魂の果て
『なろう』よ、私は帰ってきたー!
ごめんなさい調子に乗りました。更新期間が開いてしまって申し訳ないです。
車輪のごとく回転する魔導の陣は生れの果ての頭上で俺の詠唱に応えるように拡大していく。
スレイプニルは、本能で察知して離れたが生れの果ては、そんな知性は持ち合わせていないようだ。
「さあ、凍れ、、、」
生れの果ての周囲に氷の蕾らしきものが生まれる。
蕾は一個ではなく当たりを覆い尽くすまでに無の空間に出現し始める。
生れの果ては邪魔だと言わんばかりに、腕を振り回して蕾を破壊した。
脆く砕かれた蕾に呼応して他の蕾も砕け散り、きらきらと氷の欠片は辺りに充満していく。そして、先ほどまで激しく腕を振り回していた生れの果ては拳を振り上げている動作の途中に動きを止める。
いや、動けないと言った方が妥当であろう。別に、生れの果ては氷づいて動けないのではない。
そもそも氷は付着すらしていなかった。
氷魔導止まる大気とは空間自体の凍結。俺が言った凍れとは生れの果てに対してではなく空間に対しての言葉だ。
いやー、昔にこの魔導を考えた時に決め台詞は決めてたんだよね、しかし今後の課題として動きなながらの詠唱もできるようにならなきゃな。
俺の後ろからゆっくりとスレイプニルは歩み寄ってくるのが気配で分る。
蹄で地面を踏むスレイプニルの足音が隣で止まり、俺に顔を擦り付けてくる。やっぱり、契約しろって事で良いのだろうか。
俺としては、願っても無いことだけどスレイプニルに悪い気もする。
今ならスレイプニルは逃げる事だってできる筈だ。
止まる大気《ロームヴェブ》の凍結時間は計った事が無いから分らないけど結構持つと思う。
それでも、俺の横にいるスレイプニルは、強い意志を目に灯らせてこっちに早くしろとせかしているようだった。
スレイプニルが生れの果てを倒すには俺と契約するしかないならしょうがないか、動きの止まった生れの果てなら俺の魔導で倒す事も考えられるけど。
それじゃあこいつは納得しないんだろうな。
「本当に良いのか?」
最後の確認の意味も兼ねて、問いかけた。
契約に対して俺はそこまで詳しく無いから分らない、主と決めるからには戦闘が終わってはい終了って訳にもいかないだろうし。
こっちの言いたい事がスレイプニルには伝わったみたいなんだけど。ぐりぐりと顔を押し付けてくるのは痛いから止めて欲しい。
ティアにも似たような事された覚えがあるぞ。
「分かったって、契約するぞ?今日を持ってしてスレイプニル、名前は、、、「アスト」で良いか?よし、今日からお前はアストだ!」
名前に対して、アストは鳴き声で呼応してくれる。
これで契約成功でいいのか。
ティアの時は、名前つけて終了だったし、良いんだよな?アストには、何も変化が無いように見えるんだけど、、、そんな困惑した表情でこっちを見ないでくれ、照れてしまう。
よく分からない雰囲気に場が支配されつつあるときに湖側からついちょっと前に聞いた覚えのある声がした。
「あんな魔法は見たことが無いぞ、、、湖を走るわ、高貴なスレイプニルを手なずけるわ。これほど驚いたのは久々だ」
水面に当然のように浮く先程のじいさんがいた。
もっと早く来てくれても構わなかったのよ?それに、魔法じゃなくて魔導なんだけどな。魔導は魔法って感じがいされちゃうのかね。
「なあ、今俺とアストは契約した状態になっているのか?」
この人?博識っぽいし契約についても知っていると思い聞いてみたけど。俺とアストを交互に見やってから首を横に振るう。
「お主とスレイプニルは契約状態にはなっておらんな。魂を繋ぐ色が見えん」
繋ぐ色って何よ。てか、やっぱり名前を付けただけじゃ駄目みたい。
「どうしたらスレイプニルとの主の契約って成立できるんだ?儀式とかするにしても供物とか用意できないぞ」
何故か、呆れられて溜息まで吐かれてしまった。
契約の儀式とかありそうじゃん。
汝が我が主か?みたいな雰囲気でさ。
「やはり人間の間では完全に契約の仕方が忘れ去られていると知って、残念だっただけのだ。何簡単な事よ。お主の魂の波長を魔力を通してスレイプニルに流し込めば、繋がりが生まれる」
契約の仕方は物凄く簡単でした。
さっそく、手をスレイプニルの体に添えて魔力を流し込む。じいさんが説明するに魂の波長とやらは、魔力に刻み込まれているらしい。
だから、魔力を流せば自然と契約は成立だ。
身に流れる魔力の大半を流し込むと、スレイプニルの身体が眩い光を放ち始めた。
光が収束し終えた時には、スレイプニルの首元に手のひらサイズの魔方陣らしき物が刻み込まれていた。
「契約は成立だ。スレイプニルの模様同様、契約の印はお主の体にも刻まれる。後で探してみるがよい。それよりやるべき事を済ませた方が良いのでないか?」
印に集中していた俺に、早く成れの果てをどうにかしろと遠回しに言われてしまった。
今も、成れの果ては止まる大気《ロームヴェブ》の氷で凍結している。
深い怨みを持つこいつは、何を思っているのか、俺が軽々しくに考えて良いものではない。
それでも、自分勝手でも良いから救ってやりたい。 偽善?偽善者でも構わない、偽善くらいの事も出来ない奴には、なりたくない。それが俺の意思だ。
「アスト準備は良いか?」
俺から成れの果てに向き直ったアストは前足を高らかに上げ、一鳴き。
じいさんが後ろから、お互いの魔力で共鳴させ増幅させろと言っている。
「怨み、恨み、憎悪に落ちし、死せる骸よ」
この言葉は、上級の中でも難しい回復系魔法『昇華』の詠唱。一言一言に重みを感じつつ言葉を紡ぐ。
斜め前にいるアストの鬣が煌めいていた。
「汝が携えんし呪怨、我が身に宿し、静寂を持って」
詠唱の終わりを察したらしい、アストも八脚もの蹄で大地を踏み抜く勢いで鳴らしている。
さあ、逝かせてやるぞアスト!
「猛る魂を祓いたまわん」
アストが成れの果てに突っ込み、背後で俺が最後の名を吐いた。
「ビーリエデン」
成れの果ての頭上。天から暖かみのある光が差して、凍結させられている成れの果てを照らした。
そこに、光輝くアストが空を走り、成れの果ての周りを回りながら上へと昇り、頭上で蹄を踏み込んだ。
煙を出しながら、成れの果てに罅が生まれていく。
「安らかに眠ってくれ、、、」
やがて、成れの果ては塵となり風に流されて消えてしまった。
また、更新開始するので宜しかったら見てくださいな。




