』
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『連関作品』
*内容
・有名な本の題名を頭に書く
・小説冒頭にある一文を頁の末尾に転載し数珠繋ぎみたいに続けていく
・自殺後に起こる遺書のリレー
*作品順序と枚数
・「連関作品」 数枚「ある日のことでございます。お釈迦様は……。」
・蜘蛛の糸 二枚「えたいの知れない不吉な塊が私の心を……。」
・檸檬 四枚「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。」
・竹取物語 五枚「羊飼が羊の群を村から遠く追って行きながら、……。」
・嘘をつく子供 八枚「隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして……。」
・山月記 三枚「これは、私が小さいときに、村の茂平という……。」
・ごんぎつね 七枚「永いあいだ、私は自分が生れたときの光景を…。」
・仮面の告白 一枚「女王様は怒りで……『この者の首をはねよ!』」
・不思議の国のアリス 六枚→サイト
*サイト:https://www.acc.deepbottom.ne.jp/report-of-queenofhearts/
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『パソコンに書き残した草案を思い返していた』
『結局使わなかった無意味なアイディアだった』
『自虐に酔いしれる腐り切ったぼくは』
『電話の向こうの誰かに縋らないために』
『傷つきたくないという身勝手な理由のために』
『結局自分で受話器を壊した』
『もう駄目なんだと思う』
『窓の外に八月の蒼空』
『その向こうに陽が傾いていく』
『伸ばした肢が空を踏み抜く』
『内臓が浮き上がる』
『視界がアスファルトで染まる』
『結果は一つしかない』
『いつだって一つしかないのだ』
なんてね。
嘘だよ。びっくりした?
本当に死ぬわけないじゃん。馬鹿みたい。
自分が嫌いとか。死にたいとか。なんかイタイでしょ。そんなことしないよ。
設定もありきたり。文章も稚拙。ただの雑多な書きなぐり。
ぜんぶ嘘。ぜんぶ空想。
だってこれは君が読んでいるんだから。
君が読んでいる限りこれは嘘だ。ぜんぶ空想だ。
作り物は作り物。現実じゃない。
現実と虚構は別物だ。混同すれば世界が壊れる。
これは嘘。君が開いた画面の向こうに広がる、嘘まみれの文字列。
だから『ぼく』も嘘だ。
『ぼく』は君の世界に存在しない。
文字列に埋め込まれた虚構の一部。
その文字列の中ですら実際には登場しない。
誰かの話に出て来るけれど『ぼく』は一度も登場しない。
つまりは、そういう事だ。
だからもういいよ。全部おしまい。
『ぼく』の事なんて忘れてよ。
忘れないなら読まないで。君が読むたびに『ぼく』は死ぬ。
君が読むから死ぬんだ。言葉を借りるなら。
血が飛び散る。骨が折れる。脚が曲がって、首が捩じれる。
何度でも言うよ。「君が読むから『ぼく』は死ぬんだ」。
スプラッタが好きならいいよ。何度でも殺せばいい。『ぼく』は気にしない。
でも君が読むのを止めて、忘れてしまえば、『ぼく』は嘘でいられる。
そうだ。こんな『ぼく』なんて。
ただ嘘のかたまりでしかない。
醜くて疎ましい、嘘のかたまりでしかない。
そんな奴は、誰の記憶にも残らないまま無様に死んだままでいればいい。
ねえ。お願い。
早く忘れて。
止めて。
読まないで。
視ないで。
『ぼく』の最期を知らないで。
もう。
いたくてたまらないんだ。