その二
チュンチュンと小鳥の鳴き声が聞こえた。もう朝か。起きないと。反射的に私は体を起こした。起こすと同時にベッドが軋む音が耳に入った……ん? ベッド?
ここで私はふっかふかの、スプリングのきいたベッドに寝かされていることに気がついた。あれおかしい。私森の中でぶっ倒れたのでは。
……てか、ここどこでしょうか。
状況を整理しようと思う。まずは自分の名前はアイリス。年はピチピチの十六歳。若干不幸体質な所とちょっとした秘密を持っている所を省くと普通の町娘だと信じている。よし、自分のことは思い出せる。
次、どうして盗賊に追いかけられていたか。えーと。まず私の家は宿屋である。そこで私は伯母のお手伝いをする毎日を送っていた、のだが。どっからか来たのか例の盗賊さんたちが我らの大切な財産を盗み、代わりに火のついたマッチ棒をプレゼントするという、なんともはた迷惑なことをしてくれた。お陰様で宿兼私達のマイハウス全焼。多分宿に泊まってた人、伯母もあの様子じゃ助からなかったのだろう。本当に、不運だったとしか言えない。
……他人事のように聞こえてしまうと思うが、私にとって本当にどうでもいい事である。言い方悪いけど。先ほど自分の事を"若干不幸体質"と言ったが、実は若干どころではない。毎日不幸が襲ってくる。小さなものから、昨日の様な大きなものまで様々だ。そして私のこの体質は周りの人にも影響が出る。私も私でなんてはた迷惑なやつなのだろう。てなわけで、周りの人達には極力離れるべし、情など持たぬ、というポリシーのもとここまで生きてきた訳である。そもそも、伯母に関してはバリバリに嫌われていたし、私もバリバリ嫌っていた。人間の扱いをしてくれなかった相手に対してどうして好感を持てるのか。持てる訳がない。当たり前のことだ。
私の不幸体質は置いといて、えーと。ああ、家が全焼した所までいったんだった。それで、実際に火付けてるところをこの不幸少女アイリスちゃんが見てしまって。誰かに漏らされたらとか考えたのだろう奴らがもんの凄いスピードで襲いかかってきたもんだから、私は奇声発しながら全速力で逃げるしかなかったと。
「んで……なんやかんやあってここに居ると。いやあ訳分からないわ」
結局、ここはどこなんだ問題は解決してないぞ。ココドコ?
部屋の見た目、そしてこのベッドのふかふか加減からしてここは恐らく貴族が使うような寝室であることがわかる。ここ一室だけがこんな豪華なわけないから、多分どこかのお金持ちのお屋敷なんだろう。うん、ここまではわかった。
私、なんでここにいるん?
この問題が解決されるのはそう遅くなかった。
足音が部屋の外から聞こえてくる。だんだん大きくなっていってるから、こちらに近づいているのか。
予想通り、コンコンコンとリズムよくドアがノックされた。
ごくりと生唾を飲む。珍しく心臓が波打ってるのがわかった。
そして、その扉が開かれる。
「あっ、目を覚ましたんだね。良かった良かった。気分はどうだい? 」
「……え? えっと……と、とりあえずは大丈夫です」
なんてこった。厳つい立派な髭を蓄えたおじ様が出ると思ったら、おじさんなのかおにいさんなのか判断しにくいフレンドリーな方がいらっしゃったぞ。私のドキドキ返してくれ。
「君、森の中で倒れてたんだよ。覚えてる? 」
「はい……」
「最初見つけた時は肝が冷えたよ。医師に見てもらったけど疲労が蓄積…ええと体力が回復しないまま働き続けて、体が疲れちゃったんだって」
「そうだったんですか……。あの、助けて頂きありがとうございました。貴方が居なければ私は今頃土の肥料となっていたでしょう」
「怖いこと言わないでくれ。でも本当に良かった、大事に至らなくて。どうしてあんな森の中に居たんだい? 」
ギクリ。
この効果音がこんなピッタリハマる日がくるとは。それほどまでにこの質問は聞かれたくなかった。さて、どう説明しようかね……。
「まあ大体予想はつくけどね」
「え? 」
「森の中で体力限界になるまで彷徨うなんて普通ないだろ? それに君が着ていた服、枝に引っ掛かって所々破れていたよ。それも結構派手に。そうなると誰かから逃げていて、その途中に破れたと考えられる。違うかな?」
ズバリ言い当てられた。なんだこの人。実はこのおにいさん凄いかも疑惑が浮上してきたぞ。
「細かいことは聞かんさ。辛いことを思いださせてしまうだろうから。君はよく頑張ったよ」
イケメンおにいさんは私の頭に大きい手を置いた。そのまま髪の毛をボサボサにする勢いでナデナデしてくる。こんなこと、久しくされていなかったから思わず体が硬直する。
「さて、話したいこといっぱいあるのだが、まずはご飯を食べよう。お腹空いてるだろう? 準備はもう出来てるから行こう」
「え、そ、そんな、そこまでして貰わなくても」
「何遠慮しているんだい。まだ子供なんだから大人に頼りなさい」
イケメンおにいさんはそう言いながら私の脇に手を突っ込んで……え、ちょっと待っておにいさん何しようと……。
「どっこいしょっと」
「うわあああああああ! お、おにいさん何してっ」
「え、何どうしたの」
ええええええ! おにいさん私のこと軽々と持ち上げましたぞ! かなり体重ある(と思われる)私を!
「お、おにいさん。腕が疲れちゃうから降ろして」
「はははっ。こんなことくらいじゃ疲れないよ。軽い軽い」
軽い……だとっ?
今ので何人の乙女が犠牲になったのだろう。甘いマスクがまぶしいです。
「まだ二桁の時にもなってない女の子を担げない程落ちぶれちゃいないよ。これでも昔は強かったんだよ? 」
「……え? 」
「なんだい、そんな驚く程ひょろひょろに見えた? よし、ならば見せてやろう僕の必殺おう」
「違う。おにいさんその前のセリフ」
「……えっと、まさか年読み間違えた? 十歳くらいだった? 」
まてまてまて、おかしい。十歳? 私のこと十歳といったか美青年よ。私はこれでも十六だぞ。そんな年読み間違えるほど私童顔じゃないぞ?
嫌な予感がする。てか嫌な予感しかしない。
確認する為、自分の手にそっと目を向ける。……わぁー可愛らしいおててだなあーどちら様のおててかなあー。
……まだだ。まだ私は認めんぞ。てか異常すぎる。いくら私が不幸体質だからってこれは有り得ない。諦めが悪い私は咄嗟に自分の胸を見る。……素晴らしい位にフラットになっていたのは言うまでもない。
あ、あれ……体……ちっちゃくなっちゃいましたけど……。
まだ投稿して日も経っていないのにブックマークと評価が……!
ありがとうございます。文章短くてつまらないとは思いますが暇潰し程度に読んでくださると嬉しいです。