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その5
いや、これはまずいですよ。約束の時間が迫ってきている。遅れたんじゃ印象が悪くなっちまう。ローテルの代理ってだけで既に信用落としてるかも知れないんだから。ええい、仕方がない。僕は意を決して村人に声をかける。案の定、その若い娘は僕を避けようとアサッテの方向へ歩いていく。
そこで僕は魔法を使った。簡単なチャームの魔法だ。この魔法を使うと人への警戒感が薄れ親近感がわく。娘のすぐ横を歩いていたボッテリしたオッサンに術をかけなかったのは、まぁ、若気の至りと許してほしい。「すいません。酒場はどこでしょうか。人と待ち合わせをしてるんですが」