逃げる少女
とは言ったものの、それが自分を戦地へと誘うのだと思うと少し怖くもあった
「まずは、建物内で複数の敵がいる場合は背中をとられないように壁に背中を向けて進むんだ」
「こうか?」
ライザは壁に背中をピッタリ付けて進む
「あー違う違う!それだと動き難いし武器が取れないだろ?少し背中を離して進むんだ」
ラシェルは壁から少し背中を離してすり足のようにして進んでいく
「それで建物内の曲がり門に差し掛かった時は壁に背を付けて覗き込む…ライザがよかったら肩を叩いて合図だ」
そうラシェルに言われたが特に何もなかったのでラシェルの肩をポンと叩く
まるで軍隊の突入訓練を見ているみたいだ
「よし、それじゃあ一気に追い上げるぞ!」
ラシェルは一気に駆け出す
「おいラシェル?飛び出すと危険って言ってたじゃんかよ?」
先程までと言っていたことのつじつまが合わずラシェルにライザは聞き返す
「今逃げて行った奴の様子からすると、恐らく独りだ。だから、どこかこの屋敷の部屋に誘導して閉じ込めるぞ」
「ッハァ…!……ハァハァッ…やっと振り切れた…ッ…」
ある部屋まで逃げ込み扉にもたれる
そして乱れる呼吸を落ち着かせひと息ついてから扉から背を話し部屋の中央に歩いていく。
「君は意外と走れるんだな…」
「誰っ?!」
どこからともなく聞こえる声に細い悲鳴をあげる。
「さ、もう逃げられないぞ」
急に部屋の扉が開きライザが姿を見せる。
「キャァァーーッ!」
驚きのあまりさらに少女は細い悲鳴をあげる。
「ほら、ライザの顔怖いってさ!」
そしてラシェルが本棚の陰から現れ、ふわっとした印象を与える純白のスカートを翻しながら後ろへよろめく少女の肩を優しく支える。
「ラシェルが最初に脅かすからだろ?ま、確かにそれはよく言われるけど…」
ライザは呆れながらラシェルに近づく
「い、いやっ!来ないでっ!!」
少女は眼を瞑って思わず指でつついてしまいそうなくらい柔らかそうな頬を持つ顔をライザから背ける。
「それは流石に傷つくな…」
「ご、ごめんなさい許して下さい…酷いことしないで下さい…!!」
少女は肩をプルプル震わせてライザに懇願する。
ライザには全く悪意は無いはずだが
はたから見ればライザは悪人にしか見えないようだ。
「そうだぞ、言うこと聞かないとこの変態男が君にいやらしいことしちゃうぞ?」
ラシェルはにやにやしながら少女の長い茶髪から覗く耳に囁く。なぜかライザはその光景にドキドキしてしまった。
こうラシェルと彼女の腕の中にある少女を見比べてみると2人とも華奢ではあるが、ラシェルはシュッとしたデニムなどが似合うようなスレンダー体系で少女は体のラインを見せる服が似合うような女性的な丸みを帯びたグラマラス体型とでも言うべきだろうか。
「ひゃっ!あぁ…私はきっとこの人にあんなことやこんなことや、いやらしいことをたくさんされちゃうんですね…!?」
「いや、それ妄想し過ぎ…っていうかラシェル変なこと吹き込むな!」
ラシェルはその腕に少女を抱えながら悪戯な笑みを浮かべる。
「いやぁ、ハッハッハ!すまないねお嬢さん、私達は君の敵じゃないんだ」
「え?ほ、ほんとうですか…?」