2話、異世界に転生。
「すまないのぅ、儂の手違いでお主は死んでしまったようじゃ、本当すまない」
「いやぁ、今日日神様もいろんなバリエーション出てきてますけど、これまた王道な神様ですね」
「すまないのぅ、個性のない神で本当すまない」
シヌヲは黄金色に輝く空が広がる空間、まるで天界とも言えるような場所で1人の老人の相手をしていた。ネット小説を嗜むシヌヲはその状況から、目の前の老人が神であると見抜く。
「すまないのぅ、儂の手違いではあるのじゃが、お主をそのまま生き返らせることは出来ないのじゃ、本当すまない」
「あ、それはなんとなく察してました」
「すまないのぅ、その代わりと言えばなんじゃが、儂の管理する世界に転生させることは出来るのからそれで許してもらえないかのぅ、本当すまない」
「わかりましたから、そんなにかしこまらないでください」
「すまないのぅ、本当すまない」
「わかりましたから! 王道を制速ぶっちぎる方向に個性見せつけないでください!」
「わかったじゃ」
「はぁ、それでどんな世界なんですか? もしかして、魔法や魔物がある世界とか?」
「そこまで見抜くとはさすがのものじゃのぅ、まさにその通りじゃ。お主の前の世界に比べて厳しい世界じゃからのぅ、お詫びとしてはなんなんじゃが、儂の出来る範囲で強くして転生させてやるじゃ。本当すまない」
「え! そこまでお決まりのことまでしてもらっちゃっていいんですか!?」
「元々は儂の手違いじゃからのぅ。もちろん人の多い街の近くに転生するし、意思疎通も問題ないようしてやるからの、それでただ生きていくだけなら悠々自適に過ごせるはずじゃ。本当にすまない」
「ありがとうございます! 十分ですよ!」
ある種お決まりの無双系チート能力までもらえることになって喜ぶシヌヲ。手を思いっきりグッと握りガッツポーズを決める。
が、一つ思い出して神に問いてみる。
「ちなみに、最後に家族に連絡とかって取れます?」
「すまないのぅ、本当すまない」
「そう……」
シヌヲにも一応親兄弟友人恩人がいるのだ。予想はしていたシヌヲだったが、やはり少し寂しくなってシュンとした。
「それでは、準備が出来たら転生させるのぅ」
「わかりました。気持ちの整理は後でするとして、とりあえずどんな世界か早く体験してみたいので、早速お願いします」
「わかったじゃ。そい!」
一瞬でシヌヲの視界が変わる。
金色の空は青く変わり、それを見下ろすように眺めるとすぐに白い雲を突き抜けた。真上にはいかにもファンタジー世界と言わんばかりの城壁に守られた街が広い草原の中に堂々と構えている。
そこへと自動的に速度を上げながら、真っ直ぐに向かっていくシヌヲ。
「街の近くってこういうことかよ!?」
それだけ人が多いということなのだろう。街の中の道はきっちり石畳で整備されており、それが少し憎たらしくも感じるシヌヲ。
シヌヲは早速訪れるだろう脅威にどうするか考えなくてはいけないと思いつつも。
「すまないのぅ、本当すまない」
その脳内には手違いの多い神の顔と言葉がよぎるのだった。