校、高校と同じ学校に進学し、大学も一緒だね、と笑いあっていた。
僕たちはこれからもずっと、一緒だと信じて疑うことはなかった。
そんな関係は、僕たちが高校生になってもしばらくは特に変わらなかった。
強いて言うなら、凉太が少し部活が忙しく、平日はなかなか時間が合わないことくらい。
だから、平日の放課後は、僕と理央が二人とも帰宅部だということもあって
先に帰って、一緒に勉強なんかをしている事が多かった。
その後、凉太が帰ってきてまた3人でなんでもない話をして、解散する。
それがいつもの僕たちのお決まりだったし、僕が一番好きな時間でもあった。
……僕が一番、大事にしたい時間だった。
この中で理央とどちらかが男女の関係になったら、この関係は崩れてしまう。
男女の関係にならなかったとしても、ギクシャクして、やはりこの関係は崩れてしまう。
僕はそれが、なによりも怖かった。
怖かったから、理央の気持ちも、凉太の気持ちも、僕は見ないフリをしてきた。
こんな関係は、ふとしたキッカケであっさりと壊れる物だと、気付いていた。
気付いていて、気づかないフリをずっとしてきた。
* * *
「なぁ仁……俺さ、理央が好きなんだ」
「それはどういう意味の好き? like? love?」
「loveの方だよ……おいやめろよ、恥ずかしくなるだろ!」
「自分から言いだしておいて……」
はぁ、とため息をつく。
知ってるよ、そんな事。
僕たちが何年、一緒にいたと思ってるんだい?
凉太が小学生の頃から、ずっと理央を好きだなんて気付いてたさ。
「俺たちももう高校3年生、来年には大学受験だ」
「同じ大学行けるといいね、凉太も」
「それを言うなよ……お前ら二人、成績よすぎるんだよ!」
「頑張らないと凉太だけ別の大学になって、理央を取られるよ?」
「だからさ、俺決めたんだ」
「何を?」
「俺、今年中に理央に告白する!」
「今年中って…まだ4月だ、あと8ヶ月もあるんだけど? このヘタレ」
「うるせー!」
ははは、と二人で笑いあう。
その裏では、ついにこの時が来てしまったか、と思っていた。
ねえ、知ってるかい凉太?
僕も、ずっと理央の事が好きだったんだよ。
* * *
「はー……もうすぐ夏休みねー、仁ー」
凉太の告白宣言から早くも3ヶ月経った。
未だに、凉太は告白をしていない。
なので、この3ヶ月、特に何かが変わった、ということはなかった。
……それに安堵している僕は、卑怯なんだろうか?
「そうだね理央、今年の夏は何か予定があるのかい?」
「うーん、特になんにもないかな。 いつも通り、仁と凉太と遊びに行くくらい?」
「ほんと、いつも通りだねぇ……夏川さんとかとは遊びにいかない?」
「行くと思うけど、どうだろ? 今のところ約束も何もないしなー」
そういいながら、僕に背中をぴったりと預け、もたれかかっているのが
僕たちのもう一人の幼馴染、春野 理央……僕たちの想い人だ。
理央は高校生になって、もともと可愛かったのが、さらに見違えるように綺麗になった。
アニメのヒロインみたいにくりくりとした大きな瞳、それを縁取る長い睫毛。
顔なんてアイドルみたいに小さいし、よく手入れされたつややかな黒髪も輝いている。
こんな女の子が、いつまでも僕の幼馴染をしているなんて、正直信じられないくらいだ。
「ね、仁は彼女とか作る気ないの?」
「また唐突だね」
「だって、私たちもう高校3年生だよ? そういう話、あってもおかしくない?」
「凉太はよくもてるみたいだけどね……理央だってそうでしょ?」
「みんなあいつの外面に騙されてるのよね、わかってないわー」
「うわ、辛辣」
「それに私はいいのよ、興味もない男子と付き合う気なんてないし」
そういいながら、背中合わせだった理央が、僕の背中にぎゅっと抱きついてくる。
「ね、仁は、好きな女の子いないの?」
「逆に聞くけど、理央は好きな男とかいないのかい?」
「どう思う?」
「どうだろうねぇ、理央は結構移り気多そうだからなー」
「そんなことないわよ! ……多分!」
「多分って」
「それに、私は好きな男の子いるよ。小さい頃から、ずっと好きなんだ」
「そうなんだ」
「ね、仁は? そういう女の子、いないの?」
いるよ。
僕はね、ずっと昔から、理央が好きなんだ。
……でも、これは絶対に言えない、僕だけの秘密。
「うーん、やっぱりよくわからないなぁ。僕にはまだ早いみたいだ」
「……そっかー……」
また、理央が元の位置に戻る。
理央の気持ちだって、僕はとっくに気付いてる。昔から知ってる。
だからこそ、今の理央を受け入れるわけにはいかないんだ。
それをすると、僕たち3人の関係は、終わってしまう。
……僕は、それが怖いんだ。
「それとごめん、今年の夏は、いつもみたいに遊べないかも」
「えー! なんでよー!!」
「今年はバイトをしようと思ってね、欲しいものもあるし」
「バイトかー……なんのバイトするの?」
「まだ考え中、夏休み限定のつもりだしね。 だから遊ぶなら、凉太を誘って」
「……うーん、わかったー、お休みの日とか、決まったら教えてね」
「了解」
これでいい。
理央の今の想いは、ただの錯覚だ。
凉太との時間が少なくなったから、なんとなく僕に気持ちが向いているだけ。
夏の間、僕と会わなければきっと、全てが元に戻っている。
だって、理央はずっと、凉太が好きだったんだから。
僕も、昔から理央が好きだったから。
理央のことをずっと見ていたから、知ってるんだ。
理央の目が、ずっと凉太を追いかけていたこと。
だから、今の君の想いは、勘違い……まやかしなんだよ。
* * *
夏休みは宣言通り、ほとんど理央と凉太と会う事はなかった。
時々理央から、遊びに行こうという誘いがあったが、全てバイトを理由に断った。
夜の集まりも、疲れているから、という理由で極力避けるようにした。
……時々、楽しそうな二人からの写真つきのメッセージを見て胸が痛んだが、多分気のせいだろう。
そろそろ、凉太は理央に告白しただろうか?
二人が僕に構わず恋人同士になってくれれば。
少なくとも、前のように3人で頻繁に遊びに行く、様なことはないかもしれないけど
それでも、僕たちは友達のままでいられる。
その結果、理央への恋を失うことになったとしても……。
―――本当にそれでいいのか?
そう、僕の心の中から声が聞こえる。
いいに決まってるだろ、何言ってるんだよ。
―――本当に、理央を諦められるのか?
あの二人が一緒に歩いているのを、何も思わずに見ていられるのか?
……うるさい。
―――お前だって、理央の事が好きなんだろ?
やめてくれ!!
わかってるよ、そんなことは。
僕は理央が好きだ、頭がおかしくなりそうなくらい好きだ。
凉太と二人で、今頃仲良くしてるんだろうな……と思うだけで頭はガンガンするし
目の前はクラクラするし、吐きそうになる、最低な人間なんだよ僕は!
……でも、同じように凉太も傷つけたくないんだよ……!
どうしろっていうんだよ……!!
* * *
夏休みが終わってからも、変わらず理央と凉太との距離を取り続けた。
もう僕は、自分でも何をどうしたいのかがわからなくなっていた。
理央が好きだ、でも凉太は僕の大事な親友だ。
3人の関係が大事だ、壊したくない、でも今の関係を自分が壊している。
何をやっているんだ僕は、支離滅裂じゃないか……!
そこまでわかっているのに、あの二人と目を合わせるのが怖かった。
あの二人が、どんな表情で話をしているのか、怖くて見れなかった。
夏休みの間に、どれだけ進展があったんだろう?
凉太は、理央に告白できたんだろうか?
分からない、怖くて、何も聞けていない。
僕はこんなに臆病だったのかと、思わず苦い笑いが出てしまう。
そんなときだった。
理央の友達の夏川さんが、僕に話しかけるようになったのは。
「冬月くん、最近どうしたの? あんまり理央ちゃんと話してないみたいだけど」
「え、そうかな? いつも通りだと思うんだけど……」
「理央ちゃん、結構気にしてるんだよ? 最近元気ないし」
「そっかー……どうだろ、最近勉強も忙しいし、確かに話す機会減ってるかも」
「理央ちゃん寂しがってるんだから、相手してあげてよね!」
「はは、了解」
それからたびたび、夏川さんと話すようになった。
進路のこと、勉強のこと、それ以外も色々と。
夏川さんと話しているときだけは、変な事を考えずにすんだので、凄く助かった。
彼女には、感謝しても仕切れないな……。
そんな風に、少しずつ現状と自分の気持ちの整理をつける努力をしていた、
そろそろ秋に入ろうかという頃だった。
「仁」
「……どうしたの理央、こんなところで」
放課後、校門前で理央に呼び止められたのは。
最近では帰宅時間を遅らせ、下校時間を過ぎてから帰るようにしていたので
理央がこんなところで待ち構えているはずがないのだ。
……完全に、油断してしまった。
「こうでもしないと、最近の仁とは話もできないじゃない」
「そうだったかな? この前も話したと思ったけど」
「そうね、お中元のおすそ分けどうぞ、程度の会話だったけど」
「そうだっけ?」
「誤魔化さないで」
「…………」
「ねぇ、なんで私たちのこと、最近避けてるの?」
「避けてなんて……」
「避けてるよ、夏休みからずっと……最近じゃ、みんなで話もしてない!」
それを問われると、正直辛い。
でも、だからといってもう、二人の顔を見る勇気が、僕にはない。
「ねぇ仁……私、凉太に告白されたんだ、好きだって」
「! ……そう、なんだ」
そうか……ついに、この時が来ちゃったのか。
理央はなんて返事をしたんだろう?
理央は凉太が好きだったから、もう付き合いだしたんだろうか?
ああ、ダメだ、視界がぐるぐる回る……。
「よかったね、理央」
「…………っ」
「理央は昔から凉太が好きだったから、僕も嬉しいよ」
「ほんとに……そう、思ってるの?」
「二人の幼馴染としてはちょっと寂しいけどね」
ねぇ、理央、僕は今、どんな表情をしてる?
「じゃあ凉太には、理央と同じ大学に入れるよう、勉強頑張らせないとなぁ」
僕は今、いつもの笑顔を、君に向けられているのかな?
「一緒の大学、行けるといいね理央」
「……っもう、いい……っ」
僕はもう、僕自身が何もわからないんだ。
今、どんな顔をしているのか、どこにいるのか。
地面が揺れて、世界が揺れて、足元がおぼつかないんだ……。
その後、理央からも、凉太からも特に報告はなかった。
理央をあれだけ怒らせたんだ、こうなるのも当然だった。
なんだ、結局僕たちの関係は、こうして壊れてしまうんじゃないか。
何が僕が我慢すれば、だ。
僕が原因で、僕たちの関係は壊れてしまった。
一番大事な人を傷つけて、一番大切だと思った関係も壊してしまって。
……もう僕は、彼らの側にはいられない……。
* * *
「え? 今から志望校を変える?」
「はい、今の成績なら、もう少しレベルを上げられるかな、と」
「まぁ、もともとの志望校には余裕があったからな……」
「すでに両親にも了承を得ています、遠方になるので、親元を離れることになりますが」
「なるほど……わかった、そこまで話が進んでいるなら、やりなさい」
「ありがとうございます、失礼します」
これでいい。
元々は三人で行こう、と考えて決めた大学だった。
その前提が崩れた今、僕が通うわけにはいかない。
同じ大学で顔を合わせてしまったら、二人も気まずいだろう。
結局、全部僕がめちゃくちゃにしてしまった。
でも、二人の邪魔だけは絶対にしないから。
こうして、僕の勉強漬けの日々が始まった。
朝も夜も、予備校にも通い勉強の毎日。
どれだけ勉強しても、僕の中から不安が消えることはなかった。
今までなら三人一緒だったクリスマスも、お正月も、勉強に費やした。
……今頃、理央と凉太は、二人でクリスマスを祝っているだろうか?
そう考えるだけで胸が痛んだが、その全てを飲み込んだ。
これは全て、自業自得。
僕があの二人に出来る最後の事は、このまま黙って消えることだけだから。
そして、季節はめぐり、春。
僕たちは、僕は無事、志望校に合格し、高校を卒業した。
すでに転居のための準備も終わり、後は僕の体一つで向こうへ行くだけ。
理央や凉太には、どこに進学するかは教えていない。
連絡先も教えるつもりもなかった。
何年かたてばきっと、僕も心の整理をつける事ができるだろう。
そうしたら、二人に誠心誠意、謝ろう。
そうすれば、きっとまた、幼馴染の僕らに戻れると信じて……。
明日には大学近くのアパートへ移動する、そんなときだった。
久しぶりに、凉太が二人で話したいと突然、僕の家まで押しかけてきたのは。
正直僕はあまり話したくなかった。
しかしここまで来られて、追い返すことも出来ず。
去年、凉太と二人で話した、近くの川原まで連れ出されてしまった。
「なんか久しぶりだなー、お前とこうやって話すのも」
「そうだね」
「覚えてるか、1年前のこと?」
「覚えてるよ……凉太、悪いんだけど僕も忙しいからさ……」
一刻も早く、凉太との会話を終わらせたい。
今、理央との事なんて嬉しそうに話されたら、押さえつけていた
心の奥の箱が、また開いてしまう……。
「な、仁。お前、これでいいのか?」
「……っ、何を言ってるんだよ?」
「わかってんだろ? 理央のことだよ」
「はは、何言ってるんだよ。いいも何もないだろ?」
「なぁ、俺はお前のこと、親友だと思ってる。俺にまで嘘付くなよ」
「嘘も何も……」
「お前、理央のこと、好きなんだろ?」
理央は、もう凉太の恋人になっているんだろ?
なのに今更、僕に何をさせようっていうのさ。
初恋との綺麗な別れでもさせてやろうってことか?
ふざけないでくれ……!
「好きだったとしても、もうどうしようもないだろ?」
「なんでだよ」
「僕は明日、この街を出て東京の大学へ行くんだ」
「やっぱりお前、違う大学行くのかよ」
「聞いてたんだ?」
「いや、なんとなく。俺も理央も避けてるから、そうなるんじゃないかと思ってただけだ」
「じゃあわかるよね? 明日も早いから、僕はもう帰るよ」
「……っ仁! お前、絶対後悔するからな!」
「後悔ならこの一年、嫌ってほどしてきたさ」
これ以上ないほどにね。
* * *
そうして僕は、全てを地元に置いてきた。
置いてきた、のに。
「何してるんだよ……理央」
「何してるって、入学式に決まってるでしょ?」
「なんで……」
なんで、理央がここにいるんだよ!
凉太と一緒に、同じ大学に行ったんじゃなかったのか!?
理央が混乱する僕に、「出て」、とスマホを突きつけてくる。
「もしもし……?」
『だから後悔するっていっただろ、仁?』
「凉太!? どういうことだよこれは!」
『どういうことも見ての通りだよ、そいつお前追いかけていったんだぜ?』
「どうして……」
『それと俺、とっくに理央にフラれてるから』
「な……」
なんだよそれ……
『あとの事はお前に頼むわ、じゃあな!』
「おいっ、凉太待て……っ切れた……」
理央が追いかけてきた?
凉太が理央にフラれた?
「そういうことだから、仁」
「そういうことって……言われても……」
「私はあの時、凉太とは付き合えないって断った、そして今、仁と同じ大学に入った、これが全てよ」
「そんな簡単に……どうして……」
どうして?
だって凉太は理央が好きで、理央は凉太が好きで……。
僕はもう、二人を見ていられないから……。
「なんで私たちから逃げたの、仁」
「僕は逃げてなんて」
「ここ、入るの本当に大変だったんだから、それくらい教えてくれてもよくない?」
「はは、何それ……僕関係ないじゃん……」
「関係ある、同じ大学行こうって約束してたのに、黙って志望校変えて」
それを言われると、僕も弱い。
僕は、ぽつぽつと、この一年にあった事を少しずつ話し出した。
「…………凉太が、理央を好きだって言ったんだ」
「うん」
「僕は、君たち二人との仲が壊れるのが怖かった、だから何もしなかった」
それをじっと、隣で理央が聞いてくれている。
それだけで、涙が出そうになる。
「最初は、それでいいと思ってた、でも、どんどん二人を見てるが辛くなった」
「どうして?」
「どうしてって……そんなの……」
そんなの……決まってるじゃないか。
「僕が、理央を好きだったから……だから、見ているのも辛くなった」
「そっか」
「そうだよ、上手くやれると思ったのに、想像しただけで吐きそうになって……だから」
「だから、私たちから逃げようとしたの?」
「それもあるし……僕が、僕たちの関係を壊してしまう原因になるのが、怖かったんだ」
実際、僕たち3人の関係はこうして壊れてしまった。
凉太一人を置いて行く、という形で。
「仁は、凉太に悪い事をしたって思ってるの?」
「思ってるよ……僕は最低な奴だ」
「私はね、そんなこと全然思ってないの!」
そういいながら、理央は僕を背中から、そっと抱きしめてくる。
ああ、久しぶりだなぁ……こうやって理央の体温を感じるのは。
ささくれ立っていた心が、凪いで行くのがわかった。
「私はね、仁が好き、ずっと好きだった! ずっと一緒にいたいのは仁なの!」
「…………でも」
「この数ヶ月、死ぬほど勉強したのも、お父さんを説得したのも、全部仁と一緒にいたいから」
「…………」
「確かに、凉太には悪いなとは思う。でも、それ以上に私は、仁が好き」
「理央は凉太がずっと好きだったんじゃ……」
そうだ、僕は知っている。
理央がずっと、凉太の背中を目で追っていたことを。
なのに、僕が好き? そんなことはありえない……!
「はぁ……、それいつの話よ」
「えっ」
「私は、中学生くらいからはずっと、仁が好きだったんだよ? なのに凉太が好きだと思われてたなんて……」
さすがに傷つくわー、と僕の首元に顔をうずめた理央が呻く。
「ていうか、仁は私と凉太、どっちが好きなのよ!」
「えっ、そんなの、二人とも大事だから、こんなに悩んで……」
「そうじゃなくて、私の事、嫌いなの?」
「……好きだよ、僕は、理央が女の子として、好きだ」
「凉太よりも?」
「凉太よりも、誰よりも、理央が好きだ」
そういうと、理央がようやく、笑顔を見せてくれた。
久しぶりにみた、僕の大好きな理央の笑顔。
「へへっ、じゃあ私たち、両想いだねっ!」
「ダメだよ理央、そんなんじゃ……凉太が」
「凉太より私のほうが好きなんでしょ! あとで一緒に謝ってあげるから!」
許されるんだろうか?
僕だけが、理央と一緒になって。
こんな遠く離れた場所で、幸せになって。
「あいつだって大学で、いい子捕まえるわよ。 響だっているし」
「そうなのかな」
「そうよ、ちょっとは自分の幼馴染を信用してあげたら?」
まぁ、あんな奴だからなかなか信用できないけどね? と、理央が笑う。
釣られて、僕も久しぶりに笑った。
笑いながら、涙が出た。
いいのかな、僕も自分の心に正直になっても。
凉太、今度会うときは誠心誠意、謝らせてもらうよ。
なんだったら、殴られるくらいの覚悟をして、そっちに帰ろうと思う。
だから。
「理央、ずっと前から好きだったんだ、僕の恋人になってください」
「……っはいっ! ……ふふ、やっと言ってくれた、ずっと待ってたんだよ?」
今は。
腕の中の理央の体温を、幸せに感じても、許してくれるかな、凉太……。
冬月 仁(ふゆつき じん)
見た目地味な勉学は優秀な主人公。
幼稚園の頃から理央、凉太とは幼馴染で、ずっと理央が好きだったが
幼馴染3人の今の関係が崩れる事が怖くて、言い出せなかった。
一言でいうと、ヘタレ。
二人から逃げるように都内の国立大学へ進学、地元を離れた。
春野 理央(はるの りお)
仁と凉太の幼馴染。
小学校の頃は凉太が好きだった。
中学に上がってからは仁の穏やかな人柄とさりげない優しさに惹かれ、
それからはずっと仁だけを見ていたが仁は気付かなかった。
高校卒業後は仁と同じ大学に通っている。
秋山 凉太(あきやま りょうた)
仁と理央の幼馴染で、理央が好きだった。
仁の気持ちには気付いておらず、理央に告白しようと考えている。
成績はいまひとつだが運動神経はよく、結構モテる。
秋口に理央に告白するが、玉砕。
卒業後はもともと進学予定だった地元の大学へ入った。
夏川 響(なつかわひびき)
理央の友達。
出番薄し。
仁が好きという設定だけがあったので、いつか復活させたい。
という、幼馴染三人の三角関係モノ書きたいなーとネタを作っておりましたが
あまりにも主人公がヘタレすぎて終始暗い話になりそうだったので連載を諦めて
短編として放出して、供養するのであった……。