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知らなかった主人

いやはや、遅くなって申し訳ないです。リアルがちょいと忙しくなっておりました。

明日も投稿します!

一応、別視点回ですよ。

 小さい頃に冒険者に憧れて剣を始め、いつのまにか冒険者から人を守る騎士になっていた、、それが俺の生い立ちだ。


 気楽で自由な冒険者と違って騎士と言うものは、礼儀を求められるし貴族にこき使われるのが当たり前、、、


 なんで騎士になったんだろうか?最近苦悩の日々が続いている。


 やめようとも思ったが、俺の事を隊長と慕ってくれる部下を見捨てることもできないし。


 そんな俺は公爵家の夫人とミズキ様が乗る馬車を護衛する命を受けていたのだが思いもよらない事に出くわす。


 道の脇の木陰から一体のゴブルが顔を出していた。ゴブルは所詮下級魔物に過ぎない、、、


 近づいて腰に差していた公爵家支給の剣を抜こうとしたら、さらにもう一体のゴブルが現れた、そしてもう一体とゴブル達が集まってくる。


 む、数が多いな、しかし護衛している手練れの騎士にとってはゴブルなぞ相手にならんか。


 俺の後ろに付いていた一人の部下も余裕の表情を浮かべている。

 そう油断した時、予測していた数よりも多いゴブル達が沸き上がるように現れ馬車を襲おうとしてきた。


 すぐさま剣を抜く勢いを利用して二体のゴブルの首を跳ね飛ばし、後ろへ一歩ステップし距離を確保する。

 やはり弱いな、虚を突かれて戸惑った部下達もなんとか持ち直しているのを確認し、こちらに向かってきている六体のゴブルに視線を定めた。


 獲物は、剣2、鈍器3、素手1か、、


 まず、がむしゃらに振り回しているゴブルの棍棒を下から掬い上げるように弾き飛ばし、腕が持ち上がって隙だらけの胴体に一閃、その後ろの仲間がやられて一瞬動きが止まったゴブルの頭に剣をねじ込み、怒りくるって素手で突貫してきたゴブルを蹴り飛ばして、背後に迫っていたゴブルも剣を受け流して切りつける。

 これで、死んだだろう。残りのゴブルは、、、なんだと!?


 視界には、先ほど倒したゴブルの数倍の数がこっちに向かってきていた。部下も窮地に陥ってはいないが鎧に若干傷がついている。


 なんだってんだこの数!?

 倒したゴブルの数をかぞえるのも、忘れた頃に俺は部下に指示を出した。


「奥様方の馬車を優先的に守れ!」


 それは、苦渋の決断。前の馬車には使用人の女性が乗っていた事を俺はもちろん知っていた、ゴブルの特性も、、、知っていながら見捨てる事を選択したんだ。


 そんな時に、ミズキ様は馬車から銀色の犬を連れ出して降りてくる。


 正直俺はミズキ様とあまり関わる機会が無く、全然知らなかった。同期のミルアが騒いでいたくらいだっけか、よく訓練所に来る変わった普通の貴族の子供。それが俺のミズキ様に対する印象だ。


 そんな、ミズキ様が戦闘中に出てくるなんて危険過ぎる、好奇心で出てきたのか?これだから貴族の子供は嫌なんだ。少し怒り声で戻るように言ったんだがミズキ様から返ってきた言葉に耳を疑った。


「僕の事は無視してください」


 その後に、次は目を疑う。夢でも見ているのか?

 ミズキ様のペットらしいちっこい犬が大人のなん回りもでかい大きい大狼に変化をした。


 その姿は、畏怖そのもの。絶対に戦ってはいけないと体が剣を向ける事を拒否している。

 そしてミズキ様は大狼に跨ると前方の馬車に向かって行った。


 まさか、使用人を助ける為に降りてきたというのか?そんな事があるはず無いと心の中で否定する。俺は知っている、貴族が使用人の命よりも自分の安全を求めることを何度も見てきた。だからミズキ様もあの大狼で逃げる気なのだろう、そう思った。


 しかし、俺の心とは裏腹にミズキ様によってゴブル達との戦闘は唐突に終わりを迎える。


 咆哮、大狼の魂を揺さぶる咆哮によってゴブル達は逃げ出した。今思い出すだけでも俺も足が震えそうだ。

 ミズキ様はゴブルが逃げたのを確認した後、馬車から出てきた使用人の女性に抱きしめられている。


 先ほどの事を思いだし、俺も近づいてミズキ様に戦闘時にでてきてはいけないと忠告したら、涙目で素直に謝ってくる。


 男なのに一瞬ドキってしちまったじゃねえか!?


 その後にあれが奥様に演技と教えられたが、未だにそう思える事が出来ない。






「って事があったんだよ」


 貴族相手のあらたまった口調ではなく、気の抜けた感じで向かいに座っている奴に有ったことを告げた。

 今俺は、あの後、何事も無く無事に公爵家に着いた翌日、隊長格の集まりが終わって残っていたミルアと話をしている。


「そんな重大な事が有ったのに、私は、お傍に居ることができないなんて、、、」


 向かいに座る同じ隊長格のミルアはテーブルに拳を叩きつけている。


「しかし、奥様やミズキ様にお怪我を負わなくて安心した。良くやってくれたなギル」


「いや、俺は何もやっちゃいないミズキ様のおかげだよ。ゴブルごときに手間取るなんて自分の無力さを痛感したさ、それに使用人も見捨てるような事をした。すまなかったミルア、、、彼女はお前の友人なのだろ?」


「ああ、ルチルは私が公爵家の騎士としてやってきて初めて知り合いになったん人物なんだよ。今じゃ唯一無二の友人さ」


 どこか、懐かしむようにミルアは虚空を見つめる。そして、息を少し吐いてから喋り始めた。


「だが、ギルの選択は間違っていないさ、護衛が最重要で守るのは使用人など二の次で貴族だからな。でも、ミズキ様は自分の身よりルチルを心配してくれたのか、、、」


 そういえばミルアはミズキ様と親しかったよな。聞いてみるか。


「なあ、ミルア。ミズキ様ってどういうお方なんだ?」


「ミズキ様は素晴らしいお方だ。使用人を家族のように扱い、幼くもせんめいで芯がしっかりしてらっしゃる、私は命尽きるまで仕えたいと思った。訓練は素直に従うし、それに笑顔を振りまいて、あんなに愛嬌があるし、時折してくる悪戯がこれまた可愛くてだな、それに、、、」


「分かった!分かったから一回落ち着け、最後の方なんかおかしかったぞ」


 そうだな、と言いミルアは自分を落ち着かせる為か、テーブルに上にあるカップを口に近づけてから、喋り始めた。


「これで分かっただろ?ミズキ様の良さが」


 ミルアの言う通り、今までの変だが普通の貴族の息子だと思っていたのが払拭された気分だ。それにしても気になる事があったな。


「訓練ってなんだ?」


 少し思い出すかの如く目を瞑って静まった後、にやにやとだらしない笑みを浮かべ始める。


「ああ、主に身体の強化をしているよ。その姿がまた微笑ましくてな。まだ、武器は危ないから持たせていないが、ミズキ様は興味があるみたいだ」


 貴族が戦場に出るなんてほとんどないに等しいから貴族は体を鍛えるなんてしないのに、絵本か何かに影響されたのだろうか?


「どうして訓練なんて始めたんだろうな、娯楽的なやつか」


「ミズキ様から聞いたが冒険者になりたいらしい。私は反対したんだがな、、、だって寂しいもん」


 小さい声で言っているが聞こえてるぞミルア、同じ隊長格で優秀と言われるが部下がこの姿を見たらなんて思うか。だが、冒険者か、なんだか小さい頃の自分を見てる気持ちになる。憧れたっけなあの頃。


「なあ、その訓練に俺も混ぜてくれないか?」


 はぁ~とため息を吐きすて、目を少し細くしてジト目でこちらを見ながら。


「お前、ミズキ様を私から奪う気なんだろ!あの可愛い笑顔にやられたか」


「急に大きな声をだすなって、ただ、俺もミズキ様の力になりたいと思っただけだ。ミズキ様は剣を教わりたいんだろ?男なら憧れるからな」


 俺も、憧れたからな、あの恐ろしい魔物を切り裂き、刃を鞘にしまう姿に。だが、俺の考えはミルアによって否定された。


「いや、違うぞ。ミズキ様は剣なんかよりハルバードが良いとおっしゃっている」


 ハルバードだと?あんな不人気で誰も使わないような武器が良いっていうのか。


「なんで、あんな武器を」


「私も、不思議に思い聞いてみたんだが、、、なんかものすごく熱弁されたんだ。ロマンがどうのカッコよさがどうのとな、だが生憎使える者も少ないしミズキ様に筋力じゃ持ち上がらないし、倉庫にも二つしかハルバード自体がなかったんだ」


 ミズキ様に申し訳ないが俺もハルバードを扱うことはできないしな、槍なら使えるが。


「槍じゃ駄目なのか?」


「槍で良いなら私が教えている、槍は得意分野だからな。だが、何か違うらしい」


 確か、ミルアの獲物は槍だった。


「なら、どうする気なんだ?」


「それなんだが、ミズキ様は独学でやっていくと言い出して。日々研究をしているよ」


 すごい頑張り様だ。俺だったら別の武器に切り替えている所だよ。関心していると扉をノックてか女騎士が入ってくる。


 ミルアの部下か?案の定ミルアの部下で、俺にすまないと言って女騎士から報告を受けていた。耳を澄ませなくても聞こえる声量で。


「どうしたんだルル?」


「ミルア隊長、ミズキ様が訓練所にいらっしゃいましたよ。今はゲイルと話をしておられます」


「何!?ミズキ様が!こんな事してる場合じゃない、早くしないゲイルに先を越されてしまう、えっとルル、今私の髪変じゃない?」


「ふふ、大丈夫ですミルア隊長」


 なんだその、恋する乙女みたいな行動は、、、紅茶を飲みながら思わず吹き出しそうになる。


「話は聞いていたなギル。どうやらミズキ様がいらっしゃったらしい。私は至急向かわなくてはならんくなった。今回は特別にお前もくるか?」


「なんだよ、特別って?まあ、興味があるから俺も付いていくわ」


 椅子から腰をあげ、先に出ようとしていたミルアに付いていった。

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