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一息の休憩場所は安置で無い

 木の上やら、横の茂みから感覚的に嫌になる耳障りな音が聞こえ、さっきまで明るかった森は薄気味悪い。


「奥にいくたびに印象がらりと変わるなー。帰り道こっちであってるのか?」


 本当に同じ森なのだろうか。常に後ろに何かを感じながらも、明かりを見つけようと上を向いて歩く。すると上に気をとられ過ぎて足元で何かぬめっとする感触にとらわれた。


 下を向いて確認したら、足に苔むした塊が絡み付いている。うにょうにょと震えていてきもい。

 足を抜こうと足を引っ張ってもいっこうに抜けない。


「ああ、なんだよ!フリーグ」


 初級氷魔法のフリーグで足の周りを囲む冷気を放つ。魔法の効果で塊が凍りついたのを確かめてから氷の塊となっている物を砕く。


 そういや、これなんだったんだろ。砕いちゃったけど問題無いよね?


 それに、いくら体を鍛えていると言っても流石に疲れてきた。七歳児の限界なのかもしれない。

 今にも木を背もたれにして休みたいが、泣き言を呑み込み、体を奮い立たせた。


「さっさと、皆の所に帰らなきゃな。気合い入れ直しっと」


 頬を叩いて仕切り直し、足に力を込めて走り出す。


 体感で25分位たっただろうか。暗かった森を抜け、開けた空間に飛び出た。湖を囲んで出来た空間がなんとも神秘的に見える。


 こんな湖なら精霊がいてもおかしくないな。人もこんな森の奥深くまで来ることも無いみたいで、草花が荒らされた形跡が無いことから分かる。人から距離を置きやすい精霊にとっては最高の場所だな。


 精霊に悪いが少し休ませてもらう事にする。なんとか奮い立たせていた身体も少々の悲鳴をあげている。


「無茶し過ぎた、、、朝屋敷を出る前に水分を取ったきり何も摂取してないし、ちょいと湖のお水飲ませてもらいますよー」


 見えない精霊に一応のことわりをいれてから、湖の傍に向かった。


 湖に近づいてわかったけど、思ったよりこの湖小さいけど中心が思ったよりも深い。対岸もはっきりと見えるし、湖の水が透き通ってるから浅場の底は見えるんだけど、中心は暗く何も見えないぞ。


 湖についてちょっと分かったけど、水が安全と限らなにので、解決にはならないが水を掬って臭いを嗅いでみた。


 普通の水らしく無臭である。科学で聞いたけど無臭も絶対安全にはならないらしいけど、喉が早く飲みたいと所望している。


「鉄の臭いとかしないし飲むか」


 両手でおわん型を作り水を掬って、口元に持っていく。少量ずつ口に含み味の確認をしたあと、飲み込んだ。


 胃を壊す事を心配に思ってたけど即死性の毒じゃないかぎり、回復系の魔法と魔導あるから大丈夫じゃん。


 しかも、毒魔法や回復魔法の素質がある人って病気や体に対する体制が高いってルチルに教えてもらったし。


「ってそれなら心配する必要ほとんどないじゃん。なら直接飲もっと」


 手で掬うのも煩わしくなったので、湖に直接口をつけ喉を潤す。何故か飲むたびに力が湧いてくるため一心不乱に胃に流し込む。ルチルや屋敷の人が見たらはしたないって怒られるな。ゲイルは、、、怒らないな。


「おい、死ぬ気か人間の子よ」


 突然の声に驚き、顔を上げた。


「えっ、、、誰よあんた」


 湖の上に浮遊している髭を長く生やした爺さんがいた。見た目的には家の爺やと同じくらいかな、でも爺さんから発する威圧は年を感じさせないくらい鋭い。てかちょっと透けて無いっすか?


「まずは自分から名乗るのが礼儀ではなにのかね?恰好をみるに教養はあるのだろう人間の子よ」


 おっと俺としたことが思わず失礼な事をしてしまった。


 立ち上がって貴族なりのお辞儀をして口調を変えて自己紹介を始める。


「これはとんだ失礼申し訳ない。私は王国グリムガン、ハーヴァント家次男ミズキ・ハーヴァントと申します。貴方様のお名前を教えてもらっても構いませんか?」


 爺さんは、俺の対応がまともだと判断したらしく威圧が弱まっている。


「ほう、我を見て普通の対応をするか。度胸があるのか又は無知であるか、まあよい。我はこの湖に住まう者と言っておくとしておこうか。それと忠告しておくが、お主が飲んだ湖の水には過剰なまでの魔力が含まれている。人間が飲むと魔力が暴走して死ぬのだが何ともないみたいだな、、、」


 そんな危険な湖なんて聞いてないぞ。それにだったらもっと早くでてきて俺に忠告してくれと思うのはいけないだろうか。


 極めて平静を装い、返事を返す。


「教えていただきありがとうございます。どうやら私の身体には異常は見られないみたいです。何か飲むたびに力が湧き出るような感覚にあったのですが、湖の水が私には良い物に思えました」


 爺さんは俺の言葉を受け、唸りながら俺の全身を見ている。見透かされた気がして嫌な感じがした。


「人間の身をして人外の領域に至っておるのか!これほどまでなら奴らのように力を感じるのも頷ける」


 この爺さん1人で解決して意味わかんないこと言い始めたんだけど、勘弁してくれ。1人納得してすっきりしている爺さんに若干の苛立ちを感じざる負えない。


「あのどういったことなのですか?」


「ああ、お主が普通の人間の身で無いというだけの事だ。お主の身はまさに、、、つまりあれと同じということだ」


 爺さんの話を聞いている途中、爺さん以上の体に計り知れない威圧からくる重さが俺を襲った。この威圧を発しているのは対岸か!


 気づけば爺さんも俺に背中を向け対岸を眺めている。未だに何が草木の向こうにいるかは見えないが、爺さんは何が来るのか知っているみたいだ。


 程なくしてそれは現れる。


 見ただけで人を見殺す錯覚に陥る鋭い眼光、体色は黒と灰色が混じり合わさって何とも言えない色をしている。怪しく人の心を魅了するのは美しいからか。そして今までの特徴を置き去りにして目を引くのは八っつの逞しい脚。神話に出てくるスレイプニルにそっくりだ。


「スレイプニル、、、」


 俺は、いつの間にか呟いていた。俺の呟きに対して爺さんは反応した。


「スレイプニルを知っておったか、一部の人間にしか記憶に残っていないというのに博識だのう」


 確かに俺はルチルからスレイプニルについての話は聞いたこと無い、公爵家にある魔物関連や伝承系書物の中にも無かったし、現世の知識が役にたった。


 対岸にいるスレイプニルは俺と爺さんをちらっと見たが、相手にもせず湖の水を飲み始めた。


 てか、さっき爺さんが言っていたのは俺の身体がスレイプニルと同格って事をだよな。喜んでいいのか悲しめばいいのかわからない所だ。怪しまれる前にごまかしを入れとく。


「それなりに勉強してるからな。たまたまだよ」


 言葉使いが焦ったばかりに戻ってしまって拙いと思ったけど何も言われないから平気かな。


 信じてないのか爺さんに視線を向けられるが、美しいスレイプニルを見ていると爺さんの視線なんてどうだってよくなってしまう。


 あんな馬に跨ってハルバードを振り回したらどうなっちゃうのかな、先陣を切って相手を吹き飛ばしたりしちゃったり、、、やべ涎垂れそう。


 スレイプニルを見て危ない思考をしてると対岸の茂みから新たな巨大な生物が出てきたのに気付いた。


 外見はまさに美しいスレイプニルの真逆。主な形は猿だ異様にデカい、肩から巨大になっている腕はふつうサイズの体とのアンバランスさで気持ち悪く、体も至る所に穴がありガスらしき緑色の煙を噴出している。触れた草木が腐り始めているのを見ると相当な悪影響が出そうだ。スレイプニルも警戒して巨大な何かを威嚇している。


 俺はスレイプニルの倍以上の体を持つ何かを指さしながら爺さんに質問しようとした。だが、爺さんは質問する前に巨大な何かを忌々しげに見つめ、薄く口を開けた。


「あれは、魔物の生れの果てだ。負の執念に駆られた魔物は己の死に気づかず、死してなの生きながらえようとする。死んでいるからこそ体は腐り、周りに被害を及ぼすのだ」


 爺さんが説明している間にもスレイプニルと生れの果ての争いは始まっていた。自身の倍ほどある剛腕をスレイプニルに向けて振り下ろす。酷い衝突音が地面と拳から発せられた。


「なあ、ほっといていいのか?」


 何故か回避しかしないスレイプニルを見ていると心配になってくる。爺さんは理由でもしっているのか悲しそうに見ていた。


「スレイプニルは主を見つける事で強くなる神獣。あのスレイプニルは主をみつけておらん。普通の魔物相手ならまだしも敵があれでは勝てないであろう」


 早くも諦めにもにた発言に俺は怒りを覚える。しかし俺ってこんなに怒りっぽかったっけ?そう考えると怒りが収まっていくのを感じた。ただ怒るだけなら誰だってできる。だからこそ何か解決策を探すか。


 まずは、横の存在からか。


「なあ爺さん、あんた強いんだろ?あいつ倒せないのか?」


 この湖に住んでいるくらいだから強いとあてにした言葉は、爺さん本人に否定された。


「無理だ。あれには我の力が及ばない」


 どうやら、負の執念を元にしている奴相手には爺さんの力では無理らしい。爺さんの力がなんなのか気になるが今は対岸の存在に集中するか。


 避け続けているスレイプニルに余裕がありそうに見えるがいつあたるか分らないし、早めに打開策を考えなければ。


「なあ、本気のスレイプニルってどのぐらい強いんだ?」


「まさに神獣と言った所であろう、力を振れば全てが無に帰すと言われておる」


 ふむふむ、それって最強じゃね?だが、それも主を見つけてこその力か、、、


「ねえ、俺にいい考えがあるんだけど?」

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