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小説のハウツー  作者: Lauro
35/50

脱出大作戦

「だって、俺が勝手なことしたせいで捕まっちゃったからさ…」

ライザは小さな声で答えた。申し訳ないという気持ちが大部分だが、犯罪者として錆び付いた鉄格子の中に囚われたという事実も少なからずライザには堪えた。

「でも、子供にあんなことする奴らをボクは許せないよ!」

ラミエルは小さな拳をぎゅうっと握りしめた。ラミエルが彼女の心からそう言っていると分かるとライザの心は少し軽くなったような気がした。

「今夜の宿代浮いたからいいんじゃないか?」

ラシェルは呑気にもライザの座る膝の上に彼女の金色の頭を横たえ頭を膝の上で甘える猫のようにゴロゴロ転がす。

「タダっていう値段に相応しい宿だね。」

「なんだかワクワクしますねぇ~」

さほど嫌がらないラミエルに対して何かを期待するメリナ。ライザには2人の反応は理解し難かった。こんな肌を撫でるような寒さ、床の詰めたさと殺風景な景色の中に反響する声がこだます環境で絶望するなという方が難しい。

「でも晩酌が出来ないのはなぁ~…」

「って、ラシェル昨日とかメリナん家に居た時もしてなかったろ?」

そんな悠長なことを言っている場合ではないと膝の上のラシェルの額を小突く。

「我慢してたのよ~!お酒飲まないと枯れちゃう女なのよ私は!」

ラシェルは冷たい床の上に横たえられた両脚をバタつかせる。

「決めた!今すぐここを出るわよっ!!」

「どうやって出るんですか?それよりもう少しここに居ませんか?」

メリナは少し不満そうに勢いよく立ち上がるラシェルを見上げた。

「何か方法があるの?」

ラミエルが聞くとラシェルは手招きをしてライザ達は円陣を組むような方形をとった。何か掛け声を出した方がいいのかどうかライザは迷った。そして、ラシェルはライザ達に策を講じ始める。

「ん~了解…」

ライザが作戦に渋る。

「うん、いいんじゃないかな?」

太鼓判を押すラミエル。

「やりましょう!」

何故か楽しそうなメリナ。

「よし、頼んだわよみんな!」

ラシェルが皆の顔を見回して円陣を解いた。

「しかしあいつらもバカだよなぁ~?」

ライザはわざと監獄部屋の入り口に佇む人影に聞こえるような声で会話を始めた。この牢は何もない上に四角い形をしているのでよく声が反響する。

「そうだね、あの子がドルミール遺跡にいたからってあの雲が出てきたのは遺跡だって思ってるんだからね!」

ラミエルも声を張ってライザに話しを合わせる。ライザが視線を鉄格子越しに入り口にやると佇んでいた人影の位置が動いている。どうやら、こちらに聞き耳を立てているようだ。

「ふふ…いいんじゃないかしら?どうせドルミール遺跡はもぬけの殻なんだし、彼らが遺跡に向かったところに仲間達にこの街を襲わせればいいんだし。」

メリナは腕を組みながら人差し指を唇に当てて妖艶な雰囲気を演出する。どうやら彼女自身の中で役柄のイメージがあるようだが、ライザ達との温度差に吹き出しそうになってしまった。

「おいお前達!今の話しは本当か!?」

やっと目当ての入り口に立っていた男がライザ達の嘘の創り話に釣られて怒鳴りこんできた。

「あら、聞こえちゃったかしら?」

ここからが嘘の本番だと言わんばかりに錆び付いた鉄格子に張り付く男の前に進み出る。

「聞こえちゃったなら仕方ないわね。そうよ、あの黒いドルミール遺跡の雲は私達がやったの。でも、遺跡は囮。ばれちゃったから仕方ないわね…」

ラシェルは呆れたように小さく溜め息をついて、男の正面から外れた。上手く焦らされてしまった男は軋む鉄格子を握り締める。かなり興奮しているのが速まる呼吸から見てとれる。

「囮だと!?バカにしてるのかっ!!」

「あら、親切に教えてあげてるのに素直じゃないのね?ドルミール遺跡の逆方向に向かってみたら?急げば私達の仲間がこの街に辿り着く前に会えるかもしれないわよ。」

ラシェルが男にウィンクを送ってみると、男は怒りをラシェルにぶつけるように鉄格子を叩くと金属の反響音が遠退いて行くと共に部屋を出て行ってしまった。

「ラシェル、本当にこんな感じでいいのか?」

彼女に言われた通りにやってはみたが一抹の不安が残る。

「バッチリだみんな!彼らはこの街の自警団だ、街に危険が迫っていると報せればそこに飛んでいくだろ?」

そうラシェルは納得のいかないライザ達にあまり納得のいかない解説を始める。

「でも、騙すようなやり方になってしまって申し訳ない感じもしますね…」

1番ノリノリで演じていたメリナが男の出て行った入り口を不安そうに見つめる。

「あのまま彼らをあの雲の下に向かわせたとしても…」

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