帰り道にお気をつけ!
翌日の朝、水の日。日が少し昇り、朝の霧が消えた頃、バレット家の門で馬車に乗り込む姿がある。ミズキ達だ。
「道中に賊の出没はしていないらしいけど、魔物に気を付けるのよ」
クレスさんの情報だと、賊は近くにはいないらしい。もし、捕まったら何されるかわからないから居ないと思えると安心だが、魔物には、出会いたくない。
「ええ、出てきたら護衛がいても助かるとは思えないから急いで行くわ」
そこで、しばしの会話を交わした後に、ハーヴァント家の執事の一人、ハンさんがそろそろと言った辺りで馬車は先頭から出発を開始した。
ちなみに、馬車は三台あり。最初に戦闘できない使用人の馬車が出る。ここにルチルは乗っている。次に、俺とティアと母様に母様専属メイドさんが乗っていて、最後の馬車には荷物が積んであった。
馬車の中から外を覗くと、昨日にルチルと歩いた道を通っている事に気がついた。
「どうしたのミズキ?」
「最後にベルリアの町をしっかり目に焼き付けておこうと思いまして、、、綺麗ですよね、この町」
窓の向こうには、朝早くから店で買い物しながら笑顔を作る主婦や大方何かの自慢でもしているのであろう革鎧を身につけた冒険者っぽい人が目につく。
母様も、窓の向こうを見ながら口を開く。
「ミズキも貴族なのだから、町民の笑顔を守れるようになりなさい」
「はい、、、町人の笑顔ぐらいは守れるようになります」
「それでいいのよ、流石私の子ね。でも、ミズキ?私はあなたが何をしたいか知っているわよ。冒険者らしいわね、、、」
ちょっちょちょ、ちょっと待てー!今の流れでおかしくない?ねえ?このタイミングは狙いすぎじゃないかな。
母様は、俺が答えるまで待っている気みたいだ。目を逸らそうとはしない。
「かっ母様、何処でそれを!?」
「ミズキ、今その事は関係ないわ。あなたが本当にどうしたいか教えてちょうだい」
こんな母様は、執務をこなしている時に見たくらいだ。まあ、見たのは一度きりで部屋に立ち入り禁止って言われたがな、、、
しかし、よく考えたらこの状況って結構チャンスだ。母様に俺の意志を伝えてやる。
「その通りです。まだ、僕は幼く世界を知りませんが冒険者になりたいと思っています」
こっこれで、良いんだ。もう後悔はしない。
「そう、、、冒険者になりたいのね。多分クレスには反対されたかしら。実はね、クレスにも、冒険者になった息子がいたのよ」
えっ、クレスさんって息子いるのか、しかも、冒険者の。んっ?いたのよって過去形になってませんか。
「息子さんは、どうしているのですか?」
「亡くなったわ、、、冒険者になると言って屋敷を飛び出したらしいの。翌日に、身体を大きく失った姿で発見されてしまってね。そのせいもあって私は良い思いがないわ」
あ、うん、そうゆう事か、、、やっとあのクレスさんの豹変理由がわかったぞ。
クレスさんも自分の息子を失うきっかけになった冒険者なんて嫌いなはずだし、そんな時に知り合いの息子が冒険者になりたいなんて言ったら反対するに決まっている、少なくとも俺はやめさせようとするな。しかし、これは困ったぞ、、、
「母様は、僕が危険を冒すのが嫌なのですよね。なら、絶対安心とは言えませんが、そこらの魔物に余裕を持って討伐できる程の腕を身に着けたら、、、冒険者になる事を許していただけませんか?」
「ミズキ、、貴方がそこまでして冒険者になりたいのは何故なの?」
何故、、、冒険者になりたかった理由。
一般人を守りたかったから?いや違う、それなら貴族のままでも良かった筈だ。自分で言ったじゃないかあの日リンセットに、「世界を自分で知りたい」って、そうだよこれだよ。
「母様、、、僕は、、、」
言っている途中で体に強い衝撃が来た。馬車が急停車したせいである。
なんだよ、急に止まりやがって、危うく舌噛みきりそうになちゃったよ!
何事かと思っていると「来たぞ!!」と緊張を張り巡らせて言う護衛の人の声が聞こえた。窓から覗くと、風景は町並みではなく森が見える。
いつの間に町から出たんだ、まったく気が付かなかったな。っと違う違う今はそんな事している場合じゃない。状況確認しなきゃ、前の方を見ると先頭の馬車の周辺で何かが争っていた。
あれは、、、ゴブリン!?小さい人型をしていて、肌は緑色。そして、動物の皮で作ったっぽいふんどしは血が乾いて変色している。前世で見た姿と一致しているが、この世界にもいるとは。
「母様。あそこにいるのはなんですか?」
「魔物のゴブルよ、、、弱くて知性が低く他種族のメスを攫うと聞いているわ」
微妙に名前が違うが特性は合っているらしい。
母様は深くは言わないが、攫うとは、、、まあ、そうなのだろう。許せん!でも、弱いと言っても一般人にとっては脅威になるのが魔物だ。前にはルチルが乗っている、助けなくちゃ。
扉を開こうとすると母様に肩を掴まれる。
「ミズキどこに行く気?外は危険よ!護衛の騎士が残滅させるまで待ちなさい」
そうじゃん、護衛の人いたんじゃん。戦力として数えられる騎士の男の人数は5人いるしゴブリン、、、じゃなくゴブルは弱いらしいし大丈夫か。
「そうでしたね、すみま」
「数が多すぎます隊長!」
「なんだこの数は異常だ!!」
「こいつら魔法を切り裂きます!」
俺が母様に謝罪の言葉を句切るように、外から不穏な声が聞こえる。
「馬車に近づかせるな!!!優先的に奥様方の馬車を守れ!」
おい、待ってって。それって全てを守りきれないって言っているようなもんだぞ。
「隊長、先頭の馬車にゴブルが複数向かっています!」
「今手が離せない!だれか向かえる奴いないか」
騎士は隊長の怒声が聞こえる位置にいるはずなのに誰も向かえると返事がない。
もう7体くらいのゴブル達が先頭の馬車の扉を壊そうと叩いている。これは、悠長に待っている場合じゃない。
このままがルチルが、あんな事やこんな事をされて、、、そんなことは断じて許さないぞ!
ルチルを助けに行くのを頭で決定した俺の行動は早かった。
「母様、僕は大丈夫なので決して馬車からでないでください。ティアいくぞ!」
母様の手を振りほどき、横で早く戦闘させろと言いたげなティアに声をかける。母様が驚きで止まった隙に、扉を開いてティアと出た後閉めた。
勢いが強すぎたせいで大きな音が鳴って護衛の兵士達が俺とティアが出てきた事に気が付く。
「ミズキ様!ここは危険です、早く中に、、、!」
「僕の事は無視してください、ティア頼むぞ」
俺がそういっても、隊長達は守る気みたいなので自分は大丈夫だと認めさせる為にティアに声をかける。
アオーーーーーーン!
俺の声に反応してティアが遠吠えをする。
すると、今まで俺の頭に乗るサイズだったティアが大きくなっていき、大人が二人跨っても大丈夫な大きさになると大きくなるのが止まった。
ふふっはははははは、そう!普段俺の頭に乗るサイズのティアは大きくなれるのだ!
このことを知ったのは、ティアに微妙に届かない位置でおやつを見せびらかしていたら、急に大きくなったんだよ。そりゃあ、驚いた。今の騎士の皆さんのようにね。
今のティアの姿は、口から冷気を吐き顔がキリっとしていて誇りが高く気高そうな風貌である。体毛に所々付着していた氷は前足と後ろ脚の爪や体の一部覆い、体が少し凍り付いて見えるようになっていた。
そんなティアに俺は跨って指示をだす。
「ほら、ティア。あそこの馬車にルチルがいるんだ。助けに行くぞ!」
ガウ。
声の質が若干怖くなったティアが頷く。ティアは後ろ脚に力を込めて一気に跳躍、こっちの馬車や騎士に群がっていたゴブルを飛び越えて、数体のゴブルを足場にしながらルチルの馬車に向かっていった。
立っているゴブルの頭を足場にしているから、まるで空中を飛んでいる気分である。
ルチルのいる馬車の近くにいたゴブル達がティアの存在に気が付いて迎撃態勢を取ろうとするが、ティアがそいつらに向かって咆哮をすると我先にゴブルは逃げ出す。
おいおい、逃げるなら元から襲うなよ、まあ無理もないか、正面からティアに咆哮されたら俺も腰抜かしてちびりそうだもん。
しかし、これは好都合である。さっきのゴブル達同様に馬車に群がっていたゴブル達も逃げ出したからだ。案外あっけないな、俺は何もやってないがな。
車輪が壊され傾いているルチルの馬車に近寄り、扉をノックする。
「おーい、ゴブル逃げたよー。だから、出てきて」
扉の鍵を開けるカチャっと音の後、そおっと扉が開かれルチルが出てきた。
「ミズキ様!良かったです無事で、、、、」
おっおう、ルチルに突然抱きしめられる。相当怖かったのだろう、外から聞こえる声の中に魔法が効かないや優先的に守るや誰も向かえないとかあったしな。
ルチルの出来る攻撃としたら魔法ぐらいだし、ゴブルの事知ってたらなおさらだ。
「俺は平気だよ、それよりルチルは平気?」
「ミズキ様がいてくださるので大丈夫です、、、その子はティアちゃんですか?」
そうだった、ティアを戻すの忘れてた。
「うん、大きくなっているけどティアだよ。ティアもう戻っていいよ」
ガウ!
風船の空気が消えてくみたいにティアがしぼんんでいき、いつものサイズの戻ると俺の頭の上によじ登ってくる。ちょっと爪!爪しまえって、痛いから。
そこに護衛の騎士も集まってくる。
「ミズキ様困ります。危険な事をされては」
騎士達や使用人がこんな事を言う時は、大抵素直に謝れば許してもらえるから謝っておくとしますか。
「ごめんなさい、、、」
「今度からは、私たちの指示に従ってくださいね」
日々演技力が上達しているんじゃないかな俺。もうね芝居とか出れちゃうんじゃないかな、えへへ、、、
そんな俺は後で母様に同じように謝ったら頬にパチンと一発受ける事になった。言われた言葉が。
「ミズキ、バレバレよ、、、」
もうやだ~
説明だけの、話作ったほうがいいのかな、、、?




