黒猫と女子高生
「こんな事ある訳ない」
あたしは大好きな異世界転生物のファンタジー小説をスマートフォンで読みながらそう思ってた。
昼過ぎから降りだした雨は勢いを増し、バス停の周辺は水溜まりだらけ。アスファルトで跳ねた滴で膝下はスカートの裾やローファーの中までグショグショで気持ち悪い。足の裏はきっと長湯した後みたいにしわしわになっているに違いない。そう思うと足がむずむずしてきた。
元々ここは車も人通りも少ない郊外の閑静な住宅地にあるバス停とはいえ、激しく打ち付ける雨音以外に聞こえる音がないというのは珍しい。
普段なら鳥の声や遠くの車の音などが聞こえてくる。
もっとも、何かを読んでいる時にはそんな音は全く気にならないんだけど、流石にこの状況ではそうもいかなかった。何しろスマートフォンに水滴が跳ねてくるから。
「鬱陶しい雨……」
呟きながら水滴をハンカチで拭き取るも、そこに新たな水滴が跳ねてきてはまた拭き取るの繰り返し。正直うんざりする。
あたしのスマートフォンは一応生活防水はなされているけど、水滴がそのままなのは我慢ならない。潔癖症って訳ではないけどね。
しばらく水滴と格闘していると、視界の右側から光が近付いて来るのが見えた。時間からすると多分、あたしが待っているバスのはず。この土砂降りの雨の中、定刻通りに運行中とは流石は日本のバス会社。そんな事を思いながら光が近付くのを見ていた。
でも、光の大きさから判断するならばやけに小さいバスのようで、おまけにエンジン音も聞こえない。確かにハイブリッドカーなら、この雨音でエンジン音もかき消されてしまうかもしれないけど、この路線のバスがハイブリッド化したなんて話は聞いた事がない。
「あれ? バスじゃないの? かな?」
疑問を口にした瞬間、あたし目掛けて光が突っ込んで来た。そこであたしの意識は途切れた。
◆◇◆◇◆
「これって、もしかしなくても、死んじゃったって事……よね、あたし」
目の前で繰り広げられている事故処理の風景を見ながら、あたしは呟いた。
バス停をあたしごと貫いて、ハイブリッドカーが民家の塀に突き刺さっていた。そのハイブリッドカーと塀の間には物言わぬ骸と化したあたしの死体があり、打ち付ける雨によって洗い流されたあたしの血の川が出来上がっていた。
幸い(?)あたし以外の犠牲者は出なかったようで、ハイブリッドカーを運転していたお婆ちゃんや同乗していたお孫さん達は軽症で済んだみたい。死んじゃったあたしが言うのもなんだけど、お婆ちゃん達が無事で良かった良かった。
ん? なんかズレてる? そんな事ないと思うんだけどなぁ。
警察に事故の原因を聞かれたお婆ちゃんが言った事をまとめると、どうやらハイドロプレーニング現象による操作不能に陥った結果の事故みたいで、特に誰かが悪いとも言いにくい事故みたい。ほんの少しずつ条件が積み重なった事による事故だろうというのが警察の見解。あたしに至っては運が悪かったとしか言いようがない。
とはいえ、お婆ちゃんはこれから大変だろうなぁ。あたしを殺してしまった償いの日々がある訳だし。
他人事みたいにそんな事を考えてたらいつの間にか病院に移動してて、そこにあたしの父さんが母さんを連れ立って現れた。
事故当時のあたしはバス停の椅子に座っていたため、下半身は潰れてぐっちゃぐちゃになってた。上半身は辛うじて判別可能なくらいには整えられていたけど、ボンネットに叩き付けられたせいで綺麗とは言い難い。……元から大して綺麗な方じゃなかったっていうか、悪くもないけど良くもないって顔立ちだったんだけどね。
変わり果てたあたしの姿を見て母さんは泣き崩れ、父さんは母さんの肩を抱きながら涙を堪えてた。
「あたし、愛されてたんだなぁ」
両親を見ながら呟いた。こんな二人、初めて見たかも。
「そうだね。人並み以上には愛されてたと思うよ?」
呟きに対するまさかの応えに、音がするんじゃないかというような勢いで振り向いた。
だって、今のあたしの状態っていわゆる幽霊だろうし、他の人は反応しなかったしね。そりゃあ驚きもしますって。
振り向いた先には一匹の黒猫が居た。ただし、宙に浮いている。明らかに不自然。
若干の警戒をしつつ黒猫に話し掛ける。
「今のはあなたが?」
「もちろんそうさ。我輩以外に誰が居るってのさ」
黒猫はくるりとバク宙を披露した。
「へぇ、死後の世界では猫も喋るんだねぇ」
驚きが感心に変わり、あたしは拍手した。
すると今度は黒猫が驚く番だった。
「順応性が高いんだね。大抵の人はパニック起こすってのにさ」
「あはは。だってさぁ、あたしか幽霊になってるって時点で一般的な常識とはかけ離れてるじゃない?」
「なるほどね。確かにそうだ。でも、殆どの人は自分の死を受け入れられないか、こんな事態に陥った時点で夢かと疑うもんなんだけどね」
右前足を口に当てて黒猫が笑う。
それに釣られるようにあたしも笑う。悲しみに暮れる両親とはあまりに対照的過ぎて現実感が薄れる。
「んで? あたしはどうなるの?」
黒猫に尋ねると、黒猫の両目が大きく見開かれ、瞳孔は逆に細くなった。
「だって、わざわざあたしのとこまで来てくれたって事は、あなたは死神的な何かで、あたしに何かをさせたいか伝える事があるって事なんでしょ?」
「いやはや、この短時間でそこまで及びかつくとは、重ね重ね興味深いね」
黒猫は髭を撫でながらあたしを隈無く見詰めた。
そしていきなりスカートの中に潜り込んでザラザラの舌で舐め回されたり、大して大きくも小さくもない胸を揉まれたり吸われたり甘噛みされたりといったセクハラをされまくった。おかげで着衣は乱れまくりだよ! っていうか、幽霊になっても着衣って乱れるんだね! 初めて知ったよ!
最初の内は抵抗しようとはしたものの、流石に猫だけあってすばしっこくてどうにも出来なかったり、自分でするのよりも格段に強い快楽に見舞われ、次第に抗えなくなってしまった。
そういうのが暫く続いたけど、息も絶え絶えなあたしの額に肉球を押し付けながら黒猫は頷いた。
「やはり我輩の目に狂いはなかった」
「……散々、セクハラ、してくれ、ちゃったん、だから、……んふぅ……説明、くらいは、当然、……ん……はぁ……やってくれる、んだよね?」
今にもイケそうなのに、絶妙なタイミングで焦らしてくるエロ猫のせいで、あたしの体は火照りまくり。なのにエロ猫は自分の判断に悦に入ってて、あたしは放置されまくり。思わず自分の手でしそうになった所で、それに気付いたエロ猫が慌てて止めに入った。
「ちょっと待って! 今イカれちゃうとそのまま昇天しちゃうから待って待って! イッちゃダメだってばっ!」
なんという事でしょう。イッたら昇天しちゃうそうです。
「でも、今のあたしはイキたいのよっ! どうせ死んじゃったんだから昇天しちゃっても良いじゃないっ!」
「それじゃ我輩が困るんだってばっ!」
「そんなの知ったこっちゃないわよ! 大体、あんたがあたしにセクハラしまくってイッちゃいそうにしたんじゃないのっ!」
「それは仕方なかったんだよっ! 相性が悪いと転生に支障が出ちゃうから、ああやって確かめるしかなかったのっ! あんだすたん!?」
「何よ『あんだすたん』って! 欧米かっ!? って……え? 転生?」
エロ猫の言葉に急に頭が冴える。イキたい衝動はまだ治まってはいないんだけど、転生と聞いては我慢もせずにはいられない。何しろあたしは三度のご飯より転生物の小説が大好きだから。
イキたくて堪らない体を無理矢理我慢させてエロ猫に先を促させた。
「我輩が行える転生は、我輩と相性が良くないとかなりの確率で失敗しちゃうんだよ。だから毎回こうやって半ばセクハラ紛いの事をしながら『適合者』を探してたんだよ」
「何故あんたはその……『適合者』を探してるの? ふぅ……はぁ……ただ単に気紛れで探してる訳じゃないんだよね?」
「我輩が担当してる世界の一つが上手く行かなくてさ。その世界に手を加えたいんだけど、我輩が直接手を加えてしまう訳には行かないんだよ。まぁ、そういう決まりになってるって事だけ理解してくれたら充分だよ」
「つまりあんたはいわゆる『神様的な何かの一柱』って事?」
「有り体に言えばそういう事だね。ちなみに、この世界の担当は我輩ではなくて我輩の姉的な存在なんだけど、協力してもらって『適合者』を探してるんだ。ついでに言うと君で五人目の『適合者』で、女の子では初めての『適合者』だよ」
エロ猫のその言葉を聞いた瞬間、あたしの思考がフリーズした。
「て事は何? このエロ猫ってば男の子にもセクハラしまくってたって事ぉ!? うわぁ、何それ。三日はネタに困らないわっ!」
あたしが妄想に取り憑かれて思わず体に手が伸びそうになった所で、再度エロ猫が止めに入った。
「だからイッてもらっては困るんだってば!」
「はっ! そうだったね」
「全く……ちょっと油断するとすぐイキそうになるんだから」
エロ猫がぐちぐち愚痴りだした。しかも関係ない事まで混じってるし、ストレス溜めてるなぁ。
「はいはい、いつまでも愚痴ってるとあたしがイッちゃうから話を進めて。あんたが手出し出来る範囲では問題を排除出来なかったから転生して欲しいんだったっけ?」
「そうそう。その問題なんだけど、君の前に転移した四人の男の子達の事なんだよ。そもそもは放置し過ぎた魔物に王様っぽいのが発生して手が付けられなくなって、どうにかしてもらおうと思って四人同時に転移させたんだけどね? 向こうの世界の人間より強いのを良い事にやりたい放題やっちゃってさぁ。魔物の王はおろか星そのものまで破壊しそうな程までやってくれちゃって困ってるんだよ」
あたしは顎が地に着いちゃうんじゃないかと思う程呆れてしまった。
エロ猫が言うには、四人の『適合者』達は最初こそ真面に魔物の王を討伐しようと頑張ってたらしいんだけど、魔物の王とその側近が人形の魔物……いわゆる『魔族』で、しかも美女や美少女が多かった事が悪かった。『適合者』達はその魔族の女達を片っ端から捕らえ、挙句の果てには魔物の王共々奴隷にして従えてしまった。
そこで止まってればそんなに問題ではなかったんだけど、四人それぞれの『萌え属性』の違いから仲違いが始まり、それが元で争いを始めてしまった。
『適合者』同士での争いは苛烈を極め、とある大陸の中央部は裂け、二つの大陸をまとめて吹き飛ばしたクレーターが出来て、そこに大量の海水が流れ込んだために海面がなんと300メートルも低下し、大陸棚が露出して四つあった大陸が陸続きになってしまった。
まさに天変地異だよね。
これによって各地で気候変動が起き、星の総人口は一気に1%にまで下がってしまったんだって。
人族も魔族ももはや国の体を成しているのは一か所もない程になってしまい、僅かに残った人々は国とは言えないまでも村や街単位で細々と生活は出来ているみたい。
でも、ここでまた魔物達が問題になってきたんだって。
人口はかなり減ったけど、魔物達の総数は10%くらいをキープしたみたい。
しかも繁殖力が半端ない魔物が何種類か居て、魔物同士で共食いなんかも大いに発生。その結果、魔物だけがかつての勢力を持ち直してしまいそうなのだとか。
個体能力では大抵の魔物を凌駕する魔族であっても、そもそもの個体数が圧倒的に少ないのが祟ってしまい、防衛するのに精一杯。
魔族ですらそうなのだから、個体数が減少した人族には抵抗らしい抵抗も出来ていないだろう事は聞くまでもなかった。
ちなみに四人の『適合者』達は全員死亡してしまっているんだって。二人は残りの二人に殺され、残りの二人は巨大クレーターを作り出したお互い最強の技による一撃でダブルノックアウト後、そこに流れ込んだ海水で溺死と、呆気ない最期を迎えたっていうんだからびっくりだね。ま、やらかしちゃった人達が居なくなってくれてるのだけはありがたいねぇ。でも……。
「問題の解決のために転移させたのに別の問題を巻き起こすような子達でした……って、ねぇ……。相性云々よりそっちの問題を起こしそうかどうかのチェックが先なんじゃないの?」
そう言いながらジト目をエロ猫に向ける。
「至極真っ当な意見で痛み入るよ」
しょんぼりと首を垂れるエロ猫。
一応反省はしてたんだよね。だからこそあたしみたいな毒にも薬にもならなさそうな人間を選んで転生させようとしてるんだろうし。
ていうか、話を聞いてる間にあたしのイキたいメーターがだだ下がりだよ。……まぁ、落ち着けたって事でもあるから良いんだけどね。
「話を戻すけど、あたしにその増え過ぎて困ってる魔物の間引きをさせたい訳?」
「話が早くて助かるよ。ただ、前回の失敗があるから、いきなりチート山盛り最強状態で転移だとかは出来ないんだよね。だから君には現地の赤ちゃんに転生してもらって、赤ちゃんから育ってもらう事になるよ」
「ちなみにそれって、育ってる最中に死んじゃう可能性は?」
「もちろん、あるよ。一応死ににくそうな所を選ぶけどね」
無情なエロ猫の言葉に愕然としたけど、続けられた言葉に少しだけ安堵の息を吐いた。
だって、転生直後に死んじゃったら目も当てられないもんね。
「そこら辺は考えなきゃ折角のチャンスを活かせないからね。まぁ、念のために君以外にも十人くらいは転生させる予定だから、万が一って事があっても支障はないと思うけどね。死んじゃった人には悪いけど」
「全体を考えたら当然、かな? でもさ、そこまでしてその星の人族を存続させる理由って何? 直接干渉出来なくてそこまで行っちゃったら、普通は投げ出すんじゃないの?」
「いや、あの、そそそ、そんな事はないよ?」
あたしの指摘に途端に挙動不審になるエロ猫。……これは何か裏がある……。
「ただ、我輩の担当世界で最初にして唯一の文明的な生き物が生まれた星だったからってのがあってね?」
「ホントにそれだけぇ? 他にも理由があるんでしょ? ちゃっちゃか吐いちゃいなさいよ」
「はうあうあう」
エロ猫の顎下を撫でながら問い詰めると、不承不承といった様子で話始めた。
「君の世界を担当している我輩の姉的な存在と賭けをしてて、何人か我輩の担当世界に転生させるのを許可するから、あの星を持ち直させてみなさいって言われてね。持ち直せたら種族の種を幾つか融通してもらえる事になってるんだよ。」
「種族の種?」
「原始生物の素って言えば分かるかな? 環境適応能力を持たせた、そういうのがあってね。担当世界が確定した時に幾つか支給されたんだけど、我輩の担当世界では文明を持つまでに進化出来たのは一つだけだったんだよ。んで、その進化具合で管理者のランクが決まって、出来る事が増えていくんだよ。」
うっはぁ……このエロ猫ってば、ゲーム感覚で世界を管理しちゃってるよぉ……。
多分だけど、エロ猫の姉的な存在の方もゲーム感覚でやってるんじゃないの? これ……。
んー…、分からないけどきっとそうだよね。間違いない。
「ちなみに、我輩のランクは下から二番目で、このランクまで上がらないと他の世界に遊びに行く事も出来ないんだよ。それ以外は種族の種を落とす事と原始生物や惑星環境の監視と、やってもやらなくても同じなんじゃ? って感じの手出しくらいしか出来ないんだ。ついでに言うと、我輩の姉的な存在にしてこの世界の管理者はさらに二ランク上で、低ランク管理者の世界に干渉も出来ちゃうんだ。だから我輩の世界に干渉して欲しくて訪ねて来たんだけど、ほんの少しの干渉はするけどもう少し見守りなさいって言われちゃってね。しかもこれが上手く行かなかったら、我輩は姉的な存在のお願いを何でも叶えなくちゃいけなくなるんだよ。何をさせられるか分かったもんじゃないよ」
苦笑いを浮かべるエロ猫。猫の癖にとても器用に感情表現をする。
世界を賭けの対象にするとか正気の沙汰とは思えないけど、あたしは既に呆れ諦めモードで聞き専になってる。ツッコミする気も起きやしない。
「ま、そんな訳でさ、数人の異世界間転生干渉だけって事になって、今は君の面接をこうして行っているって訳さ。ゆーおーけい?」
いちいち細部がウザいけど、まぁ死んじゃったあたしにとっては、全然別の世界・別の人生とはいえ生きられるのなら……というのはあるんだよね。だって、あたしまだ十七年しか生きてないし、性交はおろかキスもまだだったし、彼氏居ない歴=年齢だったしね。……まぁ、ついさっき猫にイカされそうにはなったんだけど。でもそれも死んじゃった後だしねぇ。
うん、チャンスが貰えるんならやってみようじゃないの!
むん! と気合いを入れると、あたしはエロ猫に宣言した。
「分かった。あたし、やってみるよ!」
「ほんとに!?」
エロ猫が嬉しそうな奇声を上げつつ踊り狂ってる。まるで社会の授業で見た水銀中毒公害の猫みたいで気持ち悪い。しかもしばらく続いたし。
しばらくして気を取り直したエロ猫が、あたしの右手を両前足で器用に掴むとお礼を言ってきた。
「いやぁありがとう! 実は君で二万人目くらいになるんだけど、なかなか良い返事を貰えなくて半ば諦めてたんだよぉ。なにせ相手は死人だからネガティブなのばかりだし、中には好戦的だったり高圧的だったりで話にならなかったり、そもそも魂が破損してたりとかばかりでうんざりしてたんだよぉ! そしたらかなり健全な魂に出会えたからさ、それまでの事もあってついつい嬉しくなってセクハラに走っちゃったんだ。ごめんね?」
なるほどね。二万人も面接し続けてやっとっていうんなら、さっきの奇行も納得出来るね。
いやぁ、自分でも甘いとは思うよ? 思うけど、エロ猫もエロ猫なりに苦労してたんだと思うと、ねぇ。
エロ猫の顎下を撫でて許してあげた。苦労を労ってあげる意味もあるけど。
「あんたも苦労してたんだねぇ。ところでさ、あたしの記憶とかはどうなるの?」
「普段は思い出さない程度と深さの場所に封印されるよ。そうしないと人格形成に支障をきたす場合があるからね。デジャヴみたいに『あれ? 前にもこんな事あった気がする』って感じるくらい」
さすがに小説程は甘くないかぁ。
記憶を持ったまま転生出来るんだったら、かなりのアドバンテージを持てるような気がするんだけどなぁ。あたしの大好きな転生物の小説だと、結構そういうの多いしね。
「でも、知識に関しては切っ掛けさえあれば記憶から情報を引き出せる可能性は高いと思うよ。それと、我輩の我が儘に付き合ってもらうんだから、幾つかの『ギフト』もあげるよ」
「『ギフト』って、特殊技能とかって事?」
「その通り。何しろ魔物達を相手に生き残ってもらわないと……だしね。生きやすい場所に転生してもらうのも『ギフト』の一つなんだ。我輩からはこのくらいしかしてあげられないけどね」
「ランク不足で大した手出しが出来ないんだったね。」
エロ猫はがくりと肩を落とす。本当に器用な猫だ。
「我輩の姉的な存在からの『ギフト』なんだけど、我輩も知らないからどうしようもない。ただ、魔物の間引きをするのに役立つ『ギフト』にはなるはずだよ。そういう所で手を抜いたりするような方ではないから安心して良いよ」
エロ猫の、姉的な存在に対する信頼度は半端ないなぁ。多分、ランクの上下以外の何かがあるんだろう。ヘタに突くと蛇が出そうだから何も言わないけどね。
エロ猫の話が一段落ついたら、あたしのお葬式も滞りなく終わっていた。
最後の別れになるんだからと促されたので、両親の頬にキスをした。もちろん触れる事は出来ないから振りだけなんだけど、早く元気になって欲しいって祈りを込めて。
その瞬間、不意にお母さんと目が合った。本当に目が合った訳じゃないんだろうけど、それまで顔を伏せて悲しみに呉れるばかりだったお母さんが顔を上げてくれたのを見て、理由のない安心感が胸に広がった。
多分、お母さんは大丈夫。お父さんも居るしね。
そしてあたしは決意を胸に振り返る。
「さぁ、別れも済んだし、覚悟も決めた。行きましょ」
あたしの言葉にエロ猫も頷く。右前足をエロ猫があたしの額に当てると光に包まれた。
「じゃあ、良い人生を送れるように祈ってるよ」
エロ猫が言う。
「次に会う時にはきちんとイカせてね」
ウィンクしながら言うと、エロ猫は一瞬びっくりして笑いながら応えてくれた。
「天にも昇る気持ちにしてあげるよ。文字通りね」
そして、あたしの意識は白に塗り潰され、新たなる生へと旅立った。
あ、エロ猫の名前聞くのも自己紹介するのも忘れてた……。
あたしもエロ猫の事をバカに出来ないなぁ。
なんとなく自分でも書いてみたくなっちゃったので書き始めてみました。
とはいうものの、取り敢えず決まってる設定はそんなにないし、行き当たりばったりの不定期更新になるのは確定済み。なにしろ書き溜めとかしてないし……。
地味ぃ~に頑張りま~す。




