不死王さまの拾い物*
初投稿です。生暖かく見守っていただけたらうれしいです。
今日も私こと補佐官アンセルムは今日も主の前に仁王立ちします。せざる得ないのです。
不死属の頂点に君臨する主は拾い癖があります。ある時は群を追われた人狼の子供、ある時は珍妙なエルフ。
そんな主がある日とんでもないものを小脇に抱え帰ってきた。
「返してらっしゃい」
「何故だ」
心底不思議そうに問う主に頭を抱えた。同じく主の腕の中でこちらを見上げる小さな生き物。何でも拾って来るなとあれほど言っておいたのに。
はぐれ狼ならまだ許せた、変なエルフもギリギリ許容範囲…。それなのに!
よりにもよって種族もわからない赤ん坊なんか!
「どこで拾って来たんですか?」
「森の真ん中位のところに落ちていた。つまり俺が貰っても良いだろう」
「いいわけないでしょう!?」
この森は不死王の領地であり不可侵の土地だ、わざわざ多くのスケルトンやデュラハンに追いかけ回されるために入り込む輩はほとんどいない。
だが、そこが問題なのだ。
この赤ん坊は何だ?
どうして森に居た?
捨てられたのならどのように?
人間ではない魔族特有の魔力は有るようだが身体的特徴が見られない、その上魔力有量が何故か把握出来ない。
私にとったら未知の生物だ。
つまり正体のわからないものをわざわざ主に近寄らせる訳にはいかない。
まあ拾ってきたのは主(本人)なんですがね!!
「ダメです、何回目ですかこのやり取り。今日こそは返してきていただきます」
「面倒は俺が見る。問題ない」
「そんなこと言って結局面倒見てるのは私です。だいたい、種族も正体もわからないようなものをどうやって育てるおつもりで?」
「そうだな…。口を開けろ、違う噛むんじゃない。開けろ。そうだ、歯は、生えかけだ。犬歯は無し。山羊の乳でも飲ませれば良いじゃないか?」
「…そういう問題ではないのですが」
「なら山羊の乳に血でも混ぜるか?」
「だから、そういう事を言いたいのではありません。正体のわからないものを城、ひいては御身に近寄らせる訳にはいきません」
主の指を口に含んだまま手遊びする赤ん坊。指を噛むなんて羨ま…ではなく、なんたる不敬。
「正体のわからないもの、か…今までのは良かったのか?」
「身元は調べれば分かりますから」
「なら身元も明確な種族名も判らない俺はいいのか?」
思わず息を飲む。私に問いかける主の声が冷たく響く。
「私は、貴方を事を言ったのでは…!それに貴方は“不死王”です」
「“不死王”は種族名ではないだろう?正体の判らないもの同士こいつの面倒は見てやりたい」
既に手放す気はないようです。何ですかその優しそうな顔は。こっち向いてください。心の記憶に焼き付けます。
「はぁ…どうしてそういう所だけ頑固なんですか」
「さあな。それにある意味お前も拾われた口だ」
聞こえません。私は拾われたのではなく、お仕えすると決めただけです。
それにしても、やはり育てる事になりましたが…本当どうやって育てるんでしょう。
まずあのアホ犬と珍妙エルフと顔合わせをさせなければ…弱い癖に一人前に縄張り意識の強いんですよね。
取り敢えず主に仕事をしてもらう為、腕の中の赤ん坊を、取り上げる。
別に、羨ましかったとか、そんなやましい理由ではありませんから。仕事していただく為ですから。