道を逝く
その後、今日の宿泊場所や今後の事を予定を教えてもらってからテントから外に出た。
今、俺の側にはルルも居ないしミルアも居ない。何でも今後の予定を煮詰めるのに、話合う必要があるんだってさ。だから、近くには村長の家から付いてきてくれている兵士二人だけがいる。
気分転換を兼ねて村でも徘徊しようかな。村人の手伝える事は、出来る限りしたいし。
「村をちょっと見て回ってもいい?ずっと寝てて退屈だったんだ~」
「構いませんが、自分達も付き添わせて貰います」
「問題が無いとも言い切れないしね、お願いするよ」
とりあえず、中央テントの近くに居ても意味が無いんで離れる事にした。兵士達は、俺から二歩下がって変わらず護衛し続けてくれている。
正直言って俺は、あまり村や町に来たことが無い。
だって、普段は訓練に費やしているし、商品は商人が届けてくれるからでる必要がなかったんだもん。
まともに行った事が有るのは、公爵家の屋敷が建てられている街とベルニアくらいだけか。ガゼルは、街に入れず後にしたし。
だから俺は、ドキドキワクワクな新鮮な気持ち。
こう、歩くだけで色々な発見がある。
例えば、果物や野菜を売っている店に並ぶ品物を見ても知らない食べ物が並んでいたり、武器屋らしきエンブレムが取り付けられている店には、実用性あるのか?と思える物が売っている。
やっぱり、本や聞くだけでは分からないな、この世界は。
「あのお店入ってみたいんだけど良い?」
よく分からない物を取り扱っている武器屋を指差して護衛をする二人に聞く。護衛は、周辺を確認してから許可をくれた。
「ありがと、じゃあ入ろうか」
俺が扉に手を掛けようとすれば、護衛の一人が替わりに開けますと言うので大人しく引き下がる。
重ためな、木の扉を押し開けるとガラガラと取り付けられた金属の鐘が奏でられた。
流石に俺の力じゃあれは開けられない、引き下がっといて良かったよ、、、
店内では、壁や壺に武器が立て掛けられたり、刺さったりしていた。ちょっと無造作っすね。
「いらっしゃいませー、どんな品をお求めで?」
鐘を聞きつけ雇い人らしき青年が、ごますり手で近寄ってくる。
何が欲しいとなると、愛しき武器斧槍ぐらいしか咄嗟に浮かばない。メインがハルバードだし、サブ武器でも探そうか。
「うーん、ハルバードって置いてる?無かったら他に剥ぎ取り用の短剣とか、面白い武器が欲しいかな」
「ならば此方など、どうでしょう?」
青年が自信満々な表情で壁に飾られていた短剣、突き刺していた直剣、槍など数種類の品を手に取るがハルバードは明らかに無く、見ただけでは、何の変哲もない普通の武器の数々を手にしている。
青年は、此方の気持ちを察して商品の説明をしてくれた。
「こちらの槍は、魔力に合わせてポールが伸びるのが特徴でして、最大、大人の半寸程長くなります」
説明を裏付けるように、槍を伸び縮みさせている。
この武器は、平凡そうに見えて凄い実用性が高いのでは無いだろうか。
歴戦の強者ならば、長さが自由に出来るだけで戦力は格段に上がり。一般兵でも、機転を利かせて急に伸ばせば一矢報いるかもしれない。
こいつは、凄いや!
だけど、俺は槍とか使わないんで要らないな。
説明をしても、俺の顔が優れないのを見て青年は焦り混じりに別の品を紹介し始めた。
「でっでは、こちらの短剣はどうでしょう!当店自慢の商品でして、あのクロゴンの皮をも切り裂けます!お客様にお似合いかと、、、」
見せられた短剣だけど、本当に切れ味は良さそうだ。
クロゴンとは、竜の鱗よりは柔らかく普通の魔物よりは堅い外殻をもつワニみたいな魔物の事だと本で見たことがある。だから、普通の短剣では刃が欠けてしまうとか。
そのくせ皮は、バックや衣服、防具にも使われて需要があり高く売れる。
裂けるのが、事実なのは多分本当だろう、、、けど、あれは買わない。
何故なら、、、
「薄すぎない?」
短剣にしては、刃が極薄過ぎて簡単に折れてしまいそうなんだよね。
切れ味が良くても、耐久力皆無じゃ意味ないです。
てか、青年は何でポカーンと何故分かった!?みたいな表情で固まってんだよ!
普通に、気がつくよ!
背後から、息を飲む音が耳に伝わる。
まさかと思い後ろの二人を見たら、してやられたって顔で悔しさを滲ませていた。
「帰ろっか、、、」
これ以上居ても意味が無いと悟り、放心状態の青年を置いてそそくさと店から退散した。
時間も経ち、翌日の朝。
増援の私兵と俺が乗る馬車が到着した。
俺が帰るのに、合わせて大体の兵士は公爵家に帰還するそうだ。一部の兵士は、盗賊のアジトを制圧しに行くらしい。
今や中央に存在したテントは折り畳まれ、荷物用の馬車に積んである。捕まえた盗賊達は縄で縛って連行だ。
馬車に乗り込む前に、すっかり公爵家関連の物が無くなった村を見渡す。
「ミズキ様参りましょう」
長い時間、馬車の入り口で突っ立っていたら、ミルアに声を掛けられてしまった。
「ねえ、ミルア。僕がこの村に来るとしたら次はいつになるかな?」
俺が、村を眺めていた理由。
ミルアに質問したけど、恐らく答えは自分でも分かっている。良くて数年後ぐらいか。
「ミズキ様、、、」
おっと、つまらない感情に浸っていたせいでミルアの顔が曇ってしまう。
今回の事で皆に大きく迷惑を欠けてしまった俺が、何を言ってるんだか。
「なんでもない、よし、帰ろっか」
たかが数年、力を付けていずれ自由に成って来れば良いだけの事。
今回の事件で、俺に足りない物も知れたし、アストにも出会えた。
さあ、帰ったら皆に謝って訓練に明け暮れるぞ!
新たな決意を胸に、
大部隊に護衛されつつ、俺が乗り込んだ馬車は、舗装されていない街道を進みだす。
「進む~すすむ~、馬車はすすむよどこまでも~」
絶賛馬車では、俺の一人コンサートが繰り広げられている。
だって、やること無いんだもん。
道中は安全だ。護衛が多いから、魔物は直ぐに対処されてしまうし、野盗なんかは最初から手を出してこない。
だから、注意や警戒する事もなく、運ばれているだけの俺。よって、物凄く暇だ。
眠れって?夜に、ちゃんと爆睡した俺にとって眠気なんて無いに等しい。全く以て無茶ぶりっす。
だから、ちょっとでも暇を紛らわす為に、俺は歌う!
例え下手と言われようとも!
例え音痴と笑われても!
例え、、、たとえ、、、
もう、歌なんて辞めてやるんだから!こんちくしょ、、、
これにて、第一回ミズキオンリーコンサート終了。
ぱちぱちぱち
誰も拍手する人が居ないので自分でやったら、虚しかった、、、
「ミズキ様、間もなくハグリッシュに到着致します」
自分の不甲斐なさに、いじけ続ける俺に、馬車に並走して馬に跨がるミルアが教えてくれる。
ハグリッシュとは、公爵家の屋敷がある街で、俺の故郷だ。
「それと、、、」
まだ、何かミルアは言いたい事があるらしい。
一体なんだろう?
「その、、美しい歌声でした。それでは、私は業務戻ります」
そう言い切ってから、颯爽と窓から離れてしまう。
俺は、知った。馬車に防音機能なんて無いって事を、、




