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憧れは理想です!

 俺とルチルは今いる場所は、公爵家自慢の中庭、生まれてからよく来る俺の大好きな場所だ。


 庭と言えば、現世でお家自慢の誰かがが言っていた言葉が蘇る。「お庭では安らぎを得られます。パンの欠片を撒くと小鳥が食べに来るんですよ。見ていて微笑ましいです」とか言ってたっけな。


ベンチに座り俺の横でサンドイッチを幸福そうな笑顔で食べるルチルを見ているとその気持ちが分かる気がする。小鳥と同じように思うのは失礼か。


「おいしかった?」


「はい!とってもおいしかったですよ。ありがとうございましたミズキ様」


 にこっとお礼を言ってくるルチルにドキっときた。さすがにそれは反則ですよ!レフリー呼んでレフリーを、、


「ミズキ様どうかなさいたしましたか?お顔が熱を持っていそうです、体調が優れないのなら室内に」


「いっいや大丈夫だよ!はは、それよりやっぱり料理長は料理が上手だね。今度お菓子でも作ってもらおっと」


 どぎまぎして、どこか不自然な話のそらし方になってしまった。


「お菓子ですか。料理長のお菓子程おいしくできるか心配ですが、今度私が研究の末作り上げたお菓子をお持ちしましょうか?」


「ルチルの手作り!?食べたい!」


 前世を含め今まで女の子に手料理を貰った事があっただろうか?




 手料理、あんな事があったな、、、、



 学校の後、用事があり帰宅が遅れる。時間はもう夕暮れ、そこらじゅうの家から香る夕ご飯の匂いが俺の腹を騒ぎたてる。


 自宅の扉の鍵を開けようとすると後ろから待ってましたとばかりに声を掛けられた。この聞きなれた声、幼馴染である。


 隣に住む同い年の女の子に「ご飯作り過ぎちゃったから観月食べるー?」と言われる俺。


「またっくしょうがないな。やれやれ、んで今日はなに作ったの?」と呟くと幼馴染はいつも言うのだ。


「シチュー」と


 決まって幼馴染は俺の好物を作る。


「なら、家行っていい?」


「うん!ほら早く!」


「歩き辛いから抱きつくなよ」


「え~別に良いじゃん!私達幼馴染なんだから」


 いつも幼馴染が向ける無邪気な笑顔は俺の心を高鳴らせた。結局いつもなんだかんだ言って許してしまう俺はこいつの事が、、なんてなあるわけないな、小さい頃から知ってるんだ。


俺たちは、幼馴染それ以上でもそれ以下でもない。


「ちょっと、観月?どうしたの入らないの?」


 おっと心配させてしまったようだ。いつのまにか玄関で止まっていたらしい。


「ちょっと考え事してた。お邪魔しますー」


「今準備してくるからいつもの椅子にでも座ってまっててね~」


「了解、いい匂いだ」


 幼馴染の家のリビングに入るとシチューのいい匂いが漂ってきた。キッチンに向かう幼馴染を見ながらいつも俺が座る椅子に座る。


「はい、召し上がれ~」


 何故かエプロンを身に着けている幼馴染、そしてテーブルにシチューを置く。単体で食べれなくもないが何か付け合せが欲しい所。どこか抜けている幼馴染は健在だ。


 渡されたスプーンを使い、ジャガイモを頬張る。中まで火が通っておりホクホクしていて大変うまい。

「やっぱり料理上手だな」


「いっぱい練習したからね。観月に食べてもらいたかったし、、、」


「今なんて、、」


 俺の聞き間違いかな?


「なんでもないよ。ちょっとスプーンかして」


「ん?構わないけどなんでだ?」


「なんでも。いいからかーしーてー」


 急かす幼馴染に持っていたスプーンをわたす。すると幼馴染はそのスプーンを使いシチューを掬うと、

「はい、あーん」


「なんだよいきなり」


「やってみたかったの!はい、あーんして」


 気恥ずかしいが大人しく口を開ける、幼馴染によってシチューが口の中に入れられる。あっつ熱いです!

 だが、表情に出さず会話を続ける。

「おいしい?」


「さっきも言ったろ?おいしいって」


「そっか、、」

「なんだよにやにやして」


「なんでもないよ~私も食べよっと」


 先ほどのスプーンで幼馴染は自分でシチューを食べ始める。俺が食えないじゃないか、、


「ねえ。観月、、」

「どうした?」


「私がさ、ずっと観月にご飯作ってあげよっか、、、」


「それって、プロポーズかなんかの時に言う言葉じゃないか?」

 余りの気恥ずかしさに誤魔化す。


「なんでもない、忘れて!あはは、喉乾いたよね?私持ってくるよ」


 立ち上がって背中を見せる幼馴染、、ちょっと震えているのがバレバレだ、、、


「はぁ~、まったく、ひとつ言っておくとだな」


 動きが止まる、まるでその後の言葉を待っていたかのように、、


「食えるなら、いつまでも食わせてくれよ。お前の手料理」


「えっ、、、なんて」


「なんども言わせんな、恥ずかしい」


「もう一回!お願いします」


 自分でも顔が赤くなっているのが分かる。


「ああ、熱いー。飲み物頂戴」


「まったく観月ったら。しょうがないな~」


 スキップでもしそうな雰囲気で飲み物を取りに行く幼馴染。俺は、一皿。テーブルに置いてある幼馴染の手料理のシチューを口に運んだ。


 これは俺と幼馴染の一夏のエピソード。言うなれば巡る恋のヒストリー







 すみません妄想です。

 俺に幼馴染なんていなかったよ、、、いいよね同い年の幼馴染って。


 しかし隣に住むのは大学生のお兄さん!勉強は教えて貰えるのはありがたいけどやっぱり女の子がよかった。


 だがしかーし!とうとう食べる事ができるのだ。憧れだった女の子の手料理が!神様ありがとー


「なら、後日お茶と一緒に持ってきますね」

「うん!楽しみにしてるよ」


 ルチルと会話をしていると俺の頭の上に一羽の小鳥が止まった。


「ん?んん?」


「あら、ミズキ様、頭に小鳥が」


 乗っかっている小鳥は可愛いのだけれど、若干かぎづめ?が痛いです。


「ねえルチル。この鳥ってなんて名前?」


「えっとですね。その鳥はキリーと言う鳥ですよ。人懐っこく広く分布、、色々な所に住んでいるらしいです」


「へぇ~」


 元の世界の雀みたいなもんか。あれ、雀って日本以外にもいたっけ?


「せっかくなのでここでお勉強しましょうか、風も心地よく空気が澄んでいますので」


 中庭に生えている広葉樹の葉の隙間から木漏れ日が差し込む、葉が風によってざわめき、そこに鳥が囀ってまるで自然が奏でるコーラスみたいだ。俺の頭の上に乗る鳥も囀るのはいいのですが揺れるのやめてもらえませんかね?揺れるたびにかぎづめに体重がかかって痛みます。


 そんな事をしているとルチルが解説を始めた。


「まず、野生の生き物は二つに分類されます」

「二つ?」


「ええ、二通りです。大きく分けますと、人に害をもたらさないのが動物、家畜やミズキ様の頭の上におられるキリーなどですね。次に人に害をもたらすのが魔物、オオカミやゴブル、ドラゴンなどです。一部の人間の中には魔獣を手懐ける者もいるらしいですが難しいと聞きます」


 この世界って魔物がいるのか、やっぱりファンタジー世界なんだな~。魔物を手懐けられるならドラゴンで空飛んだり、馬型魔物の背中に乗って疾走とかもやってみたいぞ。


「もしかしたら、今日来る商人の一向が魔物を連れているかもしれませんよ」

「見てみたいな~」


「ミズキ様、魔物は人に攻撃してきます。もし、お一人の時に魔物と遭遇したら逃げてくださいね。ミズキ様に何かあったら私、、、」


 いつもの冗談を言うルチルの顔ではなく、真剣そのものだった。それほど魔物とは恐ろしいものなのか、、

「大丈夫だよ。ルチルに心配かけないようにするから」


「約束ですよ?」


「ほら、指切りしよ」


「指切りってなんですか?なんだか怖いです、、、」


 この世界には指切りがなかったか、、指切りの意味を知らないと怖いだけじゃん。


「えっとね、絵本で読んだんだけど、小指と小指を絡めて、約束することらしいよ」


「へぇ~。私ったらてっきりそのままの意味で受け取ってしまいました。これでよろしいでしょうか?」


「うん!じゃあ約束ね」

「はい、守ってくださいよ?約束です」


 納得がいったのかルチルが小指を出す。ルチルの小指と俺のまだちっこい小指を絡めて指切りをした。

 やっふー!初めて女の子と指切りしたぜ。あれ、俺って現世でそれほど女の子と関わりなかったけ?いや、有ったはず、、、


 おおおおかしいな思い出せないや、忘れただけだよな?目から流れる雫はごみが入ったからと思いたい。


「あら、どうしたのでしょう?」


 指切りをしていたらルチルが俺の後ろの方を見ながら声を漏らす。後ろに振り向くとメイドの皆さんが慌ただしく走っている。そのなかの一人がこちらに気づくとこっちにやってきた。


「これはミズキ様にルチル。はしたない所をお見せいたしましてすいません」


「ん、別に構わないから気にしないでー。でも、なんで急いでたの?」


「それが商人の一行が予定より早くついてしまわれたらしく。お迎えする準備におわれていました」


 商人って相手の不興を買わないよう予定や決まり事には注意していると思ってた。公爵家が取引相手なのに何かあったのだろうか?それともよく有る事なのかな。


「それは、珍しいですね、、わかりました。あなたも忙しいでしょう。お停めしてしまい申し訳ありません」


 やっぱり普通ではないらしい。


「いえ、ミズキ様とお話しでき光栄です。あと、何かその商人わけありらしいですって噂を耳にしました。それでは失礼します」


 お辞儀をして行ってしまった。ああ、メイドさん。もうちょっと喋りたかったけど仕方ないよね。商人もう来ちゃうのか見に行って見ようかな。


「話の限り商人の一行が、間もなくやってくるらしいです。前門に向かいますか?」

「そうだね。気になるし行こっか。楽しみだな~」


 ベンチから立ち、二人で門に向かった。

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