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小説のハウツー  作者: Lauro
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人形遊び

シーンとライザ達のことをまるでそこに存在しないかのように立ちはだかる壁の前でリュクがラシェルを見上げてポツンと呟いた。

「女心の分かってない壁だなまったく!」

ラシェルは腕を組んで顔をプイと壁から背けた。だが、ラシェルはメリナ程高さのない胸の前で組んでいた腕をスルリと滑らせるように解いた。

「どうしたんだいラシェル?」

いつの間にか鋭くなっていた蒼穹のような瞳が見つめる先をラミエルは追っていった。

夢人(トラウム)?!…じゃない…!」

ラミエルもラシェルと同様に壁と向き合うライザ達に対面し身構える。それを見たライザとリュクとメリナも何か不穏な空気を察知し勢い良く振り返ると先程まで何もないただ石畳だった床から煉瓦のような石の塊がガタガタと鈍い音を立てながら徐々に人の形を成し始める。

「おいリュク、間違えても何も起きないんじゃないのかよ?」

ライザがフエルテに手をかざしながらリュクを見るとリュクは顔をブンブン横に降っていた。

「見た目堅そうだな…リュク、援護頼んだぞ!」

ラシェルはリュクに指示を出すと人の背丈と同じくらいの大きさになった石の人形に向かっていく。

「人形遊びなんて久しぶりねっ!」

ラシェルは自分の攻撃の届く間合いまで入って右手にあるナイフで人形の胸の部分を切りつける。

「………」

人形は無言のまま刃がぶつかる嫌な音だけを立ててナイフを弾いてしまった。

「ゴガガガ…」

次の瞬間、人形は機械のような唸り声を上げて本当の意味でゴツゴツした右腕でラシェルの華奢な体を弾き飛ばす。

体を飛ばされ宙に浮いたラシェルは弱々しく堅い石畳の床に叩きつけられる。

「ラシェルっ!?」

ライザが駆け寄っていくと、ラシェルは生まれたての子鹿のようにヨロヨロと立ち上がろうとしていた。

「大丈夫よ…可愛くない人形だな…!」

ダランと力が抜けたように肩から垂れた腕は上腕部分がラシェルの唇の色くらいに紅く腫れ上がっている。どうやら、石の人形の一撃を辛うじて腕で受けたみたいだが、攻撃を頭にもらって効いてしまっているようだ。酒に酔ったように足元がおぼつかない。

ライザがラシェルのふらつく体を支えながら人形の方に眼を向けると、今度はラミエルが人形に向かってランサを右手に携えて肉薄していた。

「エイッ!!」

ラミエルが直視すると眼が痛くなるくらいに黄色に輝く槍の形状をとった光を人形の腹に突き刺すと弾けるような音を立てて電流がバチバチと人形の体にほとばしる。

「これもダメか…」

堅牢な人形の石造りの体に傷ひとつ付いていないのを確認すると、ラミエルは反撃が来る前に人形の間合いから飛び退く。

「だったら魔術で…!ウォルブ イワゥ!!」

リュクは自分と人形との間にラミエルがいなくなったのを確認すると人形に向かって手をかざし全てを攫っていくような強風を発生させる。

「ググ…」

突風に煽られた人形は倒れこそしなかったものの、頭と両腕を勢いよく背中側にもってかれる。

「え~!?ダメじゃん!」

リュクは顔を歪めて頭を抱えたが、人形が体勢を崩した時からそれを見つめていたメリナは両刃の大斧を手に走り出した。

「それっ!!」

メリナは大きく斧を振り上げると人形の体の正中線ではなく、左肩の関節目掛けて振り下ろす。

「オォアグ…!」

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