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ガゼルの街

「じゃあ、俺ももう行くわ」


 軽く透けている爺さんに別れの言葉をかける。


 今、この湖にいるのは俺たち二人だけで、アストの姿は既に無い。生れの果てが消え去るのを確認した途端、薄暗い森の中に入って行ってしまった。


 俺もアストについていこうとしたら爺さんに止められた。

 スレイプニルは基本自由に過ごし、主に呼ばれると風のごとく現れるらしい。


 結局じいさんの話を聞いているうちに、アストを追いかける事は無理になっちゃたんだけどね。


 俺としては、公爵家まで連れて行ってもらいたかった、、、


 そんな訳で休憩がてら寄ったこの湖ともお別れして帰ろうとしている所である。

 空を見上げれば、もうすぐ日は沈みそうだ。


「ふむ、楽しかったぞ貴族の子よ、、、いやミズキと申すのであったな。期があればまた来るがよい、お主なら受け入れよう」


 湖にいたのは、ほんの数時間であったが長い時間過ごしたように感じる。じいさんの顔は、厳しさがわずかに崩されていた。


「生れの果てとまた戦闘になるのは、もうこりごりだけどね。さーて、休憩も済んだし急ぐとしますか。じゃあな」


 初対面の時とは違く、完全な素出した言葉で別れ、湖を最後に、ぐるっと見渡す。


 対岸にアストらしき姿が見えた。あんな離れていないで近くに来ればいいのに、まったく恥ずかしがりやさんだな~


 ぐだぐだしていたら本当に日が沈んでしまいそう。最後に湖にも別れを告げ、暗い森に足を踏み込んだ。




「これ、俺帰れないパターンじゃないっすか?」


 思わず、呟いた言葉に反応を示す者はいない。張本人は衣服を泥で汚して、物乞いみたいな恰好になっている。だれも公爵家の者だとは思わないであろう。


 数時間前に湖を発ったが、ミズキは森を舐めていた。


 木が密集して視界も悪い、足場がでこぼこと凹凸な道は疲労だけでなく、方向感覚を狂わしてくる。


 なんど躓いたことか。


 おかげで、どこに居るのかも分らない状況に陥ってしまった。


 カーカーと鳥類の薄気味悪い声がどこからか耳に入ってくるのも、心に、主に精神がまいってくる。


「これ、完全に夜迎えちゃうよ。もう夜だったりして、、、ははは、笑えない」


 高く聳え立つ、大樹を恨めし気に見ても反応なんて返ってこないのが、怒りを通り過ぎて空しい。


 異世界で遭難して生きて帰れる確率なんて物凄く低いと聞いたことがある。


 人の手が入っていない広大過ぎる大地、動物を超えて強い力を持つ魔物達、この二つが一番の要因だ。


 俺はここで死ぬのかな、、、短い命だったぜ、、、


 脳内には、走馬灯のように数々の映像が流れ始める。この世界に生まれた時の事、初めてルチルとあった時や姉様達が優しくしてくれた時、ルチルと一緒にお風呂に入った時の事、、、なんてあったっけ?


 頭が魅してくれる、捏造の入った走馬灯。


「俺らしいな」


 自然と乾いた笑いを出しつつ、ぼんやりと歩き続けた。


「ん?、、、あれは、、」


 幻覚か、はたまた目が壊れたのか、視界のずっと奥に僅かの光が見える。


「光だあぁぁぁぁああ!」


 魔力を足裏で爆発させ、気にぶつかるのもお構いなしに、光へ突進。遠くに見えた光は、距離が圧倒的速さで縮まることで広がっていく。


 森が途切れるのかな。


「国道か、町か村に出たらいいな」


 あまりの興奮の為か、脳内で考えた事が口から零れた。


 出た先の空は夜、光は太陽の光ではなく月の光であった。これはこれで、とても重要な事ではあるが。それよりも、


 おかしい、、、本来なら足裏に地面を踏みしめているはずである。なのに、土の感覚は無く、あるのは空中をばたつかせるような感覚に近い。いや、それは無いと下におそるそる視線を下げると、、、勢いよく飛び出した先は切り立った崖。


「あ、あい きゃん ふらい、、、」


 当然飛べるわけもなく、重力に引っ張られ、落ちた。風で髪の毛は、ぼさぼさに崩れ、着ていた服は、限界を迎え斜めに切れてどっかに飛んでいく。


 嘘ぉぉぉおお、、、こんなん惨めすぎる。俺嫌だよ?崖下にあった公爵家の息子の死体は半裸でした!とかなんの。


 俺の意思とは、裏腹に地面は凄まじい速さで近づく。それと一緒に人間ミンチまでのカウントダウンも早まる。


「そうだ、魔力で肉体を強化して耐えれば!」


 内に秘めたる魔力を体に行渡らせ、準備完了っと思った時気づいてしまった。


 あれって、、、下に生えてるの針葉樹じゃね?地面のような面はどうにかなっても、あの尖がりは防げない。このままでは、ぶっすり逝ってしまう。強化魔力では駄目だ、他には、飛行系魔法なんて知らないし、転移の魔導も使えない。


「くっ万策尽きたか、、、いや待てよ」


 幸い崖の岩肌と距離はさほどない。これなら!一か八にかけてみるか、頼むよ神様。


「アイススピア!」


 右手から、巨大な氷のつららを召喚し、崖に突き刺す。勢いは止まらず、岩肌をゴリゴリと削る反動で、今にも右手が千切れそうだ。


 持ってくれよ、、、


 今度は左手を崖に向ける。


「アイススピア!」


 両腕にかかる負担と、勢いが収まるのを感じながら、魔力を注ぎ続けた。




 洗い息遣いを整え、痛いほど鼓動する心臓を魔法で癒す。俺はなんとかして崖下に無事降り立つ事に成功した。今は、我慢の限界とばかりに軋む全身を草に倒し、横になっている。


「生き延びたのはいいけど、あの遠くに見えたのってガゼルだよな」


 さっきアイススピアで勢いを止めている時、偶然見えたのは、俺の父様が治める公爵領の街ガゼル。あの暗闇の中でも目立つ特徴的な、高く聳え立つ五本の金を鳴らす塔があるので有名だったはずだ。

 と言うことは、あそこにつけば憲兵やら騎士団に保護してもらえる。


 体を回復魔法で癒して、俺は町があった方角へ走った。風のような速さのおかげで、そう時間をかけずに町には着いたけど。


 町が見えたことで浮き足だっていた自分を殴りたい。


「この恰好のままじゃ街に入れねえよ、、、」


 夜であった為に、門は閉められているし、ぼろぼろの俺は怪しいらしく門番が取り合ってくれない。

 結局急いだ意味も空しく、街の城壁を背もたれにしてお外で一夜を過ごす事になった。


 朝方、肩を揺さぶられるのを感じ、目を覚ます。


 銀色の鎧を纏った、優男が俺の肩に手を当てて顔を覗き込んでいる。


「えっどなたです?、、、」


「生きてた!?」


 生きてたとは、失敬な!俺の事まさか野たれ死んだ死体だと感じがいでもしたのだろう。

 優男は、あまりに驚いたのか、一歩後ずさっている。


「流石に、その反応は傷つくのですけど、、、寝てただけなんで感じがいしないでください」


 半目で睨むように優男を見て呟くと、頭を掻きながら謝ってきた。


「ごめんね、まさか町の外で人が寝てるとは思ってもみなかったからさ。でも、職業柄一応質問しなきゃいけないんだけど、君はどうしてここで寝ていたのかな?それと、その衣服は何かあったのかい?」


 職業柄って事は、この人恰好から見るに騎士団か衛兵だろう。とりあえず、公爵家の事は言わず、昨日の夜の事を言うことにした。


「昨日の夜に町に着いたのですけど、門は閉まっているし、門番には恰好からか怪しく見えたらしく入れて貰えなかったんですよ。ちなみに、衣服は森を抜けようとしたらボロボロになりました」


「大変だったね、、、とりあえずそのままじゃ町には入れないよ。門番の騎士達が仮眠や休憩する場所があるからそこに行こうか。落し物の服とかがあったりするから、それを着るといいよ」


 とっても優しい騎士がいたもんだ、、、ナニコノイケメン惚れる。


 いつまでも座ってたら失礼だから立ち上がる。寝たことで多少疲れもとれたみたい。


「ありがとうございます。こんな怪しい者を助けて頂いて」


「ふふ、怪しい人物は、自分の事を怪しいなんて言わないよ。とにかく行こうか。門の所には、いっぱい人もいるから注目しちゃうかもしれないけど、ついてきてね」


 言われた通り、騎士の後をついていく。ああ、今頃公爵家の皆どうしてるかな、、、

 心配はしてくれていると思いたい、もし俺の事なんて気にもしてなかったら泣いてしまう。


 歩いている最中は、騎士の優男が話かけてくることは無かった。今話かけないのは、逃げられてしまうのが困るのであろう、一応不審人物だし。


 おそらく、着替え終えたら、色々質問されると思う。


 門まで、距離も近いしね。昨日疲れた俺は、門から余り離れていない場所で寝た。だからこそ、この人も俺を見つける事ができたのかもな。


 ここからでも、門の前にそれなりの行列が出来ているのが見える。荷物を載せた馬車や旅人などいろんな人がいる。


 その人達の後方から、馬を走らせている人影があった。


 そうとう急いで来たのであろうその影達は、並んでいる人の横を抜け、1人が馬から降りて門番に話しかけている。


 見覚えがある影に俺は、笑顔が浮ぶ。


 盗賊の下っ端みたいな顔、酒が大好物で優しくて、小さい頃から馴染み深い大男。

 俺は、思わず普段は出さない大声で、呼んでしまう。


「ゲイル!」


 影の正体は、公爵家私兵でミルアの部下であるゲイルだった。声に、素早く反応してゲイルがこっちを向く。同じく影こと、他数人いた公爵家私兵の皆と門番の視線に捉えられる。


「ま、、まさか、、、坊ちゃんですかい?」


「うん、久しぶりだねゲイル。二日ぶりくらいかな、心配かけてごめんね」


 事実を受け止め始めたゲイルは、体をふるふると震わしている。そして、走った。


「ミズキ坊ちゃーん!」


 ゲイルにとっては感動の再開みたいだけど、、、俺は、大男が涙を流しながらこっちに走ってくる姿に、少し恐怖する。

うーむ、展開が早すぎたかな?

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