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小説のハウツー  作者: Lauro
17/50

初めての戦い

「…?」

ラシェルの耳に微かな人影の呟きが届いた。後方で待機しているライザとメリナも状況が動かないことから次の行動に移れずにいる。漂う沈黙に緊張が高まっていく。

「見つけたぞっ!?」

睨み合いの途中に沈黙を破る声が森に響き、薄暗い樹々の間から男が飛び出してきた。

「あれはっ!?」

樹々の間から飛び出した男を見てメリナが叫んだ。しかし、その男の体は体の至るところから出血し、白を基調とした鎧も傷だらけだ。彼はここに来るまで激しく戦っていたようだ。

「ギルバート家の騎士か!?」

ラシェルが声を挙げる通り、その男が身に纏う鎧に刻まれた紋章はメリナの服の左胸に付けられた物と同じ紋章だ。

「しねえぇっ!!」

男は叫びながらラシェル達を向き続ける人影に刃こぼれした剣で斬りかかる。

「よせっ!」

ラシェルが男に向かって声を上げたが遅かった。

「…おちろ…」

人影は男に反応し手にした紅の剣で男の体を貫く。

「キャアァッ…!!」

メリナは残酷な光景に眼を背ける。

「ライザ!メリナ!行くぞっ!!」

ラシェルは呆気にとられているライザとメリナに檄を飛ばして男を貫いた剣を引き抜く人影に向かっていく。人影に肉薄したラシェルはナイフをコンパクトに振って斬りつけるが人影の方も黙って斬られるわけではなく剣で受け止める。しかし、一歩出遅れてしまったライザはラシェルがワザと自分の攻撃を相手に受けさせたのだと気付いた。

「エイッ!!」

メリナがラシェルに続いて斧を横薙ぎに振るう。人影はラシェルのナイフを右手の剣で受けていたためにメリナの斧を防げずに体に受けた。

「グオォッ…」

そんな見た眼に相応しいような唸り声を上げて人影はたたらを踏んだ。

「やったか…?」

ラシェルは様子を伺うが、人影の体は普通の人間なら致命傷といえる今の一撃でも体に大きな亀裂を走らせながら再びラシェル達に向かっていく。

「だ、だめですっ…!」

メリナは予想外の事態に後ずさった。

「あー!面倒だなっ!」

ラシェルはフエルテに手を右腕のフエルテに手をかざすと彼女の手には一冊の分厚いハードカバーのような本が現れた。

「エリフ ティ!」

ラシェルはその本を開いて何やら呪文のようなものを唱えながら相手に手をかざすと彼女の手から火の球が放たれる。

「グオ…!」

人影は体を焔に焼かれて唸り声を上げて悶えるが、纏った焔が消えるとまた何事もなかったように向かってくる。

「もー何なのよアイツ!ライザ、その男を担げ!一旦逃げるぞっ!」

今まで傍観者であったライザにラシェルは指示を出す。しかし、ライザはその中でひとつ気掛かりなことがあった。

「メリナ、その人を頼む…!」

「えっ?でも…」

メリナは相手に背を向けようとしていたが人影に向かって走り出すライザを見送ってしまった。

ライザは自分の攻撃が届く間合いに入るとトンファーを握る右腕を肘打ちのようにして振り下ろす。当然、人影は剣で受け止める。ライザの肘の先端から体の芯にかけて骨が砕けるような痺れが走る。

そして、まだ痺れが抜けきらない内に人影はライザの脚を狙って剣で足払いをしてくる。ライザはそれを左の脛を上げて受けてから足を着いた力を利用して相手の胴体を狙う、ミドルキックだ。

「そこだあぁっ!!」

ミドルキックをまともに受けた人影は大きく体勢を崩したのをライザは見逃さなかった。

人影のちょうど心臓にあたる部分に何やら紅く輝く核のようなものが見えた。ライザはすぐに体勢を立て直し相手の間合いに飛び込み、トンファーの先端で紅い核を突いた。

「グアァッ…!?」

完璧に核をトンファーで捉えられ、核が砕け散った人影は再び悶えながら霧散し闇に返っていった。

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