クリスマスの過ごし方
クリスマスをテーマにして書きたかったのに、こうなりました。スイマセン。
もっと短くしたかった……。
「……好きだって言ってしまったら、もう……もう、お友達ではいられないんです……よね?」
桜坂夢弓は、誰もいない教室でそう言った。彼女は俺から目をそらし、顔を真っ赤にさせながら口をパクパクさせる。
「ごごご、ごめんなさい! 知哉君は、しし、静さんが好きだって……わ、わかってたのに……」
彼女はそう言うと、急いで荷物をまとめようとする。女の子が好きそうな可愛らしいマスコット達が、彼女の鞄の隅で揺れていた。
(ここで止めないといけない!)
彼女が鞄を持つと、急いで俺は腕をつかんだ。か細い彼女の腕は、小刻みに震えていた。
「……ご、ごめんなさい!」
「静が好きだなんて、俺は言ってない」
目に少しだけ涙を浮かべ、夢弓は俺を見る。彼女の顔と共に、綺麗な黒髪のツインテールが左右に揺れた。
「……だって、クラスで噂に……」
「そんなのは、噂だよ」
飴色の瞳が俺をじっと見つめる。仔犬のように震えた彼女が、俺にとってたまらなく愛おしい。
俺は彼女の腕を強引に引っ張り、俺の腕で抱き締める。なるべく優しく抱き締めたつもりだったが、俺の頭とは反対に、体は強く抱き締めてしまう。
「……知哉、く、ん?」
正直に言うと、ここで夢弓を抱き締めていないと、怖くて仕方がなかった。本人は自覚がまるでないようだが、夢弓を狙う男なんて数万といる。ここで俺が引き止めなかったら、他の誰かに奪われてしまうんじゃないかと、そう思ってしまうほどに。
「……好きだ」
俺は彼女を机の上に押し倒す。夢弓は顔を赤らめて、飴色の瞳を潤ませる。両手で口元を押さえ、信じられないと言わんばかりの顔をしていた。
「俺は夢弓が好きだ」
「……っ、わた……しも、だ……いすき……」
大粒の涙を流して、夢弓は嬉しそうに笑う。俺は、彼女の大粒の涙を拭ってあげると、彼女に顔を近付けた。彼女も、次にすることをためらうこともなく受け入れた。
彼女の唇が俺の唇と重なる。柔らかな唇の感触を確かめるかのように、俺は彼女の唇に噛みつく。舌で味わうと、甘い味がほのかにした。
「…………」
「……いいよ」
顔を真っ赤にした夢弓は、俺の手を自分の胸へと運ぶ。彼女の柔らかな胸の感触と、その奥から感じる鼓動と熱。彼女は優しく笑いながら俺に囁いた。
「は……じめて、だから、や、優しくして……ね?」
俺はそっとブラウスのボタンを外そうとすると、世界がいきなり闇に包まれた――。
◆
「ちょ! なに、停電っ!?」
闇に包まれた俺の部屋。俺は慌ててカーテン裏の窓を覗いた。隣の家には明かりがちゃんとある。
「知哉ぁ! ブレーカー落ちちゃった、ごめーん!」
「……はぁ!?」
一階から聞こえた姉の声に、俺は愕然とする。
「セーブしてねぇ……、最悪だ、悪夢だ」
すぐにブレーカーをもとに戻してくれたものの、ゲームはタイトル画面に戻ってしまっている。俺は急いでセーブデータを探したがそれも何故か消えてしまっている。
「……最悪のクリスマスだぁ!」
――そんな今日は12月24日。俺は今年もエロゲーをする。
楽しんでもらえたなら嬉しいです。