不死王さまは面白いものがお好き
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東の森は“不死王”の領地。この森は“生けるもの”を許さない。
スケルトンを初めとする多くの不死属が徘徊するこの森は静けさに包まれている。
不死属は生けるものを見つけると襲い掛かる習性がある。つまり“生きた”ものはいない。
だが、不思議なことにこの森は落とし物が多い。
フラりと足を伸ばしてみると面白いものがたまに落ちている。それを拾うのが困った癖だとアンセルムに、よく言われる。
例えば、最近拾ったのは頭が桃色のエルフだ。あれを拾ったのは…西だ。なかなか面白い魔法を使うようだが、衰弱していたので、城に持ち帰った。落ちてからな。
アンセルムに怒られた。あいつ最近小うるさいな。
俺はその日、小うるさいやつから逃げる為に森の中央に行った。
そしたらまた、興味深いものが落ちていた。
「はっはは」
黒い髪、赤い眼でこちらを見上げる小さな赤ん坊。俺は思わず笑ってしまった。
だから、この森は面白い!
異常なまでの魔力、“生けるもの”を憎むこの森でか弱き姿で生き残る異常性。
おかしな生き物だ!
「拾っていいよなぁ、俺の森に落ちているんだ」
まんじりとこちらを見上げる“赤ん坊”
ああ、何て良い日だ!
おくるみに包まれた赤ん坊を持ち上げ城へ踵を返す。
「と、その魔力は押さえておこうか。」
正体の判らない上に魔力が多いとかやつが煩いに、決まってるし、この量は赤ん坊の脆弱な身体には毒だろう。
額に手を当て過剰な魔力を吸いとる。
「凄いな、押さえきれん。仕方ない…」
小指を掴み腰のナイフで切り落とす。その瞬間肉が腐敗し骨と化す小指。
その間にも流れる血は止まり再生を始める手。我ながらおかしな身体だ。
「ちょっと痛いかもな」
白骨化した小指を赤ん坊の心の臓に無理やり押し込む。
ズブズブと埋め込まれる俺の欠片。
「あぅ、あぁぁあ!!やぁうぁぁあぁ!!」
「すまないな、もうちょっと我慢だ」
全て埋め込み泣き叫ぶ赤ん坊をあやす。
「まだ痛いか?俺の欠片はお前のお守りになる。そう泣くんじゃない、あぁ、悪かった」
「あぅあ…?あうう」
「よし、よし、余りに強い魔力はお前にとっても良くない。不死王の欠片はお前の魔力を吸い押さえるだろう」
まあ、アンセルムには内緒だな。俺の怪我には神経質になる。
「さぁ、帰るぞ。今日からお前は俺のものだ」
「うぁぅ」
名前を付けなければ、いい拾い物をしたものだ。
読んでいただきありがとうごさいます。