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小説のハウツー  作者: Lauro
34/50

今夜の宿は

「彼は罪も知らない程幼いです。咎があるなら私がその子の代わりに責めを負います。」

静かな声が聖書に出てくる預言者のように人の波を二つに割き、裂け目から1人の女性が現れた。

「せ、先生ぇ~!?」

少年は涙と鼻水でグチャグチャになった顔で腰程まである長く細い黒髪を建物の間から吹き込む風に靡かせた女性を見上げる。

「リュク、あなたはやっていないんですね?」

女性はそのリュクと呼んだ少年を色素の薄い茶色の瞳で彼と目線を合わせる。

「うん…うん!僕やってないよ!!ドルミール遺跡で…」

「部外者がしゃしゃり出てくるな!」

「アッ…!」

一連のやり取りを見ていた男が女性に平手打ちを加え、女性はひらりと舞い落ちる花びらのように地面に倒れ込む。

「ったく、毎度毎度お前の厄介な魔術で俺達の仕事を奪いやがって!」

声の鎖を解かれた男の中の1人が女性の弱々しい絹のような肌の腕を掴む。

「まぁ、許してやらんこともないなぁ?お前が俺達の相手をしてくれるんならなぁ!!」

それを聞いた女性のか細い腕がピクリと力んだのと同時にライザの体は動き出していた。無論、ラシェルの手もライザを止めてはいなかった。

ライザは女性の自由を奪う男の欲望を纏った体に飛び膝蹴りを入れる。

「貴様ぁ!俺達に逆らう気か?!」

膝蹴りをまともに喰った男はむせ込みながらライザを見上げた。

「正しくは"貴様ら"だな、それに女はもうちょっと優しく扱って上げなさい?」

ラシェルが腕組みしながら胸を逸らして男達を見回す。

「大丈夫ですか?」

メリナが負傷した女性の細くか弱い体を調べる。

「こんな小さな子供を脅して聴取するような真似して君達恥ずかしくないのかい?」

ラミエルが少年に近寄っていくと少年を拘束していた両脇の男達がラミエルに槍の穂先を向ける。少年はラミエルを暗闇に差す光のように見上げた。

「部外者が口を出すなって言わなかったか?それとも、あの黒い雲について何か知っているとでも言うのか?あ?」

男達は少年に濡れ衣を着せるのを楽しんでいるかのように笑い声を高らかに上げた。

「知ってたらどうだって言うんですか?」

ライザは男達を睨み返した。

「よそ者のお前達が知っているというならゆっくりと話しを聞かせてもらおうじゃないか、このガキの代わりになぁ!」

少年の右側に立つ男が皮肉の笑みを浮かべながら泣きじゃくる少年を爪先で小突いた。男達の中でも中核にいるであろう人物が周りの男達に合図すると、女性と少年についていた男達が今度はライザ達に迫ってきた。

「俺達自警団の詰所に来てもらおうか。」

そう男達がライザ達に両手を挙げるように促した。

「自警団の身分で警察とか騎士でもないのに街ではば聞かせてるんだ。」

「いいからさっさと歩け!」

ライザが小声で呟いたがどうやら聞こえていたようだ。尻の部分を軽く蹴られライザ達は連行され始めた。

「抵抗しない方が良さそうだね。」

ラミエルが短い溜息をつくとメリナがそれに頷いた。

「今日の宿代が浮いたな、探す手間も省けたし。晩酌はさせてくれるのかしら?」

「んなわけねぇだろ!」

ラシェルは隣りの男に怒鳴られペロっと舌を出してみせた。


5分程歩かされた所に周りの建物より大きいが、特に特徴のない彼ら自称自警団の詰所が建っていた。

「なんか、ごめん…」

ライザは詰所の薄暗く冷たい牢屋の床に胡座をかきながら俯いた。

「へ?いきなりどうしたんですかライザ?」

メリナが間の抜けた裏返った声を上げた。

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