中庭での約束
会場を出るとルチルがゆっくり扉を閉めていく。
「ハックション!うっさぶ」
「ミズキ様ずぶ濡れじゃないですか!そのままでは風を惹いてしまいます。さあ、浴槽へ行きますよ!」
「えっちょっと」
戸惑う俺をルチルが抱え上げる、これと言った抵抗も出来ない、子供の体が恨めしいな。
「歩けるから!平気だよ」
「駄目です。急ぎますよ!」
こうなったルチルは、人の話お全然聞いてくれない。
「見られてる、見られちゃってるよ」
先ほどの女の子と目があってしまう、あちゃー、これは顔真っ赤ですわ。主に俺がね。
「すみません、少々ミズキ様をお借りいたします、あなた、お客様に粗相のないようお部屋にお通し、お願いしますね」
「はい、お任せください」
もう一人のメイドさんにお願いをし、女の子に、
ぺこりとお辞儀をするルチル、メイドの鏡です。でも、主にもその、、、ね?
「行きますよミズキ様!失礼します」
「最後までかっこつけさせて~」
ルチルが無慈悲にも抱えったまま走り始めて、屋敷の廊下に俺の悲しみの悲鳴が響きわたった。
貴族の少年にかけられた飲み物を落とし服を着替えた俺は、女の子を連れ中庭に来ている。
「ごめんね待たせて」
「いえ、大丈夫ですよ」
体の力を抜くように腕を空に伸ばす。空には満天の星が浮かんで夜なのに暗くない。
「それにしても、見た?飲み物をかけた子の顔!おもしろかった~」
会場にいた男の子は青から白へと顔の色が変わり死ぬんじゃないかと思う程である。
今思い出すと面白かった。今頃親が大変だな、だって公爵家の息子に水ビシャーだもん。
「あっあの、すみませんでした…ミズキ様に迷惑をかけてしまって、、、」
そう言って頭を下げながらこちらの反応を伺っている。女の子に顔を下げられるとなぜか悪い事をしているような気持ちになりそうだ。
「全然構わないよ、僕は女の子を助ける事が憧れだったから。そう言えば君の名前聞いてなかった。名前教えてよ」
「はっはい、えっとリンセットって言います!5歳です」
俺の問いに、リンセットは慌てるように答えてくれた。
「同い年か、、、同い年だし堅苦しいのとか無しでどうかな?」
「で、でも…」
厳しいかなー、女の子に敬語使われたりしたら俺の気が楽じゃないんだよね。でも、女の子に断られちゃうと悲しいですな、、、
「人が少ない時なら、、、大丈夫です!!ですからそんな涙を浮かべながら悲しい顔をしないでください」
あら、顔に出ていたかな?まあいっか、まずは初めての友達ゲットだぜ!
「ありがと、リンセット。良かったら俺と友達になってくれると嬉しいな」
俺は自分なりの良い笑顔でリンセットに言うが、その笑顔を見たリンセットは顔を背けてしまった。
あれ、そんなに俺の笑顔酷かったのかな。自信有ったのに、、、リンセットに嫌がられたら夜中に枕を水浸しにする自信がしてきた。
俺が落ち込んでいるとリンセットがコホンと咳払いをしてこっちを向いてくれる。すこし顔が赤いのはなんでだろ?
「こっこちらこそお願いしましゅっ!」
リンセットは若干顔が赤かったのがどんどん赤くなり、しまいには顔が真っ赤っかになってしまっている。
「クスッ。リンセットありがとね。俺の初めての友達が可愛いリンセットで良かったよ」
「私が可愛いなんてないですよ。皆は可愛いくないって言ってたから。そのせいでお父様や母様に迷惑をかけていますし」
リンセットは儚げで気丈に振る舞う様に力のない笑顔をしながら言った。
貴族の子達に言われた事気にしているのかな?俺はリンセットにちょっと恥ずかしいが自分の気持ちを伝えることにした。
「そんな事ないよ、リンセットは顔も心もとっても可愛いと思う。貴族の子達がリンセットに意地悪するのはリンセットに嫉妬でもしてるんだよ」
俺はひと呼吸入れ続けるように言い切る。
「それにリンセットの父さんや母さんは君を大切にしていると思うんだ。そのドレスはリンセットに二人がプレゼントしてくれた物じゃないかな?二人の愛情を感じるよ、とっても似合っているし迷惑なんて思ってないと思う」
本当に恥ずかしい言葉をすらすらと言ってしまった、、、うまく伝えれたかな。
リンセットは急に泣き出してしまう。やばい!俺なんかまずい事言っちゃった!?
「すみません泣いちゃって。とっても嬉しくて、、、ありがとう、、、ミズキ君に言われたら皆に言われた事なんて気にしているのが馬鹿らしくなっちゃったよ」
涙を拭いながらリンセットは笑顔で言った。
リンセットの笑顔は強く美しかった。涙を流しているが何かを吹っ切った心からの笑顔、、、俺はこの笑顔を忘れないだろう。そう思える程にリンセットが輝いて見えたから。
「ミズキ君?」
リンセットが俺の顔を覗き込みながら心配そうにしている。
「あっうっうん!見とれちゃったよ!リンセットが凄い綺麗だったからさ」
「そっそんな事ないよ!ミズキ君だって凄くカッコ良くて優しいんだもんミズキ君、、こんな人のお嫁さんになりたいな」
リンセットの声は途中からどんどん小さくなっていった。
「ごめん。名前の後が声が小さくて聞こえなかった。もっかい言って貰ってもいい?」
「ううん。何でもない!重要な事じゃないから!!そっそれよりミズキ君は将来どうするの?」
何を慌てているんだろうか、リンセットは手をブンブンと振りながら言ってくる。
「そう?そうなら良いけど。将来かー、それって何がしたいかって事かな?」
「うっうん!!」
リンセットは若干残念がりながら頷いた。
「そうだな、、、冒険したりしたい。公爵家の力を使わず自分の力で色んな事を見て、知って、体験したいな」
「それって冒険者になるってこと?」
「冒険者?」
「私の家によく荷物を届けたりしてくれるんだけど、父様が冒険者ギルドに所属している人を冒険者って言うって」
「冒険者ギルドがあるのか、、、なら俺は冒険者になろうと思う」
「ミズキ君なら皆を笑顔に出来ると思う。でも羨ましいな私も一緒に冒険してみたかった、、、」
俺はリンセットの言葉に疑問を抱く。まるで、その言い方だとリンセットはなれないってことか?
「リンセットは冒険者になれないの?」
「私、父様達に言われて魔法学園イグニスに入学しなきゃいけないの。それに私弱いからミズキ君のお荷物になっちゃうし、、、」
リンセットも商人の家系って言っても貴族だもんね。貴族は忙しいから。俺は、、、大丈夫だよな?大丈夫だと信じたい。
「う~ん。ならリンセットも魔法学園で鍛えれば良いと思う。リンセットが強くなって魔法学園を卒業したら一緒に冒険しよ!」
「わかった、私強くなる!そしたらミズキ君私を迎えに来てね?」
リンセットが可愛いく首を傾けながら聞いてくる。
そりゃもちろん返す言葉は決まっている。ひと呼吸入れて心に整理をつけてから俺は口を開いた。
「必ず迎えに行くよ。リンセットの元に」
その後俺達はお互いについて色々喋りあった。いつのまにか御披露目会も終わりルチルが「そろそろお戻りしましょう」と言いに来たのでリンセットといつか会う約束をして俺たちは別れた。
~ある二人組~
「ふむ、なかなか良い雰囲気ではないか。ギルファート殿」
厳しい顔つきの男が言う。
「ミズキ様は大変素晴らしいお方に育っておられる。リンセットも心からの笑顔で笑っております」
そう言ったもう一人の男は中庭で楽しそうに喋っている二人を温かい目で見ていた。
「ミズキは産まれた時から手のかからない子に育ってしまった。あの子は賢いそれにより自分で解決しようと行動してしまう。すこしは私を頼れば良いのだがな、、、」
「それはなかなか難しい事でこざいましょう。ならばミズキ様の願いを叶えてみてはどうでしょうか?」
男の意見にもう一人は考えるように呟いた。
「冒険者か、、、」
二人はミズキ達の会話を聞いていたらしい。
「厳しい事でしょうがそれが一番かと」
「ふむ、ミズキを自由にさせる事も必要なのかもしれんな、、、でも良いのか?そなたの娘も冒険者になろうとしているが」
「リンセットも私に頼ろうとしないで溜め込む方でして。リンセットに親として迷惑をかけてきました、、、だから私は親としてリンセットの願いを叶えたい所存であります。実の娘には幸せになってもらいたい、、、」
男は意志を伝えるとぼろぼろ涙を流していく。どうやら親子共々似ているらしい。
「わかったから泣くでない。貴族が簡単に泣いて足元をすくわれるぞ」
励ますように言った口調に男はハイと答えながらもどんどん涙が増えていく。
「まったく、、、二人をくっ付けるのも有りかもしれんな、、、」
「ですが、ミズキ様は公爵家。私の家と釣り合いは取れませんでしょう。他の貴族がなんて言ってくるか…」
「他の貴族など黙らせればよい。そなたは気にするな、ミズキには自分で相手を選ばせてやりたいのだ。それに長男は許嫁と仲良くやっているしな。なに心配は要らんよ」
「ありがとうございます。リンセットにも伝えておきましょう」
「まだ言うでない。二人が我達の所に着たら許可してやろう。その方が幸せであろう」
「わかりました。リンセットには伝えませんとしましょう。ですが、ミズキ様は人を惹き付ける魅力を持っておられます。そして、おのずと複数の女性から求められる事でしょう」
「だろうな。ミズキも人をみる目は有るだろう。家、、、公爵家の力だけを求める者は要らんよ。ミズキ本人を見る者をだけだ。さて、そろそろ戻るとしようかギルファート殿」
「そうしましょう。冷えてきました事ですし」
そう言った男達は中庭を後にしていった。
~ある二人組視点終了~




